皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第三章 第66話

 (『帝国航宙軍レオンハルト大尉』視点)

 

 目の前に居る此奴等が、主君であるアポロニウス皇太子殿下の前で土下座している姿は、僅か数時間前までは想像がつかなかった。

 

 しかし、紛れも無い事実だしその過程も全て見ているので、納得の光景でもある。

 

 順を追って話そうと思うので、昨日からの経緯を振り返る。

 

 そもそも、惑星アルカディアでバグスへの抵抗軍として所属していた帝国航宙軍の軍人は、元の所属に戻る形で帝国航宙軍の軍人として階級もそのままで原隊復帰したのだが、此処で問題が生じてしまった。

 

 如何に帝国航宙軍の軍人に戻ると言っても、元の帝国航宙軍と違い現在の新しい帝国航宙軍では、組織やシステムは兎も角、軍人の在り方と基本能力は著しく違う。

 

 一番の違いは、やはり魔法の存在だろう。

 

 ナノムをお互いに保持していて、ナノムでの会話やネットワーク、更にはバグスへの憎悪と言う完全に一致している点が数多いが、魔法と云う馴染みの全く無い概念は違和感の有る技術だった。

 

 なので、一刻も早く理解と習得に努める為に、現帝国軍の首都星である惑星アレスから、魔法教育に特化した学習施設と教育者達の派遣を願い、既にその辺りを考慮されていたアラン皇帝陛下とアポロニウス皇太子殿下は、後続の輸送船団の中にはその要員や施設を搭載したドームが搬入されて来た。

 

 あれよあれよと云う間に、惑星アルカディアに元々存在していたらしい『龍脈』が、たった1ヶ月で活性化されて、予めナノムによる睡眠学習とムービーによるレクチャーが行われた事で、それまで一度も魔法などと言うファンタジーとしか思えない技を、アッサリと使えた事で驚愕してしまった。

 

 何と言っても便利だと思ったのが、回復魔法の『ヒール』と水魔法の『ウオーター』である。

 

 ナノムでもある程度の自己修復を自身の身体に施せるが、此の『ヒール』は他人に対しても使用出来る上に、慣れれば一気に数十人分を数秒で癒やしてしまう。

 

 更に『ウオーター』は、何も無かった筈の空間に突然水を生み出せる上に、温度まで自由自在である。

 

 人や動物等の生物には無理だが、機械類や微細な半導体やメモリーを使用するデバイス等には、内部に水を出現させるだけで使用不能なので、用途が有りすぎて扱いに困る程である。

 

 その他の様々な魔法の威力や利便性は、魔法技術を持たなかった我々にとって技術の大革命と目に映り、熱狂してしまった。

 

 だが、何故か此れに反発してしまった一団が存在した。

 

 件の敵バグスの降下兵を剣だけで一刀両断出来る猛者の集団である。

 

 彼等は、その昔、本来の帝国に所属していた地球という惑星の日本という地方に存在していた、『薩摩』という特殊な地域に且つて居た『薩摩武士』に憧れを持ち、あらゆる文献と口伝を頼りにその武士達が使用した剣術の『示現流』及び『薬丸自顕流』を体得し、自分達を自己鍛錬して正に現代の『薩摩武士』になっていた。

 

 そんな彼等にとって、魔法と云う摩訶不思議な技術は、まるで自分達が必死の思いで体得した剣術を否定している様に思えたらしい。

 

 全く迷惑千万な話しだが、彼等にとっては非常に重要な事だったらしく、半分強制する様な形で放り込んだ『ホグワーツ魔法魔術学校』で、突然寮の一区画を占拠し一つの塔を自分達の寮と宣言して『サツマ寮』と呼称し始めたのだ。

 

 仕方無く自分が元の上官として説得に当たったのだが、まるで聞く耳を持たずに、勝手に自分達独自のカリキュラムを作成して、魔法の授業を無視して剣術の授業を組み込んでしまった。

 

 呆れ果てた所業だが、困った事に彼等は彼等で非常に有能な戦士でも有るので、このまま対バグスの戦争に使えないのは勿体なさ過ぎた。

 

 悩んだ挙げ句、自分は己の主君であるアポロニウス皇太子殿下に相談した。

 

 すると、アポロニウス皇太子殿下は非常に彼等の事に興味を持ち、是非自分の傘下に組み込みたいと、また無茶な事を言い出してしまった。

 

 主君はそう言うと直ぐに、惑星アルカディアに有るアルカディア軍事同盟代表用のビルの私室から、窓を開けると『ホグワーツ魔法魔術学校』に飛翔した。

 

 飛翔魔法の一つで『高速飛翔術』なのだが、圧倒的な魔力を持つ主君が使用するととんでもないスピードで飛翔し、あっという間に『ホグワーツ魔法魔術学校』に到達した。

 

 自分は、専用のエレカーに乗ってアルカディア軍事同盟代表用のビルから法定速度を守り急行したら、丁度『ホグワーツ魔法魔術学校』の『アルバス・ダンブルドア校長』と主君が会談を終えて、他の先生方と『サツマ寮』に向かっているタイミングで合流出来た。

 

 『サツマ寮』の周囲は、別に立て籠もる為のバリケードなどは設けられず、寮生と思われる面々が『立木打ち』と呼ばれる自然木に朝3000、夜8000回の木刀の打ち込みをする稽古をしている。

 

 然もかなりの雄叫びを上げながらの稽古で、距離の離れた他の寮の生徒も大迷惑だろう。

 

 稽古の終わった幾人かの『サツマ寮』の寮生が、我々に気付いて話しを伺いにやって来た。

 

 「おはんらは、何用で来られたな?」(貴方方は、どの様な用事で来られましたか?)

 

 と聞いて来たので、

 

 「貴方方の代表と話し合いに来ました、私はアポロニウスと申します!」

 

 と主君が申し込んで来たので、寮生の一人が塔に向かい言付けを伝えに行く。

 

 それを見送り、主君は興味深そうに『立木打ち』の稽古場に近付いて、空いている立木の前に立つ。

 

 「是非、君等の稽古に興味が有るから、木刀を貸してくれるかな?」

 

 と稽古を終えた寮生の一人に聞いたので、寮生も面白そうな面持ちで自分の持つ硬そうな本赤樫を使用した木刀を投げて渡して来た。

 

 「おまんの佇まいを見ち、かなりの使い手ち思いもんど、おいたちの稽古ばきちいので、有名でもす。

 耐えきらんでぶっ倒れちても、良かでんな?」(貴方の佇まいから、剣術の使い手と判りますが、私共の稽古はキツい事で有名であります。

 耐えられなくて倒れるかも知れませんが良いですか?)

 

 との問いに、主君は静かに頷くと綺麗に木刀で『蜻蛉の構え』をとる。

 

 すると、ザワッと周囲の寮生が緊張して主君の様子を伺った。

 

 次の瞬間、主君は魂に響く様な掛け声を発した!

 

 「ケエエエエエエエーイ!」

 

 その掛け声と共に、凄まじい連打を左右から斬り返しながら『立木打ち』を行い、見る間に両側から自然木の立木が削れて行き、100程の打ち込みで本赤樫の木刀と自然木の立木が同時に折れてしまった。

 

 「ポンポンポンッ」

 

 という太い手からの拍手が周囲に響き、振り向くとかなりゴツい体格をした男が主君に対して拍手を送っていた。

 

 此の男こそ自分の元部下で副長だった、『島津義弘』である。

 

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