(『帝国航宙軍レオンハルト大尉』視点)②
『島津義弘』・・・、そもそも此の名前自体が改名したもので、元の軍籍簿では別の名前だった筈だが、新たに惑星アレスの『ナノム玉』での登録時に、頑なに此の名前で登録してしまった経緯が有る。
此の事例は、此の『サツマ寮』に所属する全ての人員が同様の措置を取り、全員が過去の『薩摩藩』由来の人名を登録している。
(例えば、西郷隆盛・大山巌・東郷平八郎等である)
凡そ、通常人の感覚を度外視した奴等なのだが、軍務に於いてはある程度従順で軍事行動がかなりキツい内容でも、否、寧ろ命懸けな程危険な任務に望んで志願して来る奴等であった。
そんな奴等の代表なのが此の『島津義弘』である。
徐にその拍手に振り返った主君は、満面の笑みを浮かべて島津義弘に語り掛けた。
「君が島津義弘殿か、是非会いたいと思っていたよ!
私はアポロニウスと言う者だが、今日は君等と酒を酌み交わしたいと思いやって来たんだよ!」
と言われると、丁度、此の『サツマ寮』にやって来た小型トレーラーから、次々と様々な酒類とツマミが運び込まれて来た。
すると島津義弘が、
「こいは、有難か土産でごわんな、然もおいの好みな『芋焼酎』が有りもっそ!
是非、酒盛りしもっそ!」(此れは、有り難い土産ですな、然も私の好きな『芋焼酎』も有るようで! 是非、酒盛り致しましょう!)
とゴツい顔を綻ばせている。
だが、島津義弘の斜め後ろに居て鋭い眼差しを主君に向けていた若者が、ズイッと前に出て来て主君と周りに居る『アルバス・ダンブルドア校長』とその他の先生方に目礼し、改めて主君に向かい合い言葉を述べて来た。
「失礼しもっそ! おいは義弘叔父御の甥で『島津豊久』ち言うもんで、2才(にせ)からはトヨと親しみば込めて言われちもす、おいは歳がちけえ殿下の噂を元同僚共から、散々聞かせて貰いもした。
先程の稽古のざまば見せち貰うて、噂は嘘じゃなかと思い知りもした!
是非、おいと一手指南ばをしてくりもんそか?」(失礼致します! 私は義弘叔父の甥に当たる『島津豊久』と申します、若い者からはトヨと言う愛称で呼ばれています、私と年齢が近い皇太子殿下のお話しは元の同僚から何度も聞かせて貰っていましたが、先程の稽古を見させて頂いて、噂の通りだと感じ入りました。 是非、試合を致して頂けませんか?)
と願い出て来て、それに続いて二人の元部下だった者が同様な事を申し出てきた。
それに対して主君は、
「いや、此れは本当に有り難い! 義弘殿! 宴会前に此の者達との手合わせをさせて頂いても?」
「良か!」(良いですよ!)
との主君の問いに、島津義弘もにこやかに応じて見せた。
少しの間を置いて、立ち木打ちの稽古場近くの広場で私の元部下3人と、主君との試合が行われる事になった。
一番目は、元の対バグス抵抗軍でも随一の銃の名手であった、『村田経芳』。
二番目は、元の対バグス抵抗軍でも有数の剣の使い手、『田中新兵衛』。
二番目は、元の対バグス抵抗軍でも一二を争う剣の使い手、『島津豊久』。
此の面子で行うのだが、問題はその内容である。
銃での対決は、『村田経芳』戦がパルス・レーザーガンを使い、主君はライトの魔法。
剣での対決は、『田中新兵衛』戦は双方が同じ赤樫の木刀での対戦で、『島津豊久』戦は双方が本身の刀での対戦となる。
『島津豊久』戦だけは、とても正気と思えない内容だが試合をする全員が何の躊躇も無く肯んじた。
試合中でも怪我をした瞬間、先生方と一緒に『ヒール』系の魔法を掛け合う事に首肯しあい、近くで立ち会う事にした。
第一試合の銃と魔法の対戦は、固定された幾つもの的と動く的を撃ち抜いて行く。
正確性ではナノムの所為で比較しようもないので、銃であろうと魔法であろうと差は出ないので、暫くの撃ち合いは勝負が着かなかった。
なので、結局スピード勝負になった。
一見引き金を引くだけのパルス・レーザーガンが早そうに思えるが、機械式の判定装置で判定させると、主君の人差し指から連射されたライトの魔法は、『村田経芳』がパルス・レーザーガンの3倍程のスピードで的を射抜いていることが証明されたので、主君の勝ちと決まった。
『村田経芳』は、勝負が決まった後に的の確認に行き、ライトの魔法が的を正確に射抜いている上に、全く音が無かった事と自分のパルス・レーザーガンでの連射よりも、ライトの魔法の連射が早かった事実に感銘を受けた様だった。
こうして第一試合は終わった。