皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第一章 第4話

 「・・・そう、クラス委員長になったのね、頑張りなさい!」

 

 とクレリア母様は、当たり前過ぎて興味も無い様子で、他のクラスメイトの話しを聞いてくる。

 そのあまりにも素っ気ない態度に、些か毒気を抜かれたが、気を取り直して理由を聞くと。

 クスクスと笑いながらクレリア母様は、夕食後の紅茶を嗜みながら僕に説明する。

 

 「だってどうやったって、貴方がクラスで存在感を消す事は出来ないわ。

 そんな貴方を他の人がクラス委員長になって、指導したりするのは実際の処無理に決まっているし、その子にとってはトラウマ級の心理的ストレスになるに決まっているわ。

 ならば、その様な無駄なトラブルを抱え込むより、貴方自身がクラス委員長になって、クラスを主導すれば良いでしょう?

 そういった事を念頭に置いた話しよ、判るわね」

 

 と答えてくれた。

 それもそうかと納得しながら、やや手間だなと考えていると、妹達と弟が温いほうじ茶を飲み干して聞いてくる。

 

 「兄ちゃん、クラス委員長って何やるの?」

 

 「兄様は、流石ですね!」

 

 「兄たん、僕もそれになりたい!」

 

 其れ其れが疑問?を聞いて来たので、答えて上げた。

 

 「セラ、クラス委員長とはね、先生からの通達をクラス全員に周知させたり、円滑にクラス運営を行う為にクラスメイトを主導し、様々なイベントでは率先してクラス全員を率いる立場となるんだよ」

 

 「シェラ、それ程大した事は無いよ。

 高学年になると大変だけど、低学年ではそれ程仕事は無い」

 

 「ルー、お前も皇子宮の教室があるから、似た様な事は出来るよやってご覧」

 

 と其れ其れに答えてやると、弟妹達は、

 

 「「「うん、判ったよ!」」」

 

 と元気の良い返事をして、時間になったので巨大モニターのある部屋に走って行った。

 そう言えば、今から連続ドラマで父様と母様達の物語の佳境である、スターヴェーク王国奪還戦のハイライト《帝国空軍VS『双頭の暴虐竜ザッハーク』》の話しが始まる。

 僕も実際の話しを聞いてはいるが、物語としては見ていないので楽しみにしていた。

 

 クレリア母様と本日の専属女官であるエラさん、そしてメイド達を連れて巨大モニターのある部屋に向かい、弟妹達をリクライニングチェアーに座らせると、みんなで連続ドラマを鑑賞する。

 

 連続ドラマとは言うが、実際の映像を時系列で纏めて再編集し、子供が見ても判る様に実際は喋っていないシーンで大声で説明してみせたり、残酷なシーンは抜きにした内容ながら、戦術級魔法や剣の斬り合いそしてドラゴン対モンスターの激しいバトルは本物なだけに、その圧倒的な臨場感は半端なものでは無い!

 

 冒頭で昨日放送された再放送が流され、クレリア母様が指揮している帝国軍(此の時はまだベルタ王国軍と義勇軍からなる『総帥府軍』)が悪の連合軍であるアロイス王国とアラム聖国に対抗して籠城戦を展開し、セラとシェラの母親であるセリーナ団長とシャロン副団長が率いる機動軍が、其れ其れの門から出撃するシーンから始まった。

 

 クレリア母様が指示して、ヒルダ様(皇族にして僕の親族アマド公の奥様)と『フェンリル』が使用した戦術級魔法『コキュートス』で相手が半ば凍り付いているから、殆ど蹂躙して行って次々に捕縛して行った。

 そして、いよいよ父様とケントの両親が率いる空軍(ミネルヴァの母親グローリア様と、ワイバーン達)が、灰色の巨大なドラゴンを視認し軍団魔法『オーディン』を展開しながら対峙したシーンで終わった。

 

 いよいよ勇壮なBGMをバッグにオープニングが終わり、昨日の続きが始まった。

 

 テロップに灰色の巨大なドラゴンの名前『双頭の暴虐竜ザッハーク』が出て、過去の罪状が説明される。

 その昔大陸の中央に有った大国を支配し、周辺各国を荒らし回り暴虐の限りを尽くし、奴が暴れた所為でドラゴンと人間の相互交流が失われ、現在に至る経緯が語られた。

 

 ザッハークはアシッド(腐食)ブレスを吐いて来たが、空軍は軍団魔法『ファイアーサイクロン』にて対抗し、ザッハークが灰色の全身から瘴気を吹き出したがそれにも対抗して見せた。

 

 ザッハークは失伝された竜語魔法を唱え、『フライング・ワーム』という全長20メートルの魔物を15匹召喚し、ケントの両親が搭乗しているワイバーン達に振り向けた。

 

 当然空軍は敢然と立ち向かい、ワイバーン達は軍団魔法『ソニックインパルス』を発動し、フライング・ワームの群れを撹乱し分散させる事に成功し、続けて新軍団魔法『サンダークラッシャー』を発動した!

 

 その続けざまの大技に、フライング・ワームは大きな口を切り裂かれ、サンダーを喰らう事で身体機能を麻痺させて行く。

 

 そして空軍は軍団魔法『ファイアートルネード』を展開した。

 

 正に大博打だ、如何に魔石カートリッジの魔力供給が有るとは云え、ドラゴンに較べて魔力キャパシティーの少ないワイバーンが軍団魔法を連発するとは、命がけの行動だ!

 

 当然、登場者達にもその負担が伸し掛かって来る。

 明らかに無理をしているケントの両親達は、にも拘わらず凄まじいスピードでフライング・ワームの周りを飛び回り、敵軍を漏斗状の竜巻に巻き込むと敵の最下方に集結し、一斉に最大火力のファイアーブレスとファイアーを漏斗の先端に放ち、敵軍を焼き尽くす事に成功する。

 

 凄まじい!

 とてもでは無いが、ドラゴンであっても殆ど不可能な芸当を、ケントの両親達は成し遂げたのだ。

 

 だが、その信じられない激闘であっても、この後の父様+グローリア様VS『双頭の暴虐竜ザッハーク』の死闘の前では霞んで見えた!

 

 グローリア様は完全防御体勢のままで、父様はグローリア様の装甲の一部になって、ザッハークに連続で激突しまくっている。

 とてもでは無いが、明らかに人が耐えられる速度を超えていて、ザッハークも視認出来ていないようだが、かなりの防御力を持っているらしく、有効な打撃を与えられないでいる。

 しかし、流石に限界点が来たらしく硬質な音が鳴り響き、ザッハークの魔法防御が砕けた事が判った。

 

 『ブースト(身体強化)』魔法で、循環魔法の1つで有る『アクセラレーション(加速)』とは、此処まで凄いモノなのか!

 僕も辛うじて初期『ブースト(身体強化)』魔法を使えるが、此処まで加速出来るとは想像してなかった。

 

 その後も荒れ狂うザッハークに対して、父様がワイバーン達とケントの両親達に、

 

 「戦ってみて判ったが、ザッハークは巨体であるが故に小回りが効か無い。

 しかし、それを補うように魔法防御だけでなく、物理的に尋常で無い防御力を備えている。

 よって今から俺は体表より弱いであろう体内目掛け、此の『グングニル』(グローリア専用の接近戦武器で先端にドリルバイクと同じアダマンタイトのドリルが装着、柄はオリハルコン製で同じオリハルコン製の鎖が巻きつけて有る)をザッハークの口から体まで貫き、『グングニル』に巻いてある鎖を通し最大火力の魔法を、ザッハークの体内で解き放つ、その際恐らく俺は魔力を使い尽くしてしまうだろう。

 空軍は、弱ったザッハークに最強の魔法で以ってトドメを刺せ!」

 

 と命令された。

 横で見ている弟妹達を見ると、息を呑んで画面に集中している。

 まあ、そうだろうな。

 自分達の日頃は優しい両親達が、凄まじい覚悟を決めて命懸けの賭けに出ているのだ!

 

 次の瞬間、父様とグローリア様は、ザッハークの直上1キロメートルに移動し、凄まじい勢いで『グングニル』に魔力を充填し始めた。

 

 ザッハークは、その信じられない程の魔力に反応し、双頭の口から光線のブレスを父様達に吐いた。

 

 だが、父様達の前方に有る『グングニル』の先端のアダマンタイトのドリルは、飛んできた光線のブレスを簡単に吸収してしまった。

 

 驚き慌てたザッハークは、威力を高めた極太の光線を双頭の口から吐いたが、先程と全く同じ結果に終わる。

 

 明らかにザッハークは、父様達の尋常では無い魔力に怯み、逃げるかの様に双頭を上に上げたまま下降し始めた。

 

 「行くぞ!」

 

 と父様が闘志の塊の様な気合いの入った掛け声を上げた。

 

 次の瞬間、対巨人戦の時の様にグローリア々と父様が、燦然と輝いた!

 

 その輝きと共に凄まじいスピードで、『グングニル』を構えた父様がグローリア様と共に急降下して来た。

 

 ザッハークは、避けられないと覚悟したのか、此れまでで最大の光線を双頭の口から吐いた!

 

 『グングニル』はいともアッサリとその光線を弾き、ザッハークの双頭右の口目掛け父様が投擲された!

 

 見事に『グングニル』はザッハークの双頭右の口を貫き、体内深く潜り込んだ!

 

 そしてグローリア様は、その勢いのままザッハークの双頭左の首に完全防御体勢の状態でフルダイブアタックを仕掛けた!

 

 「ドゴッ!」

 

 と云う鈍い音と共に、ザッハークの双頭左の首は一旦折れ曲がる様に傾げたが直ぐに持ち直し、首の根本に突っ込んだままのグローリア様目掛け、光線を吐こうと息を吸い込んだ。

 

 「ザシュッ!」

 

 鋭く切り裂く音と共に、ザッハークの双頭左の首は遥か下の地面に落ちて行く。

 

 それを成したのは、グローリア様の尾に施されたオリハルコン製の武装で名は『スライサー』、魔力を込めてグローリア様が尾で対象を薙げば、殆ど抵抗無く切り裂く事が出来る隠し必殺武装だ。

 

 父様とグローリア様は、鎖の届く最大距離に退かれ、あらん限りの魔力を『グングニル』に注ぎ込み、吠える様に魔法を唱えた!

 

 『グランド・クロス』!!!

 

 その瞬間、ザッハークを中心に眩い光で出来た十字架が出現し、辺りに白い光と衝撃波が広がった!

 

 『グランド・クロス』・・・・聖魔法に於ける奥義の1つで、十字架の形状で出現しイビル(悪)の属性を持つ存在に対し神の裁きを下す。

 

  ザッハークはそのまま地面に落下して行き、地面に横倒しになった。

 

 父様はザッハークから抜け出た『グングニル』を鎖で巻取り、ザッハークの様子を確かめる為に近づいて行った。

 

 暫く全員でザッハークの様子を窺うと、何とザッハークの失われた双頭が再び生えて来ようとしている。

 

 「やはり、蘇ろうとするのか。」

 

 と父様は呟かれ、

 

 「軍団魔法『サンダーストーム』ワイバーン・バージョン展開!!!」

 

 と号令を発した。

 

 ザッハークを中心に巨大なストーム(嵐)が展開され、そのストーム目掛け空軍全員のサンダーの魔法が放たれ、徐々に周囲が静電気を帯び始め準備が整った段階で、空軍全員で協力し天の裁き『インドラの矢』を最大魔力で放った!

 

 軍団魔法『サンダーストーム』ワイバーン・バージョン・・・『サンダーストーム』は本来はアラン様とグローリア殿を中心にして放つ軍団魔法だが、何らかの理由で父様とグローリア様が参加出来ない場合に備え、訓練して来た空軍最強の軍団魔法。

 

 その瞬間世界が白く染め上げられ、続いて振動を伴った轟音が周囲一帯を包み込み、静寂が訪れる。

 

 静かな時が暫く続き、皆が辺りを確認すると地上に黒焦げに成ったザッハークが、ピクリとも動かずに立っていた。

 

 やがて、ボロボロとザッハークの翼から徐々に崩れ去り始め、ザッハークの全身は灰となって消えて行った。

 

 「終わった・・・・」

 

 誰かがそう呟き、皆、その声に反応したかの様に地面にへたり込んだ。

 

 見るとグローリア様とワイバーン達も地面にうつ伏せになっていて、父様も仰向けになり「ハーッ」と大きく息を吸い込まれ疲れ切ったご様子だ。

 

 そして、疲れ切ったケントの両親達と合流すると、互いに健闘を祝いあった。

 

 そして今日の放送が終わったのだが、とてもでは無いが興奮し過ぎて眠れそうも無い!

 

 「母様! こんなに凄まじい攻防戦だったんですね、ルドヴィーク城籠城戦とは!」

 

 とクレリア母様に聞くと、隣で観ていた弟がハッとした顔をして、クレリア母様に尋ねる。

 

 「母たん! 僕の真ん中の名前と同じだけど、あそこが僕の領地なの?」

 

 との質問に、クレリア母様が思い入れ深そうに答えてくれた。

 

 「そうよ、ルドヴィーク城こそはスターヴェーク王国にとって、全てのターニングポイントとなった地にして、ルーファス貴方の領地。

 此れは、貴方が生まれるより遥か以前に、先代のルドヴィーク辺境伯つまり私の伯父にして、貴方達兄弟にとって大伯父の遺言なのよ」

 

 そして、僕達兄弟に対してでは無く、天井(恐らくは天国に居る僕等の大伯父、先代のルドヴィーク辺境伯に向けて)を見上げながら、

 

 「・・・伯父上・・・、貴方との約束通りに、我が直系をもってルドヴィーク家の再興を成しましたぞ!」

 

 と感慨深そうに呟かれ一筋の涙を流された。

 僕達兄弟と妹達はクレリア母様に抱きついて、弟と妹達はクレリア母様の頭を撫でている。

 クレリア母様は、それに気付いて僕達全員を大きく抱きしめてくれた。

 きっと、様々な思いが去来しているんだろうと、推察して僕達も黙ったまま抱き返していた。

 




 今回は過去に有った戦争の話題が大半を占めました。
 この話しは、自分の作品である『人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)』の『56. 8月の日記①(2年目)』から『59. 8月の日記④(2年目)』の内容になります。

 前作から読まれている読者はご存知でしょうが、今作と違い前作である第一部・第二部は、戦闘に継ぐ戦闘が行われていて、現状の第三部は暫くの間、学園編なのでスポーツや格闘技以外は穏やかな学園生活が続きます。
 しかし、学園編の最終盤である士官学校編からは、前作と同じ様に戦闘シーンが盛り沢山になります。
 お楽しみ下さい。
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