皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第三章 第60話

 「・・・成る程な・・・、ふむ、アポロも漸く己の壁にぶち当たった訳か・・・。」

 

 「普通、幼い子供の頃に思うように行かずに諦めたり、学生の段階で武道やスポーツで限界点を感じて行き詰まるんだけど、考えてみたらアポロは今まで努力すれば大抵の事は乗り越えてしまったからね~・・・。」

 

 両親は、自分の事を幼い頃から思い返して、色々と解決策を模索してくれる。

 

 其の上で、父上が今までの自分の『戦略・戦術シミュレーター』のログと、特訓の動画や資料をAR空間で詳細に点検し、幾つかの打開策を考えてくれた。

 

 「ふむ、大体の状況と理由が判って来たな、アポロ、お前の普段の感覚と『戦略・戦術シミュレーター』での感覚差を確認させてもらうぞ」

 

 と言って父上はナノム・ネットワークを介して、自分の様々な身体的なログと状態変化の変遷を、詳細にチェックして行った。 そして、

 

 「クレリア! 明日の予定に『戦略・戦術シミュレーター』の見学と体験と云う項目を設けて、其の上で夜には剣聖と拳聖と合流して、色々と試してみようと思う。 良いかな?」

 

 「判ったわ。 幾つかの公式行事は私だけでこなすけど、夜の試しには私も同席させてね。 久し振りに武道の凄さを実感したいわ!」

 

 「有り難う御座います、父上、母上! 自分の我が儘に付き合わせる事になってしまって申し訳無いです!」

 

 「そんな事は無い! 私の想像通りならアポロの感覚が共有されたならば、確実に武術の到達点は究極の極みに近付く。

 その道程がもしも皆が辿り着ける境地ならば、恐らくは対バグスへの切り札の一つ足り得る!」

 

 そう締めくくって、久し振りに父上の趣味で作って貰ったデザート『杏仁豆腐』を、クレリア母上と一緒にご馳走になり、お二人の寛ぎの時間を邪魔する必要は無いので退席させて貰って、仲間達が滞在している迎賓館の部屋に向かい、渡された父上のデザート類を満喫した。

 

 仲間達全員にとっても、幼い頃から父上の作る料理やデザートは、どんな豪華な料理やスイーツに勝る代物なので、半ば最初から期待していたのだろう。

 

 子供の様に頬を膨らまして、3日分は有った量を食べ尽くしてしまった。

 

 「・・・お前達、呆れたな・・・、まるで幼い頃に拳聖様と剣聖様の訓練を追えた後、何時もアスガルド城で出されていたオヤツを食べている姿そのものだよ・・・。」

 

 「そりゃあ、そうだよ。 なんて言ったって2年だぞ2年! アラン皇帝陛下の手ずからのデザートなんてあの頃でも滅多に無かったご馳走なのに、こんなに長い間食べれなかったんだぜ!

 飢えていたと言っても良い程だったんだぜ!」

 

 「そうよ、そうよ! 吾にとっては誕生日くらいにしか食べれない上に、臣下どころか両親からも垂涎の的だったから、羨ましがられて食べれるのが凄く自尊心をくすぐられて嬉しかったんだからね!

 アポロの事を、小等部の頃に凄く妬ましかったのも、大半の理由はアラン皇帝陛下の料理やデザートを 趣味の一環で作る度に食べれると云う、信じられない位の幸運によ!」

 

 「そうなんだよ、僕の家族もお土産で持って帰るお菓子を大変楽しみにしていて、特に僕と7歳も離れた妹のジニーはアラン皇帝陛下の事を幼い時は、ずっとお有名な菓子屋さんの店長さんかパティシエと勘違いしてた程だよ!」

 

 「そう言えば、ロンの妹さんのジニーちゃんは此の美味しいお菓子は、超有名なスイーツ店を傘下に持つ『豊穣』以外で何処に有るの? て散々ジニーちゃんに会う度に聞かれて意味が判らなかったんだけど、そういう訳だったのね!」

 

 「私は、家族にお土産のスイーツをあげたくなかったんだけど、父のミツルギが物凄く鼻が利くから甘い匂いを漂わせてると、直ぐに見つけられて取り上げられちゃうのよね~、今でも悔しく思ってるわ!」

 

 と、何だか懐かしい思い出話しに花が咲いた。

 

 其れ其れが部屋に帰り、自分も迎賓館で割り当てられた部屋に行き、最高級のベッドで久し振りにゆっくりと就寝できた。

 

 《やはり、父上は自分の状態を誰よりも、それこそ自分自身よりも理解されているな。 此れで安心出来る!》

 

 そう云う風に完全に納得出来たのは、自分にとって非常に有り難かったのだろう、半年ぶりに夢も見ずに就寝出来て疲れがスッキリと取れた。

 

 翌日も朝早くから、両親は数々の公式行事をこなしていき、予定通りに『戦略・戦術シミュレーター』の見学と体験と云う行事を、父上だけが参加してくれる運びになる。

 

 参加要請者が引きも切らないので、かなり数を絞ってもらい。

 

 結局、剣聖様と拳聖様そして自分と仲間達が、父上と同時に体験する事に決まり、レオナルドとスタッフ達に徹底的に状況のデータ取りをして貰う事になった。

 

 全員が正式採用された専用コクーン(繭状のコックピット)に搭乗して、いよいよ『戦略・戦術シミュレーター』を起動させて、スラブ連邦との戦争最終盤の戦いが始まろうとしていた。

 

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