僕は日々の日常を熟しながら、学校生活を満喫していた。
学業は変化こそ無いが、同じ事を学んでも色んな意見が有る事を知ったり、体育等で全員で同じ動作を繰り返したり、縄跳びや行進行動等の息を合わせなければ進まない、連帯行動の重要性を学んだ。
レクリエーションやイベント等でクラスの意見を纏めたり、クラス対抗試合で順位を競いで連帯意識が図れたりと、中々有意義な集団での行動規範を学べた。
そして凡そ2ヶ月が過ぎて、6月3日からの『武道大会』に、学年毎の見学ツアーが組まれて、僕達一年生は初日の学生部門を見学に行く。
帝国航空会社『エンパイア・エアー』が就航させている、『飛空艇』2機をレンタルして交代交代で、ザイリンク公国を往来させるそうだ。
僕達一年生から四年生までは、演武にも参加資格は無いが五・六年生の先輩方は、地方予選を勝ち抜いて参加する選手が僕達の『学校』には三人居る。
是非、優勝してもらいたいので、全力で応援するつもりだ。
実はこの選手の一人に、ドッジボールを学ばせて貰っているリーダー格の先輩が居て、その先輩の応援が僕達の主目的。
参加する選手と、武道専門の教師は3日前にザイリンク公国に入っていて、会場での練習を熟している最中だろう。
そんな事を考えて『飛空艇』に乗り込むと、僕達一年生だけで無く何故か妹達と弟まで乗り込んできた。
「・・・何でお前達が、飛空艇に乗り込むんだ!
挨拶はもう済んだんだから、空港に戻らないとそろそろ出発しちゃうぞ!」
「だって、兄ちゃんばっかりズルいじゃない!
私も『武道大会』を見に行きたい!」
「あたしも、エラさんの応援したい!
ルー君もそうでしょう?」
「うん、僕もがんばれ~と言いたいよ!
母たんとオーエンするんだよ」
と、我儘を言って来た。
座席に着いている母様ズ(クレリア・セリーナ・シャロンの母様達)は、
「アポロ、大丈夫よ。
私がルー君をずっと抱いて置くから、他の人には迷惑を掛けないわ」
「セラとシェリには、飛空艇内で騒いだら空から突き落とすと約束してあるから、覚悟が有るだろう」
「私達も、今回は演武を披露すると教えて上げたら、どうしても生で観たいんだって。
アラン父様からも、大人しくしてるのならと、お許しも出てるわ!」
と母様ズが言ってきたので、大きく溜息を着いてから母様ズと相談して僕達の席を弟妹達に譲り、僕達5人は荷物と共に飛空艇から降りた。
飛空艇は、僕達を残してゆっくりと飛翔して行く。
窓に張り付いた弟妹達が、大きく手を振っているのがよく見えた。
「・・・それでアポロ。 俺達は別の飛空艇で行くのか?」
とケントが聞いてきたが、ロンは僕の意図に気付いた様で。
「ケントよ、考えてみろよ。 僕達5人だけが飛空艇から降りたんだぞ!
そんな無駄な臨時の飛空艇を出す訳が無い!
別の方法を取るんだよ、 つまりミネルヴァで向かう!」
「そうか! 2週間前に成功したミネルヴァでの飛行旅行を、再現させる訳だな! 」
「そういう事だよ。 あれはベルタ公国を見て回るだけだったけど、充分な耐久性と乗り心地の良さが確認出来た。
然も、飛空艇の巡航スピードを遥かに上回るし、高度を自由自在に変更出来るから、余っ程、空の旅としては楽しめると思うよ!
おや? もう来たみたいだな!」
僕がそう言うと、空港の天井に有るゲートから、ミネルヴァが旅客用のカーゴを背負って降りてきた。
「アポローーー!
ミネルヴァ参上ですよーーーーー!」
と最近の口癖なのか、妙に間延びしたセリフが翻訳機を通して聞こえてきた。
「思ったより早かったな、ミネルヴァ!
さて、みんな乗り込むぞ、荷物を充分にカーゴ内で固めて、上下左右に揺れても問題無いようにするぞ!」
「「「「判った!」」」」
威勢の良い返事が返って来て、直ちに荷物をロープでカーゴ内の荷物入れに縛り付けると、余った荷物入れの空間には空港の梱包材を入れて置く。
バランスを取った席順に座って、身体にシートベルトと其れ其れが循環魔法で、身体の耐久性を上げて空軍特製の気圧安定剤を錠剤で飲む。
「準備完了だ、ミネルヴァ!
飛空艇に追いつけ!」
「了解ーーー!
ミネルヴァ! 行きまーーーーーす!」
その言葉と共に、ミネルヴァは魔力を上手く利用してゆっくりと、伏せた状態から浮かび上がり徐々に斜めになると殆ど翼を動かかさずにスピードを上げて行き、高空へと舞い上がった。
《やっぱり綺麗だなぁー!》
何も遮るものの無い雲の上の景色は、2週間前に飛んだ時と同様に素晴らし過ぎて、思わず見入ってしまう。
「見えてきましたよーーー!」
とミネルヴァが僕に翻訳機の通信手段で、僕の脳に直接会話してきた。
目を凝らして水平線を見ると、先行している飛空艇が見えて来た。
飛空艇に乗っているクレリア母様に、AR通信で僕達がそろそろ合流しますと伝えると、
「判ったわ。 ゆっくり近寄りなさい」
と返事してくれたので、言われた通りにミネルヴァを飛空艇の横に並ぶ様に指示し、僕達も舷側越しに近付く飛空艇の窓を覗くと、弟妹達が此方を見て手を振っている事を確認する。
この快適な空の旅を満喫するべく、僕は予めカーゴに用意して置いたチューブ型のジュースを、其れ其れの好みに合わせて配布し、高空から見える地上の景色を鑑賞しながらゼリー菓子と一緒に飲み、まるで下界を見下ろす神様の様だと云う感想を持った。