皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第三章 第69話

 (『帝国航宙軍レオンハルト大尉』視点)④

 

 島津義弘は話し始める。

 

 だが、かなり薩摩弁がキツいので全員がナノム・ネットワークでの同時翻訳を起動し、聞かせて貰った。

 

 「そもそも凡そ3年前に、アポロニウス皇太子殿下が率いる『神機軍団』が、我等の母星惑星アルカディアを解放してくれた事から端を発します。

 其れまで、敵のバグス艦隊によって宇宙空間での戦闘に敗北し、更に惑星軌道上と空域戦闘にも負けてしまい、最早、敵のバグスの降下兵による地上戦で蹂躙されるのみとなった段階で、物量と兵器に於いて差がある現状に勝つ方法を我等は必死に探しました。

 そして帝国に所属する地球と云う惑星の地方に日本が有り、その日本の或る地域に過去『薩摩』という地方都市が有って、其処には『薩摩武士』という強力極まりない戦士が居た事を知りました。

 彼等は、只、一刀を以って敵に対して向かって行き、その一撃のみで敵を斬り伏せて行く凄まじい剣術を会得していたのです。

 その剣術が現在の自分達の状況に合っていると思い、必死になってナノム・ネットワークで過去のライブラリーと残されていた疎らな文献で再現する努力を重ねました。」

 

 此処で一旦息を着いたので、主君は近くに置かせておいた簡易酒保セットから、『薩摩切子』のグラスを全員に回させて『芋焼酎』を注いで行く。

 当然自分も主君と共に、アルバス・ダンブルドア校長とその他の先生方へ飲める人に『芋焼酎』を勧めて、飲めない人にはノンアルコール焼酎を勧め、『サツマ寮』の寮生には酒瓶を配り手酌させる。

 

 改めて、島津義弘に話しさせる前に全員で、惑星アレスで蒸留された逸品物の『芋焼酎』を酌み交わし、口が滑らかになる様にしてやった。

 案の定、美味い酒を飲む事でかなり砕けて来たので、話し易くなった様で島津義弘は本音を吐露し始める。

 

 「そして、我等はバグスの降下兵に学んだばかりの『薩摩武士』の剣術である、『示現流』と『薬丸自顕流』を試したのです。

 レーザーソードを使用した『薩摩武士』の剣術は凄まじい物で、本来なら奴等の強靭な外骨格でパワードスーツの攻撃以外中々貫通しない筈なのに、斬り伏せる事が出来たのです。

 然も、パワードスーツを着込んで、レーザーソードより威力が上の『ビーム・ソード』を駆使すれば、一機だけでバグスの降下兵一部隊を倒す事が出来たのです。

 お陰で、バグスの降下兵達は我等を警戒して滅多に降下して来なくなり、代わりにMM(マイクロ・マシーン)で構成されたマン・サーチャー型の機械生命体を大量に降下させました。

 あくまでもこのマン・サーチャー型の機械生命体は、人間を感知する事に特化されていて殺傷力は強く無く、寧ろ弱いと言えるのだが数が多いので中々殲滅する事が出来なかった。

 そして一種の膠着状態で数年間を過ごして居ましたが、いよいよ敵バグスの50万隻もの大艦隊が軌道上に集結して、地表への雷撃戦と絨毯爆撃で我等を殲滅しようとして来たのですが、我等を救うべく貴方方、新『人類銀河帝国』の方々がやって来て下さった。

 あれだけ我等を苦しめた敵バグスの50万隻もの大艦隊を ものの数秒で消滅させた上に敵バグスが降下させていたマン・サーチャー型の機械生命体を、我等の『マルチ・センサー』では中々探知出来なかったのに貴方方の技術である『探知魔法』では、アッサリと見つけ出した上に簡単に構成していたMM(マイクロ・マシーン)に還元してしまわれた。」

 

 此処まで島津義弘は、大ぶりの『薩摩切子』のグラスで『芋焼酎』を主君から注がれながら飲み、酒臭い息を吐きつつ話した。

 その言葉を、主君はご自身も島津義弘から注がれた芋焼酎を、見事に飲み干し頷きながら聞いている。

 更に島津義弘は、

 

 「お判りか、アポロニウス皇太子殿下! 我等が血を吐く思いで習得した剣術で、辛うじて戦線を膠着状態に持ち込めていたのだが、貴方方の新しい技術である『魔法技術』を使用した兵器によって、本当にアッサリと敵バグスを追い払う事が出来た!

 同胞たる『人類に連なる者』の一員としてみれば、非常に有り難く感謝してもしたりない程だが、誇りを持って敵バグスと命懸けで斬り結んでいた我等からしてみれば、まるで我等は見当違いの努力に血道を上げている時代錯誤の阿呆の様に罵られたも同然だった!

 なので、我等は必死に習得した『薩摩武士』の剣術である、『示現流』と『薬丸自顕流』に誇りを抱いて磨き続ける事に固執したのです・・・。」

 

 と一気に己の内にある心情を一気に吐露して、一際大きな溜息を酒臭い息と共に吐き出した。

 

 静かに、島津義弘の心情を全て聞いた主君は、

 

 「島津義弘よ、立ち上がって歯を食い縛れ!」

 

 その一喝にヨロヨロと酔った身体で島津義弘は立ち上がり、言われた通り歯を食い縛った。

 

 次の瞬間! 主君が大きく振りかぶった右拳を島津義弘の頬にめり込ませた!

 

 派手に吹っ飛んだ島津義弘は、暫く気を失ったらしく呆然としていたが、漸く頭を振って起き上がる。

 

 その様子に驚いていた『サツマ寮』の寮生達は、慌てて両者の間に入ろうとしたが、主君が涙を流している事に気付きたたらを踏んだ。

 

 主君は、

 

 「何と言う女々しさだ! 島津義弘よ俺は期待していたのだぞ!

 此の時代に俺と同じく『薩摩武士』の素晴らしさと、戦術の妙を理解した人物が居る事に!

 なのに、実際に会ってみれば勝手な己の美学を『薩摩武士』に投影していただけとはな!

 来い、お前達に本当の『薩摩武士』の本領というものを見せてやる!」

 

 その普段の礼儀正しい主君とは違い、荒々しい態度に全員が息を呑んで見る中、主君は己の『神機メタトロン』に命令を下して、次の瞬間『サツマ寮』の寮生達全員(担架で運ばれた2人も含む)は、例の『戦略・戦術シミュレーター』室の前に連れて来られていた。

 

 「さあ、本当に『薩摩武士』へ尊敬を以って模倣するとはどういう事か教えてやる!」

 

 そう主君が一喝し、『サツマ寮』の寮生達全員は言われるがまま、『戦略・戦術シミュレーター』室に入室して行った。

 

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