皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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最終章 第21話

 「ビーッ、ビーッ、ビーッ!」

 

 と警戒音のアラームが鳴り響いた。

 

 《何だ?》

 

 と疑問に思っていると、強烈な悪寒が身体に走り、戦慄が背筋を凍らせた!

 

 今迄も様々なバグスが繰り出す怪物や機動兵器と対峙して来たが、こんな感覚に陥った事は無い!

 

 神機での他の機体の回収作業もほぼ終わり、後は神機を収納するだけなのだが、突然のアラームに神機達は警戒の為収納作業を一旦打ち切り、亜空間からのエネルギー補填を急速に行う。

 

 警戒しながら『ツァトゥグァ』と中心核の残骸を、探知魔法と科学的な探査を徹底的に行っていくと、何かが存在しているのが、理屈抜きで感じられて来てその場所を集中的に探査する。

 

 其れは、何だか奇妙な存在だった・・・。

 

 簡単に言えば、元の形は”巨大な脳”と思われたが、現在は崩壊している。

 

 天地を繋ぐ神経束と直接繋がって居た脳幹が正体なのだろうが、恐らく此れこそが此の小宇宙への侵略部隊の司令塔なのだろう。

 

 此奴が崩壊した以上我々の目標は達成されたのだが、此の悪寒の正体がサッパリ判らず居心地の悪さが半端では無い。

 

 「・・・ドクンッ・・・」

 

 何かの鼓動が音と言うより、奇妙な振動として頭の奥に響いた・・・。

 

 死の気配に満ちた場所である筈の空間に、何かの生命が息づく鼓動が聞こえて来たのだ。

 

 次の瞬間、崩壊した”巨大な脳”が更にボロボロと壊れていき、やがてグロテスクな内蔵が見えて来た。

 

 「・・・ドクンッ・・・」

 

 再度、鼓動が聞こえて来たと同時にグロテスクな内蔵が震える・・・。

 

 其の鼓動は徐々に小刻みにグロテスクな内蔵を揺らし始め、突如その振動は止んだ。

 

 「ビリッ」

 

 音が聞こえた訳では無いが、突然グロテスクな内蔵の表面が切り裂かれた。

 

 そして其の切れ目から、手が出てきた。

 

 いや、手では無い!

 

 其れは、黒々とした鉤爪で有り其の鋭さは明らかに人の物では無く、虫の付属肢(関節肢)の先端にある鉤状の小突起と思われた。

 

 つまり、バグスが出て来ようとしていると推測された。

 

 しかし、どの様なバグスなのだろう?

 

 如何にバグスとは云え、此の空間は仮称『巣(ネスト)』の中とは言え、空気が存在している訳では無く、様々な面でまともな生物は生きて行けず、バグス共が繰り出して来た怪物共の様な、無理矢理強化した存在でも無い限り無理だろう。

 

 《だとすると、今迄の既存のバグスでは無いのか?》

 

 そんな推測をしながら、出てくる新種のバグスと思われる存在を凝視していた。

 

 やがて、鉤爪の先端を持つ虫の付属肢が6本、グロテスクな内蔵の表面に刻まれた切れ目から出て来て、バリバリといった具合に全身を顕わにして来た・・・。

 

 其れは、明らかに既存のバグスと一線を画す容姿をしていた。

 

 既存のバグスは、一番ベーシックなタイプは八本足のゴキブリを少し細長くして上半身を反らせて身を起こしたタイプ、他も八本足の蟻や蟷螂を合成した様な容姿をしている。

 

 しかし、今、姿を現した新種のバグスは、付属肢が6本そしてその全ての先端が鉤爪で、黒く光沢の有る甲殻で身を鎧っている。

 

 更に一番特徴的なのは、其の頭部と思われる場所には、見事な角が伸びている。

 

 只、違和感が有るのは、其の腹部には奇妙な宝石の様な突起物が存在し、然も何やら揺れる炎の様な光が見えて居る。

 

 つまり、新種のバグスと思われる存在は、所謂『カブトムシ(甲虫)』が細長くして上半身を反らせて身を起こした様に見えるタイプと云う事だ。

 

 其奴は、暫くの間はあまり動かずに、其の複眼で周りを睨め廻す様に観察している様だった。

 

 やがて、完全にピタリと動きを止めると、腹部にある宝石の様な突起物の中にある、炎の様な光が煌めいた。

 

 次の瞬間、新種のバグスの周囲に散らばっていた『ツァトゥグァ』と中心核の残骸が、突然粒子状に変化するとそのまま腹部にある宝石の様な突起物の中に吸い込まれて行った。

 

 《・・・ハッ・・・?!》

 

 とんでもなく物理法則を無視した現象を起こした新種のバグスは、ゆっくりと此方に向き直る。

 

 すると突然、信じがたい衝撃波が其の腹部にある宝石の様な突起物から放射され、我々に襲い掛かる!

 

 自動防御のバリアーを展開し、神機達で揚陸艦を最後方に守りながら防御態勢を構築した。

 

 しかし、其の行動を取っても凄まじい被害を被ってしまったのだ。

 

 「・・・な、何だとーーー!」

 

 思わず俺は絶叫を上げ、嵐の中の木の葉の様に揉みくちゃにされながら、俺の『神機メタトロン』のコックピット内で必死に操縦して、状況把握に努める。

 

 だが、其の把握した状況は無惨の一言に尽きた・・・。

 

 遥かな過去から『古きものども』に対して、神々(調整者)が乗り込んで戦った神の機体である神機達が、半壊してしまい漸く動いて居るだけの状態に陥っているのだ!

 

 此れまでの強敵を相手にしていても、ある程度の傷は負っても決定的な被害を負わなかった、神機達が簡単にバリアーを貫かれて半壊してしまった・・・。

 

 辛うじて、揚陸艦は最後方に居たのでそれ程被害を負っていないが、収納されていた『竜機神(ドラグゴッド)』2頭が、必死な様子でバリアーを展開して守っている。

 

 皆が今の状況を信じられず呆然としている中、ゆっくりと新種のバグスが近付いて来る。

 

 其の姿を認めながら、俺は只々痴呆の様に眺めている事しか出来なかった・・・。

 

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