最終章 第1話
「さて、出撃するぞ!」
「問題無いよ、アポロ!」
「気合い入れて行きますよ~!」
『メタトロン』内のコックピット空間で、星猫のアルとドラゴンのミネルヴァは、自分と顔を見合わせて応じてくれて、『神機メタトロン』は次の瞬間に総旗艦『神威』の上部甲板にシフト(位相差ジャンプ)した。
既に1ヶ月前から、全ての星系の防御体制は整っていて、逆撃の準備も済んでいる。
其れ其れの星系には、小惑星並の軍事衛星が存在し、惑星アレスに有る月の防衛システムの発展型(ADAM4)が搭載されている。
ADAM4は、オリジナルと同様に指定されたコードか、『人類に連なる者』の場合は特定のチェックをクリアーしない限り、通常空間であろうがワープ中の超空間だろうと、問答無用の空間爆砕攻撃が行われる。
恐らく敵バグスの現在最強の兵器である『宇宙大怪獣』であろうとも、此の空間爆砕攻撃を受けるとワープ中に喰らうと、自重が有るだけに空間の捻じれで通常空間と超空間に身体が分割してしまい、2つに切れてしまうと思われる。
つまり、いきなりのワープでの侵攻は、相当な準備と手間を掛けなければ敵バグス自身の壊滅を意味する。
此の防御体制を構築した事により、我等は後顧の憂い無く先制攻撃をバグスの大軍団に行える。
そんな風に今迄の準備を振り返り、自分は現在のワームホール付近の戦闘準備状況を確認する。
『虚無(ヴォイド)』宙域に駐留している、敵バグスの大軍団に痛撃を与えるには、超遠距離での時間が掛かる攻撃はあまり得策では無いと判断していた。
此方には、確かにブラック・ホールを利用した超スピードの質量攻撃、亜空間を利用する神々(調整者)の遺産たる空間ごと消失させる超兵器と云う長距離を飛び越える兵器が存在するが、とても兆単位のバグス大軍団を覆滅させるには数が足り無い。
然も使用すれば、当初は上手く行くだろうが徐々に対応されて行き、対抗策が講じられる可能性は非常に高い。
なので、ある意味泥臭く危険を伴う作戦だが、接敵して至近距離の白兵戦や至近距離での砲雷撃戦、更には魔法と科学を取り混ぜた支援攻撃、そして殲滅魔法主体の遠距離攻撃で、敵バグスの大軍団を翻弄させる事が対抗策を相手バグスに打ち出させない最適解だと、此方の『戦略・戦術シミュレーター』で解析された。
つまり、簡単に全滅させる事は不可能な敵バグスの物量である以上、少しづつ敵バグスの兵力を削り続け、タイムスケジュールとして何百年か後には敵バグスを覆滅し尽くすと云う、時間と労力は桁違いだが状況が激変しなければ確実な戦略だと思われる。
その為の布陣をワームホール付近に展開している。
総旗艦『神威』を中核とした、敵バグスの大軍団に対しての攻撃艦隊、通称『殴り込み艦隊』は10万隻に及びその全てが、『縮退炉』と『モノポール・エンジン』を組み合わせた現在最高峰のエンジン技術を搭載している。
その艦隊には、様々な攻撃手段が搭載されていて、其れ等を扱う様々な機動兵器群が存在する。
そして其の艦隊を支援する形の、工作艦や補給艦そして艦隊を補修する工廠艦が、『殴り込み艦隊』以上の20万隻近傍の宙域に控えている。
其れとは別に現在、ワームホール内の終端には特別な艦である『次元修復艦』が、敵バグスの大軍団の至近距離にワームホールの新たな出口を開けるべく、ワームホールの通路を修復中である。
タイムスパンとしては、凡そ8時間後には修復を完了し、ワームホールの新たな出口が開いた瞬間に、超出力の大規模攻撃を行い。
間を置かずに『殴り込み艦隊』は、文字通りの殴り込みを敵バグスの大艦隊に仕掛ける。
此の敵バグスの大艦隊への最初の砲火が、後たった8時間後に開始される!
その直前のブリーフィングを行うべく、自分は総旗艦『神威』の大会議室に向かう為に、『神機メタトロン』のコックピットから出て、同じ『神機』を駆る仲間達と一緒に艦内に入った。
「アポロー、何だか、武者震いして来たよ!」
「ケントは、怖気づいて震えているの間違いじゃない?」
「サクラー、そんな風に揶揄しても、誰も突っ込まないよ」
「ロン、きっと、緊張を解そうとしてるのよ!」
「マリアは、緊張感無さそうね?」
「褒姒、そしてみんなも適度な感じで緊張してる様で、頼もしいな」
とやや軽口染みた会話をしてから、総旗艦『神威』の艦内を移動して大会議室の控室に入室した。
さて、ガラではないが演説をしなければならないので、少し暗誦してみるかな。