其の巨大物体の大まかな形は、一応、球状では有るのだが、其れよりも巨大な穴が幾つも開いているので、どちらかというと何かの虫の『巣』に酷似している。
其の大きな穴は、先程、敵バグスの大軍団と元魔神機が原型を崩し始めて吸い込まれて行ったので、何らかの役割を熟す敵バグスの拠点と推測される。
《・・・うーん、何故こんな巨大な代物が、重力偏差や光学的な理由で見つけられなかったのだろうか?
つい先程まで、こんなに近くで観察していた我等『殴り込み艦隊』でも、一切観測出来て居なかったとは・・・。》
サッパリ理由付け出来ない突然の出現に理解が及ばないで居ると、いきなり巨大物体は其の出現時と同様に、像が歪み始めてそのまま消え去ってしまった・・・。
《・・・何だと・・・?!》
全く信じられない思いだ。
我々の視線だけでなく、赤外線・魔法探査・光学探査等の、ありとあらゆる探査手段を阻害して見えなくなったのだ・・・。
かと言って、ワープしたり亜空間に跳んだ訳でも無いのは、重力偏差や空間異常が一切無いし、未だに健在な大部分の敵バグスの大軍団は、小揺るぎもせずにその場で存在しているから明らかだ。
《・・・一体どういう理屈なんだ・・・?》
そんな理解不能な隠蔽技術を使用する敵バグスの拠点に対し、『神威』で策を練ってくれている軍師2人と優秀な幕僚達が、或る提案をして来た。
「アポロニウス代表、我々は一つの提案をさせて頂きます。
あの巨大な物体が、そのまま消え去った場所に居続けているか? と我々が推測した通りに壊れた敵バグスの艦艇や元魔神機を回収した事から、謂わばバグス共の再生工場と補給工場を兼ねるとの考えを確かめて戴きたい!
具体的には、先程まで巨大な物体が存在していた場所に向けて、我々の攻撃手段の切り札の一つ『超過重貫通弾』を使用して、此の2つの要件を満たして貰えませんか?」
「其れはつまり、此の『虚無(ヴォイド)』空間からの撤退時に使用する予定だった物を、確認の為に使用すると云う事だな?」
「其の通りです! なので撤退時には別の手段を講じる必要が出てまいりますが、我々の推測が正しければ此の段階であの巨大な物体を攻略して置かないと、千年の憂いを残すと考えられます。
是が非でも、今此の時に奴の機能を潰して置かないと不味いのです!」
かなり切羽詰まった物言いをして来た軍師2人『諸葛亮』と『安倍晴明』の申し入れに、俺は同様な不安を抱いて居たので、即了解してワームホール入り口で準備している工作艦に命令した。
「予定変更だ! 直ちに『超過重貫通弾』の準備に入れ! タイミングは追って指示する!」
「了解致しました!」
急な予定変更にも、疑問もぶつけずに了解してくれた工作艦に感謝しながら、俺はコックピット内の星猫のアルに計算させて、特異点を経由するバイパスの出現位置を決めて、其の作戦と状況変化を『殴り込み艦隊』の全軍人に周知させた。
皆も、あの巨大な物体の不気味さは良く判っていたらしく、文句一つ言わずに様々に想定される諸々の事態に対応するべく、万全の準備に入った。
十分に準備出来たと確認出来た俺は、工作艦に指示を出した。
「準備完了だ! 直ちに『超過重貫通弾』を発射せよ!」
「了解! 『超過重貫通弾』発射!」
次の瞬間、音も光も無く15個の大穴が敵バグスの大軍団に開き、更に凄まじい衝撃波が敵バグスの大軍団に襲い掛かった!
しかし、此の『虚無(ヴォイド)』空間に到着した段階で使用した時と違い、そのまま『超過重貫通弾』は直進して行かずに、巨大な物体が消え去った宙域で15本の『超過重貫通弾』は、簡単に弾かれて全く見当違いの方向に消えて行った。
《・・・やはり、まだ居るのだな・・・》
案の定の結果に逆に安堵した。
何故安堵したかというと、もし巨大な物体が何の痕跡も残さずにワープや亜空間に跳んだとなると、とてもでは無いが我々帝国航宙軍には抵抗手段が一切存在せず、やられるがままになってしまう事になるからだ!
だが、あくまでも此方の探査手段から隠蔽して、まだ其処に存在しているのならば、対応する方法は有る!
なので、俺は『殴り込み艦隊』の全軍人に指示する。
「今だ! 全主砲による一斉射3連、撃てぇー!」
其の号令のままに、一斉に放たれた全手法による一斉射3連は、先程使用した15本の『超過重貫通弾』が通った特異点を経由して、敵バグスの大軍団に撃ち込まれた!
『超過重貫通弾』15本による大穴と、其の後に襲い掛かった凄まじい衝撃波により、防御が出来ず翻弄される様に尽く全主砲による一斉射3連を喰らいまくった。
凡そ10億に達する敵バグスの艦隊は崩壊してしまい、最早まともに活動出来ない様だ。
すると、まるで陽炎が晴れる様に、巨大な物体が姿を現して崩壊した敵バグスの艦隊を、吸い込む様に吸収して行く。
此れで軍師2人と幕僚達による推測と、俺の考えがほぼ立証された。
ならば、後は此の巨大な物体を攻略するまでだ。