(『機動武人(モビルウォリアー)』部隊長 『劉備玄徳』大尉)視点
我々の搭乗している機動武人は、『神機』を除けば事実上、人の乗る事が出来る最強の機動兵器である!
が、それ故に凄まじいばかりの耐性と適応能力が必須であり、その為の訓練は凡そ只の帝国軍人が耐えられる代物では無い。
恐らくは此のレベルの訓練を耐えられる存在は、億と云う単位の帝国軍人の中でも数十人程度と思われる。
何故我等がそのレベルに達しているかと云うと、自分自身の志願によるものだからだ。
我等の主君たる『アポロニウス皇太子殿下』と『褒姒皇太女殿下』は、その立場にも関わらず『神機』のメインパイロットとしてバグス共との戦争の最前線で戦う使命を帯びていて、その使命は誰も肩代わり出来ない。
ならば、家臣たる我々は主君の進む道の目障りな障害物を排除すべく率先して行動すべきだろう。
今までも数々の最新兵器を乗りこなす事で努力はしていたが、とても主君の露払いを出来ていたとは思えなかった。
しかし、漸く『機動武人(モビルウォリアー)』と云う既存の兵器群と一線を画す存在は、『神機』にこそ及ばないがたった一機で、複数の帝国航宙軍艦挺に対抗し得る機動兵器である。
ただ、今までの戦場ではその運用に適さないものだったが、此の限定された空間と障害物で溢れた戦場は、小回りが利いて高機動の『機動武人(モビルウォリアー)』と云う存在は、能力値(スペック)以上の戦果を敵に対して与えられるだろう。
主力の『竜機神(ドラグゴッド)』と『竜機人(ドラゴノイド)』が容赦無い攻撃を、怪物の大軍に浴びせていく中、要所要所で軍師の『安倍晴明』と『諸葛亮』が、現場の状況を素早く把握して個別の機動武人に指示を出す。
決して無理をせずに、より効果的な敵の弱点を突く運用方法は、真に敵にしてみれば嫌でしょうがない相手に違い無い。
何と言っても機動武人は、其れ其れの武将の特性を最大限活かしきった、オーダーメイドの逸品物の機体群なので、遠距離特化・近距離特化・魔法特化・速度特化とかなり其れ其れで特性が変わる。
例えば、『源為朝』・『源義家』兄弟と『黄忠漢升』の機体は魔法弓での遠距離攻撃で怪物共を足止めし、其の進軍の遅くなった怪物共に、速度特化の『源義経』・『クーガー』・『姜維伯約』の機体は其の圧倒的なスピードで怪物共の眼を潰して行き、『関羽雲長』・『張飛益徳』・『趙雲子龍』・『馬超孟起』そして自分の機体が其れ其れの得物で混乱している怪物共を斬りまくり、最後に『安倍晴明』・『諸葛亮』の機体が其の凄まじい陰陽魔術を行使して、怪物共の弱点を突いた魔法攻撃で一斉に薙ぎ払う!
此のルーチンワークをひたすら繰り返し、徐々に怪物共の大軍が散り散りになって来たので、残った怪物共の掃討戦に移り始めると、魔力のカートリッジが底を付き始めたので、後詰めとしてやってきた帝国航宙軍の艦艇に後の始末を頼んだ。
我等の機動武人よりは魔力のストックの多い竜機神と竜機人も暫くしてから、『神威』の後方部に有るドラゴン用の格納庫に収納されて、『神機』と同じく魔力と他のエネルギー兵器用の補給に努める。
その間、帝国航宙軍は完璧なまでの艦隊運用で怪物共の殲滅戦に移行し、ワームホールのトンネル内を掃除して行った。
ほぼ怪物共の討滅に成功した帝国航宙軍は、深宇宙探査用の特別性の探査プローブを幾つもワームホールの出口に向けて放出し、敵バグスの動向を窺ったのだが、何故かクラインの壺の様に空間の迷路となっていて敵バグスの軍勢の痕跡を追えない事が判った。
突如中途半端な形で決戦が終わってしまい、何とも言えない気分に帝国航宙軍は陥ったのだが、考えて見ると結構ギリギリの状態だったので丁度良い引き潮だったのかも知れない。
そして一旦惑星アルカディアに帰還して、不自然なバグス共の撤退を不思議に思った帝国軍上層部は、あらゆる手掛かりを得るべく、惑星アルカディアに残っていた完全な形の情報データバンクから、本来の『人類銀河帝国』の主要航路ルートと、辺境への幹線ルートに向かい超長距離探査プローブを放出し、常に超FLT通信で状況観測を行える様にした。
そして、破壊されて使用不能になっていた人工惑星や資源惑星等を、順次復活させた上で次々と改良を施してより強固な軍事惑星に強化して行く。
更に『スターロード』をシレノス星系との間に設置させるべく、大規模な建造を開始し始めた。
此れによって惑星アレス→シレノス星系→アルカディア星系と云うハイウェイを通す事になるだろう。
次の大戦の予感をヒシヒシと感じながら、此処アルカディア星系を強大な軍事星系と変えるべく、我等帝国航宙軍は動き出したのである。