皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第三章 第70話

 (『帝国航宙軍レオンハルト大尉』視点)⑤

 

 軍管区に有る巨大施設の『戦略・戦術シミュレーター』室には、100台以上の専用コクーン(繭状のコックピット)が存在し、其処では様々な戦場でのシミュレーションが行われている。

 

 施設の代表者にして開発局長のレオナルド殿が、入室して来た主君の前に来て、

 

 「お久し振りです、アポロニウス様! 貴方様のデータのお陰で例の戦闘シミュレーションをダウングレード版で訓練させて、確実に軍人の方々を格段にレベルアップさせてますよ!

 是非、新しいパターンでのデータ取りもお願いします!」

 

 と、相変わらずの研究者オタクとしての面目躍如振りで願い出てくる。

 

 そんなレオナルド殿に主君は、

 

 「まあ、次の機会にそのデータ取りはさせて貰うが、今日は他の面でレオナルド達の研究成果を見せて欲しい!」

 

 「構いませんよ、色々なデータ取りが出来るのは私にとって喜びです!

 それでは内容を伺っても?」

 

 「嗚呼、以前に剣術タイプの訓練シミュレーション・プログラムを纏めたじゃないか!

 その中でも、『示現流』で纏めたフォルダーが有っただろう?

 其れを先ずは此の者たちに観て貰い、納得がいったら是非体験させてやって欲しいんだよ」

 

 「判りました、では空海! 準備してくれ!」

 

 「了解、其れでは隣室で先ずはムービーを観て頂きましょう」

 

 「そうですね数値は、先ず通常の物から観て貰いましょうか!」

 

 と主君とレオナルド殿に空海そしてラマヌジャンの研究員達が応じてくれて、隣室の常にAR空間と連動しているシアタールームで、件のムービーを流して貰った。

 

 そして流されて行くムービーの内容に、連れて来た『サツマ寮』の面々は驚愕したらしく、当初はどよめいて居たが徐々に息を呑んで凝視し始めた。

 

 その内容とは、自分も驚愕した凄まじい惑星アレスでの戦争の歴史と、主君が戦ってきたシレノス星系及び此処惑星アルカディアと暗礁宙域に有ったワームホールでの戦いで、薩摩武士が得意とした『示現流』が使用された場面の編集ムービーだった。

 

 一つの場面では、魔法の遠距離攻撃を終えた後に、抜刀隊の近衛軍が雄叫びを上げながら八相の構えで敵に突撃して行った。

 

 二つの場面では、明らかに人で無いゾンビと思われる死人が動く敵に、剣を輝かせて同じく八相の構えで敵に突撃して行った。

 

 三つの場面では、魔獣と思われる異形に対して、雄叫びを上げ剣に炎を帯びさせて斬撃を繰り出して居る。

 

 四つの場面では、奇妙な事に鎧を纏った魔物と、猿叫を上げながら一之太刀を繰り出す抜刀隊の姿が有った。

 

 五つの場面では、パワードスーツに長大な剣を握らせて、同等の大きさを持つ獣化兵(ゾアノイド)を、正に『示現流』を体現した突撃で斬り伏せて行く姿。

 

 六つの場面では、宇宙空間にてパワードスーツの連隊が演習で、『蜻蛉の構え』で仮想したバグスの機動兵器に斬りかかる姿。

 

 七つの場面では、3年前のワームホールでの戦いで、『機動武人(モビルウォリアー)』達の5体が他の味方の支援攻撃を貰いながら、刀や薙刀に魔法を込めて『示現流』の如く二の太刀要らずと言わんばかりに、敵バグスの繰り出す怪物達をバッタバッタと斬り伏せて行った。

 

 その内容をひたすら凝視していた『サツマ寮』の面々は、全ての編集ムービーを観終わり全員が滂沱の涙を流して居る。

 

 彼等の心情は、同じ抵抗軍に所属していた自分には痛い程に察せられた。

 

 ・・・無駄では無かったのだ・・・、自分達が必死の思いで習得した薩摩武士の剣術『示現流』は、現在の戦闘に於いても十分に通用するのだと。

 

 但し、当然ながら現実に『示現流』を活かすには、科学技術と魔法技術の融合を取り入れるしか無い!

 

 その事が、此の編集ムービーでは実際の戦場での事実として否応無く認識させられる。

 

 島津義弘始め、主君と対戦してヒールで回復した3人も、実例を見せられる事で自分達の拘りが見当違いであった事を容赦無く突きつけられた形となった。

 

 改めて『サツマ寮』の寮生達全てが、主君の前に正座し直して自分達の不明と、今後は積極的に魔法を学び真の意味で薩摩武士の剣術『示現流』を、戦場で活かす事を誓ってくれた。

 

 主君は、大きく頷くと傍らに居た空海とラマヌジャンに指示して、『戦略・戦術シミュレーター』に『示現流』を活かせる戦場のプログラムを組んだ上で、『サツマ寮』の寮生達が魔法を習得し次第、其れに対応した戦場のプログラムを組めと命令した。

 

 そして、約半年後。

 

 『キャメロット』・『百八家』に続く、主君を支える3番目の組織『サツマ武士団』が、発足する事になったのである。

 

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