「・・・『鏡花水月(きょうかすいげつ)』・・・至れたな、アポロ。 良く着いて来れた・・・。」
「・・・いえ、とてもこんな神の領域には、自分だけでは到れるとはとても思えません・・・、父上の導きでしか到れなかった筈です・・・。 有り難う御座います!」
あまりの精神的疲弊で、自分は『戦略・戦術シミュレーター』室の隣に有る救護室に、専用コクーン(繭状のコックピット)から出された後、直ぐに担ぎ込まれて父上がベッドに横たわっている自分に語り掛けてくれた言葉に、漸く述べる事が出来た会話だった・・・。
今現在、『戦略・戦術シミュレーター』で得られた戦闘ログと、父上と自分が至れた『鏡花水月(きょうかすいげつ)』をナノムデータ化する事で共有化出来るか? の検証が行われている。
正直な処、如何にナノムと言えどあの境地を数値化して、普遍化するのは不可能だろうと判っていたが、少なくとも父上と自分はあの状態に至れたので、2人だけは同じ状態を再現する事は可能な筈だ。
ならば、自分が操縦する『神機メタトロン』ならば、他の『神機』を含めた帝国航宙軍の攻撃を集約して敵に浴びせたり、敵バグスからの攻撃を収束させた上で、反転させて敵に浴びせる事も可能だと思われる。
後は、感覚の反復訓練を徹底的に行い、何時でも『鏡花水月(きょうかすいげつ)』を引き出せる様になる事が重要だ。
そう考えながら、仲間達にも看病されている内に何時の間にか眠ってしまった様で、翌朝になるまでぐっすりと寝てしまっていた。
朝になり、父上とクレリア母上の所に軍部の重鎮達と仲間を連れて挨拶に行き、クレリア母上に昨日は結局昼からの全ての公式行事を御一人でさせてしまった事に対する謝罪と、父上には改めての感謝を述べた。
「其れでは、アポロ! 此れで貴方の軍事行動に対する懸念は払拭されたのね!」
「ハイッ、父上のお陰で想定以上の段階まで、己のレベルを引き上げて戴きました!
此処からは、自分と帝国航宙軍の仕事となります! 御二人はしっかりと惑星アレスから解放した5星系の統括をお願い致します!」
「当然、私達は初代『人類銀河帝国』皇帝夫妻として、此の重大な責務を果たすつもりだ。
そしてお前が帝国航宙軍を統括する様に、お前の弟妹達も己の責務を果たしている。
妹のセラスとシェリスは各々の母親と一緒に中継地点のシレノス星系の守備を担い、弟のルーファスは私達夫婦と共に惑星アレスの最終防衛戦を守備している。
皇帝一家は全員が、『人類に連なる者』たる人類が安寧の内に生涯を暮らせる其の日まで、決して己の責務を蔑ろにはしない! アポロよ皇帝一家の長男にして『人類銀河帝国』皇太子として、帝国軍の先駆けたらん事を願うぞ!」
と両親からの訓示を受けて、公式な対面だったので自分と仲間達そして軍部の重鎮達も跪いて拝命した。
「「「了解しました、我等が皇帝陛下(マイン・カイザー)!」」」
そして、いよいよ帝国航宙軍は前に進み出す。
自分はアルカディア軍事同盟代表としての権限に於いて、現在再編成された1億人もの帝国軍人を、例の『戦略・戦術シミュレーター』を受けさせて、本当の適正を測る事にした。
軍人達に『戦略・戦術シミュレーター』を受けさせるに辺り、軍の職制のシミュレーションをかなり細かく分けて、色々なシチュエーションも用意させて適材適所に配属させる事にした。
そんな間にも、ドンドンと軍事衛星と資源衛星が有機的に連携して、様々な防衛兵器や攻撃用の特殊弾頭等を製造していて、その備蓄量もかなりの量になってきた。
更に、此の2年間でアップグレードした上に増産された『ギャラクシー級戦艦』・『スター級重巡洋艦』・『サテライト級駆逐艦』が、其れ其れの星系での配備が済み、各星系は『宇宙大怪獣』の群れが押し寄せない限り、余裕で対処出来る防衛戦力を整えた。
其れとは別に、新しい艦種である『衛星級要塞艦』や『自動機動艦』等がロールアウトして、此の惑星アルカディアの要所要所に設置された。
其れ等は、本国の惑星アレスの月に有る軍事工廠である、アルテミス基地改め『アルテミス軍事工場』で造船されていて、神々(調整者)のオーバーテクノロジーが余す所なく用いれられているから、ほぼ無人で自動防衛システムとして機能する。
肝心の帝国航宙軍の攻撃軍たる『神機軍団』は、規模を大幅に増強した。
旗艦の『神威』を中核として、『宇宙要塞艦』は艦数を2隻から8隻に増強し、スター級重巡洋艦は200隻から5千隻に増強されている。
そして自律機動する突撃艦も500隻から10万隻に拡充されている。
圧倒的に艦船数を増やした上に、突撃艦以外の艦船は『縮退炉』と『モノポール』を主エンジンと変換炉として駆動しているので、敵バグスの最強艦船たる『BG-X型戦列艦』程度の主砲では、バリアーを貫くどころか揺らす事すら難しいだろう。
ドンドンと帝国航宙軍の軍備は整いつつ有り、銀河系外の『虚無(ヴォイド)』に集結している、兆単位のバグス大軍団を容赦無く蹂躙すべく、着々と想定した軍事作戦での訓練を始めて行く。