皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第三章 第39話

 様々な詳細データがモニターにも表示され始め、過去の類似データが参照データとして紹介された。

 今から20年前の惑星アレスでの大戦時、当時の帝国が『スラブ連邦』と云う恐るべき怪物共を次々とけしかけて来る信じられない敵と必死の思いで戦っていた時に、『スラブ連邦』側は恐るべき怪物共を虚空に開けた『黒い穴』から度々召喚して来たのだ。

 

 其の『黒い穴』のデータと今回生じている『黒い穴』のデータは酷似しているどころか、殆ど同様のデータが観測された。

 

 唯一違う所は、穴の規模が違い過ぎる所だろう。

 20年前の『黒い穴』は地表上という事も有り、精々数百メートルから5キロメートルまでだったが、今回の『黒い穴』は惑星が2つ通れそうな代物で、呆れ返る程に規模の差がある。

 

 そして取り敢えず『黒い穴』の性質を踏まえて、名称を『ワームホール』と名付けて緊急会議を開催した。

 (ワームホール とは、時空構造の位相幾何学として考えうる構造の一つで、時空のある一点から別の離れた一点へと直結する空間領域でトンネルのような抜け道である。)

 

 恐らくあの『ワームホール』から、バグスの大艦隊及び『宇宙大怪獣』もしくは其れ等に匹敵する或いは凌駕する敵がやって来ると推測された。

 

 「恐らく、此の反応からして数多のバグスの大艦隊と『宇宙大怪獣』達が、あのワームホールからものの1時間程で押し寄せて来ます。

 此の膨大な数の敵に対して、我等は最大の兵装を使ってしまい、むこう1ヶ月は星系破壊奥義『フェーズトランスレーション・スターシステム・クラッシュ(相転移星系破砕)』は使用不能です。

 ですが、暗礁宙域の邪魔な星屑や宇宙塵の類は一掃する事が出来ているので、次善策である幾つかの攻撃手段が実行可能になりました。

 直ちに準備に掛かり、その間にも『神機』達はエネルギー回復に努めます!

 各自、作戦行動規範に基づいて行動して下さい!」

 

 「了解致しました!」

 

 綺麗に唱和された返答をして、帝国航宙軍の軍人全てが素早く持ち場に着いて行動を開始した。

 

 自分を含む『神機』部隊は、宣言した通りにエネルギー回復に努め、その間は司令官やその幕僚達と敵バグス共の動向に応じて適切な手を打つべく、『神威』の艦橋で『ワームホール』とそのトンネルの様な奥地を観測する。

 

 此方は直ちに『神威』を中心として宇宙要塞艦を両脇に配置した魚鱗の陣を構え、『ワームホール』からそれなりの距離を取った位置に着いた。

 

 やがて、『ワームホール』の奥から恐らくは1千万の火線を越えるビーム攻撃が襲って来たが、当然帝国航宙軍の艦艇に届く前に掻き消える。

 

 実は殆どの『神機』には『吸収』と能力が有り、その『吸収』能力で『亜空間』にエネルギーとしてプールさせる事が可能なのだが、その能力を使用している間は殆どの『神機』側の攻撃行動が出来ないと云うデメリットが存在する。

 

 但し、現在の様に『神機』は動けずに『神威』内で格納されている状態で、然も一定の方向からの純粋なエネルギー攻撃ならば『吸収』する対象としては持って来いである。

 

 かなり長い間、1千万の火線を越えるビーム攻撃が帝国航宙軍の艦艇に襲い掛かって来たが、やがて沈静化して奇妙な静寂が此の戦場に落ちた。

 

 しかし、当然此の攻撃が先手どころか、只の様子見なのは帝国航宙軍人には把握出来ていたので、些かも緊張感を緩めずに『ワームホール』奥に存在するバグス共の次の手を警戒する。

 

 バグス共の次の手は、想定通り巨大な質量兵器である星屑を直接ぶつけて来ると云う、とんでもなくシンプルな力技であった。

 

 純粋なエネルギーであるビーム攻撃では何の痛痒も此方に与えられないどころか、寧ろ利している事に気付いて質量兵器をぶつけて来る事は直ぐに想定出来ていた。

 

 なので、あちら側から見えない『ワームホール』の周囲を取り囲む形で、『竜機人(ドラゴノイド)』と『竜機神(ドラグゴッド)』に乗り込んでいるドラゴン達が十字砲火を浴びせれる様に待機しているので、容赦無い攻撃を星屑に集中させた。

 

 その圧倒的な火力は、殆ど一瞬で星屑を崩壊させてしまい、続けてやって来る星屑と宇宙塵の波状攻撃も、その攻撃で突進エネルギーを失いまるで『ワームホール』に蓋をする様に星屑と宇宙塵が滞留してしまった。

 

 だが、此の状態も自分の二人の軍師『諸葛亮』と『安倍晴明』は予測していた。

 

 「元々、暗礁宙域に此の『ワームホール』を隠していたバグス共の意図は、星屑と宇宙塵で我々の探知手段が使えない様にしていたと考えられます!」

 

 「その通り! そして此の段階で此の様な手を打って来るという事は、敢えて障害物を設ける事で『ワームホール』の先に有るバグス共の拠点に直接攻撃をさせず、此方側の『ワームホール』入り口を戦場として固定し、障害物の星屑と宇宙塵の隙間から小型の艦艇等で攻撃して来るつもりでしょう!」

 

 二人の軍師の意見を聞いて、自分と司令官そして幕僚達は作成していた対応策の内の一つを採択した。

 

 即ち、『機動武人(モビルウォリアー)』と『竜機人(ドラゴノイド)』及び『竜機神(ドラグゴッド)』での『ワームホール』入り口での白兵戦である。

 

 いよいよ、宇宙空間での白兵戦と云う非常に珍しい状況が生まれようとしていた。

 

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