皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第三章 第63話

 父上と『ラスプーチン』は、互いの武器での攻撃の斬り合いとなっている。

 

 父上の持つ神器『レーヴァテイン』、『ラスプーチン』の持つアーティファクト『ティルフィング』の凄まじい斬り合いで有る。

 

 「ドカカカカカカカッ!」

 

 というかなりの衝撃音が鳴り響き、双方が空間を縦横無尽に飛翔しながら斬り合っているのだ!

 

 続けて衝撃波が、周囲の地表を揺るがし地面が掘削されて行く。

 

 驚愕すべき神々の戦いなのだが、父上の精神(心の内)は静謐そのもので、正に『明鏡止水』の精神状態で戦闘している。

 

 《こんなに落ち着いた精神状態で、此処までの高速戦闘と周囲への配慮が出来るのか?!》

 

 父上は、マッハ(音速)を遥かに越える高速戦闘を繰り返しながらも、周囲の味方が被る被害を最小限にする様に心掛け、敵の『システム・エキドナ』に『ラスプーチン』の攻撃をも当たる様に調整している。

 

 今迄、散々連続ドラマやアニメーションで此の戦闘を観ていたのだが、まさか此処までの配慮と状況把握が出来ているとは想像もしていなかった。

 

 自分が如何に、父上と較べて配慮が足りなく余裕の無い人間なのだと知り、顔から火が出る思いに打ちのめされた。

 

 そう改めて父上と自分との圧倒的な差を思い知らされ、全ての己の我を放棄し父上に憑依するように一体化した。

 

 戦いは、凡そ人の範疇に収まるものでは無く、正に神と邪神がこの世の覇権を争う様な、神々の黄昏であった。

 

 どんよりと暗い大空を、白金に光り輝く父上が飛び周り、『ラスプーチン』が漆黒の闇を残像に残しながら父上と激突する。

 

 「うrglぃdktb!」

 

 妙な言葉を吐いた『ラスプーチン』は、何やら禍々しい巨大で悍ましく脈動する物体を、何も無かった空間から召喚した。

 

 其れに対して父上は、

 

 「次元断層!」

 

 と叫ばれると、我々(『システム・エキドナ』をも含む)と『ラスプーチン』の間に、空間を断つ様な壁を生み出された。

 

 次の瞬間、『ラスプーチン』がその禍々しい巨大で悍ましく脈動する物体を、父上に投げつけて来たが、空間を断つ様な壁の前で、一気に凝縮して弾けた!

 

 一瞬、世界の全てが白く染まり、父上が展開された空間を断つ様な壁のお陰か、音の絶えた静寂(この時点で『システム・エキドナ』は沈黙している)のなか、周りを見回すと、父上が展開した壁より前の地面は存在しなかった!

 

 信じられない思いで、ずっと先の方を見ると辛うじて山脈の一部が見えて来た。

 

 つまり端が判らない程のクレーターが、『ラスプーチン』の攻撃により現出したのだ。

 

 そして父上は雄々しい雄叫びを上げた!

 

 「征くぞ、『ラスプーチン』!

 

 ”武神アラミス”認可奥義『ドラゴン・ファング(竜牙)』!」

 

 すると父上の背後から黄金色のドラゴンの頭が八つ出現し、凄まじい勢いで『ラスプーチン』に襲い掛かった!

 

 『ラスプーチン』は逃れようと、飛ぼうとするが、呆気なく四肢を八つのドラゴンの顎に喰らいつかれ、拘束された!

 

 「kし柄rh云うgs@jmェhb!」

 

 『ラスプーチン』はその虫の頭を振り回そうと呻くが、当然ドラゴンの顎はそれを一切許さない。

 

 やがて父上が更なる精神集中を始め、『明鏡止水』の精神状態を越えて遥かな高みへ向かって行った!

 

 《・・・『明鏡止水』すら越えてどれ程の高みへ・・・?》

 

 そう疑問が浮かんだ瞬間、父上の意思が自分の中に滑り込んできた。

 

 【実は此の時と、後の『ハルマゲドン』の最終局面で、私は『明鏡止水』を越える段階に行きつけるタイミングが有ったのだが、其処に至ると自身がどうなるか判らない不安が有ったので二の足を踏んだ。

 だが、此の『戦略・戦術シミュレーター』内であれば問題無いので、『明鏡止水』を越えて見せよう!

 アポロよ! 共に此の高みへ着いて来い!】

 

 【わ、判りました、どうか導いて下さい!】

 

 【良し! 征くぞ! 名付けて『鏡花水月(きょうかすいげつ)』!】

 

 瞬間、『明鏡止水』に於ける明鏡の鏡に、儚げな『花』が浮かびまるで幻想の様な佇まいを見せた・・・。

 その『花』はあまりにも儚げで、思わず手を伸ばして手を添えてしまいたくなるが、決して手の届かない鏡の中にしか存在しない事も判るので、もどかしい思いが募る。

 そして『明鏡止水』に於ける止水の湖面に、幻想的な美しい月が映える・・・。

 共に決して人が掴む事の出来ない、目に見えて居るというのに心でしか感じられない、全てが幻の現象だ・・・。

 現象としての在り方を肯定し、全てを良しとする心持ち。 其れはある意味、神々のみが持つ超絶した精神性。

 殆ど人間として有り得ない境地に達した瞬間、『明鏡止水』の段階では神鎧『ジークフリート』の溢れ出る圧倒的な力の奔流を、流れのままに受け流していただけだったが、的確にそうまるでゆっくりとコップに水を注ぐ様に、力を適切な量だけ引き出して解放する事が精密に出来る様になる。

 

 そして、全く気負う事がなく父上は言葉を吐いた。

 

 「征くぞ、”武神アラミス”認可秘奥義『ディストーション・クライシス』」

 

 と父上は述べると、『ラスプーチン』目掛け真一文字に突っ込まれ、『ティルフィング』を持つ『ラスプーチン』の左手を切断し、返す刀で左肩から袈裟斬りに斬りつけ、股間に到達すると『レーヴァテイン』を握り返して逆に右肩まで斬り上げた!

 

 丁度、Vの字に斬られた『ラスプーチン』は、

 

 「セウbyゴア!!!」

 

 と絶叫したが、技はこれで終わらない!

 

 父上は、そのまま上段に『レーヴァテイン』を構え直し、唐竹割りに『ラスプーチン』を両断する!

 

 すると『ラスプーチン』の背後に虚ろなる穴が空間に出現し、そのまま『ラスプーチン』は虚無の穴に吸い込まれる様に、落ちて行った。

 

 虚無の穴は、『ラスプーチン』を吸い込むと、まるでその様な者は初めから存在しなかったかの如く、静かに消えて行った。

 

 技の凄まじさもさる事ながら、とても人とは思えない精神状態である『鏡花水月(きょうかすいげつ)』!

 

 父上が極めた神の領域に、自分は共に至れた事実が信じられず、暫く呆然とするしか無かった・・・。

 

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