空間が割れると酷い振動が神機に襲い掛かり、徐々に何者かが現れてきた・・・。
其れは当初、何やらゴツゴツとした凸凹の岩塊に見えた。
其の奇妙に歪なその物体は、凡そ300メートル程度の大きさで、今迄の敵バグスの怪物共に比べればかなり小さいサイズだ。
しかし其の圧倒的な存在感は、此れまでに対戦して来た全ての敵の総計を遥かに越えて居た!
凄まじい其の圧力は物理的な力となって、神機を揺さぶる様に押し寄せて来た。
「「「グウウウウウウーーーッ!」」」
俺と仲間達は、呻き声を上げながら凄まじい、プレッシャー(圧力)に歯を食いしばりながら耐える。
『神機メタトロン』のコックピット内に居るドラゴンの『ミネルヴァ』と星猫のアルも、顔面蒼白になってガタガタと震えている。
すると、「ビィーッ、ビィーッ」と云うアラーム音がコックピット内に響き渡り、『神機メタトロン』の声が我々突撃部隊の全員に聞こえて来た。
【『ツァトゥグァ』・・・古きものどもの首領格にして『クトゥルフ』の対となる存在である】
『神機メタトロン』自身が、警戒音と共に我々突撃部隊の全員に伝えて来るなど、此れまでの『神機メタトロン』と俺との長い付き合いでも、一度も無かった・・・。
判っている・・・・、判っている・・・・、心の奥底からどうしようもなく判らせて来る、湧き上がる原初の生物としての恐怖・・・!
奴が、高次元の存在にして、我々の神々である『調整者』と同格に近い存在なのが!
25年前に父上が、諸々の犠牲の上に漸く倒せた『クトゥルフ』の分体と同様に、『ツァトゥグァ』も分体なのだろうが、そもそも此の次元は奴等にとって下位の次元なので、全ての身体を顕現出来ないらしくて此れが限界でもあるらしい。
しかし、此の分体だけでも其の圧倒的な存在感は空間に満ちて、其の圧力は物理的な衝撃波にまで膨れ上がる。
ゴツゴツとした凸凹の岩塊に見えていた状態から、少しづつ手足が判る様に岩塊が変形していった。
やがて全身が顕になった『ツァトゥグァ』の様子は、巨大な腹部とヒキガエルに似た頭部を持ち、口からは舌を突き出し、半ば瞼が閉じられた眠たげな目をしている。
体色は黒く、体表は短く柔らかな毛で覆われ、コウモリとナマケモノの両者の姿を連想させた。
そして身体に比して小さい翼と、体表にはウネウネと蠢く触手まで見受けられた。
『ツァトゥグァ』は暫くの間、あまり積極的に動き出そうとせずに、我々突撃部隊を見ても興味も無さそうにしている。
もしかすると、此方が攻撃の意思を見せなければ無害なのかも知れないが、我々の主敵と思われる超巨大なコクーン(繭)に手を出したら即座に迎撃して来ると思われた。
当然そんな事が出来る筈も無いので『ツァトゥグァ』を警戒しながら、超探査プローブを直接超巨大なコクーン(繭)に接触させて詳細なデータを得る事にした。
例の『P.K.(念動力)』を無効化して行動出来ているのは、我々の神機達が『リミットブレイク(限界突破)3』の状態を維持できているからだが、当然超探査プローブにも神機達からのエネルギー・バリアーを施して超巨大なコクーン(繭)に突っ込ませた。
其の行動にも、一切興味を示さずに『ツァトゥグァ』は見過ごしたので、此れ幸いと超探査プローブは超巨大なコクーン(繭)に直接物理接触し、相当な量のデータを此方に送ることに成功した。
だが、其の行動はやはり攻撃行動と判断されたのか、超巨大なコクーン(繭)から強烈な波動が噴出して来て、半ば眠っているかの様な状態だった『ツァトゥグァ』が目覚めると共に、其の体表に蠢いている触手からの黒色のビームの様な物が、超探査プローブをアッサリと貫きあっという間に破壊した。
そして、『ツァトゥグァ』は其の行動が我々の指示である事を把握したのだろう、凄まじい雄叫びを上げる。
此処は純粋な意味で宇宙空間では無い所為か、もしくは空間に満ちている『P.K.(念動力)』からの振動なのか、其の雄叫びは強力な波動となって我々突撃部隊を圧倒する!
しかし、そんな事は百も承知なので、当然我々は気後れせずに行動を開始する!
「行くぞ、皆!」
「「「オウッ!!」」」
俺と仲間の神機達は、己の中に有る至高のエンジン『ゴッド・ハート(神の心臓)』をフルスロットルにして、バリアーを限界まで強化してそれと同時に攻撃を開始する!
『ツァトゥグァ』の防御力と攻撃力を見積もる為にも、早目に手を出したのだ。
今迄の様子から、『ツァトゥグァ』の性質として積極性が無いと見たからだ。
案の定、此方の牽制として撃ったビーム攻撃は、『ツァトゥグァ』の手前で弾かれたが、奴も黒色のビームを放ってきた。
如何に『ツァトゥグァ』とは云え、只のビームでは我等の神機達の張るバリアーは貫けない。
ならば、此方から先手先手で行動して行き、『ツァトゥグァ』の能力を全て暴いて行き、必ず倒してやる。