あれから1年が経ち帝国航宙軍は、アルカディア星系に強大な軍事体制を整えた国家を作り上げた。
本当ならアルカディア星系には、復興と同時に安全性を確保した上で軍事とは切り離した国家運営をして行って貰いたいのだが、存在している宙域の位置がそれを許さない。
元々暗礁宙域を近傍に置いていたから資源を得るのに適していて、様々な資源衛星を現在もアステロイドベルト状に植民惑星等をリング状に取り巻いている。
其れ等は最大限活用し、強力な軍事衛星を幾つも建設している。
此の惑星アルカディアに出来た強大な軍事国家を、当初は元々の主権を保有しているアルカディアの住民が持つべきだと、6星系での何度もの会議で帝国は勧めたのだが、アルカディア星系始め他の5星系の代表は、何時かバグス共を追い出して安全が完全に担保されてから戻してくれれば良いと、全面的に政務と軍事の権限を帝国に移譲し、更には出来れば自分を代表者として欲しいと懇願して来た。
此れには自分も驚いたが、どうやら様々な媒体を通して『神機』の中でも最強の『メタトロン』のメインパイロットである自分は、事実上バグスに対しての反抗の象徴にして、先の大戦で暗礁宙域を全て吹き飛ばした能力は希望の存在らしい。
何とも面映ゆい話しだが、少しでも6星系を繋ぎ止める象徴になるのなら仕方ないと思い、諾々とその立場を受諾した。
あくまでも象徴としての代表なので、政治の実務は其れ其れの星系から選抜される、優秀な政務官と官僚に政務を任せ、自分と帝国軍の軍人には黙々と軍務を熟して行けば良い。
「アルカディア軍事同盟代表! お早う御座います!」
「アルカディア軍事同盟代表! 今日の予定は此の通りなので、時間になったらお迎えに参ります」
「アルカディア軍事同盟代表! 軍事衛星の完成式典での演説草稿を 事前に添削願います!」
等々の相談事が、朝の軍務ビルでの私室に入ると端末に洪水の様に流れてくる。
其れ等を情報管理してくれる人工AIと、それを統括している秘書室長に整理してもらい、優先順位を着けて報告して貰う。
全ての決済が済んだのは入室してから1時間後で、其処からスケジュールに則った行動を開始する。
戦略シミュレーションを行う専用ルームに着いて、早速新たなバグスの動向を掴んだ探査プローブの詳細データを元に、予想される戦略図での会議が始まった。
「我々の3つの星系から撤退した行動から、バグス共は恐らく艦隊を再編成した上で此方を上回る大軍勢で再侵攻して来ると予想をしていたのですが、想定されたそれ程離れていない宙域でバグスの大軍勢が集結すると云う想定は外れて、中々バグス共の足取りを追えませんでした!」
「なので、探索の枠を広げて此の銀河の外にまで、従来の探査プローブと超々深宇宙探査プローブを併用して、徹底的なバグスの追跡を行いました。
その結果、恐るべき事実が確認されたのです!
そお恐るべき事実とは、現在此の銀河に派遣されている先遣部隊である、バグスの約3億に及ぶ大艦隊では無くて、主力軍とでも呼ぶべきバグスの大軍勢との合流と云う事実でした。
正直、主力軍がやって来る事はかなり以前から我々帝国軍では、遅かれ早かれ訪れる脅威であると認識していたので驚きでは無いのですが、その規模と巨大さは想定を遥かに越えていたのです。
あくまでも超々距離の遠望での観測結果でしか無いのですが、そのバグスの大艦隊の数は少なくとも兆と云う単位を凌駕しており、更には中心核に存在する物体は遠望での観測結果にも関わらず、途轍も無い大きさを誇りその周辺は重力異常による歪みが、まるで高重力のブラックホールであるかの様にみえます」
と、二人の軍師『諸葛亮』と『安倍晴明』が事前説明を行ってくれた。
予め此の情報を得ていた、自分や軍の将官以上の上層部は落ち着いていたが、専用ルームには居らずにAR空間で此の戦略会議に列席している、中間層の尉官クラスの軍人は動揺したのだろう、かなりどよめいた雰囲気が伝わる。
だが、その主力軍は銀河系に進軍しつつはあるが、未だにバグスが占領している宙域にも達していない。
しかし、此の主力軍が何の痛手を負わずに銀河系に到達してしまうと、ほぼ我々の敗北が決定してしまう程の戦力である事も事実である。
ならば我々は、此の事態を覆すべく戦略を練るべきだろう。
此のあまりにも絶望的な戦力を前にしても、我々帝国軍は諦める様子も無く積極的な討論を開始した。