朝5時に起きて、弟妹達がまだ寝ている様子を確認して、僕は部屋の外に出てシャワールームに出向いて、シャワーを浴びながら星猫のアルとサスケに、依頼していた調査の報告を受ける。
星猫のアルは、
「アポロの枕投げが始まった段階で、僕は早々にやられたフリをして、コチラを伺っていたモノを捕まえる事に成功したよ、かなり苦労したけどね。
式神を2つ中継に使い隠蔽をしていたけど、式返しをして動けないところを捕まえたら、何とびっくり『管狐』だったよ!」
と、竹筒に入った管狐を口に咥えて僕に見せてきた。
「私の方は、『玉藻前(たまものまえ)』の素行調査と現状を調査したのですが、かなり芳しく無い調査結果しか得られませんでした。
細かい調査結果は、ナノムネットワークのクラウドベースに報告書として纏めて置きました、どうぞ後で御確認下さい!」
1人と1匹の報告を受け、シャワールームから出て着替えながら思考を進める。
昨日の出会いを思い返すに、恐らく父様と彼女はかなり前から知り合いで、然も雰囲気からして彼女は父様から幾つかの魔法や技術の指南を受けているに違い無い。
そして『日の本諸島』の衣装である巫女服と、隠形の術と云う忍びの技術とそれを学んでいる最中である事、其れ等を総合的に考えると現在彼女は、日の本諸島に留学していてワザワザ忍びの技術をあの年齢で習得している。
父様が、そもそも普通の女児に指南する事態が異常極まる。
素質としては、妹達は恐らく同年代ではトップクラスなのに、父様は母様ズと教育指導係に丸投げで、手ずから教えている姿は見たことがない。
恐らくは、僕並かそれ以上の素質を持つのだ彼女は!
その事実に僕は、非常な興味を彼女に対し覚え、サスケに改めて命じた。
「サスケ! お前を通して日の本諸島の甲賀忍軍に依頼する!
彼女、玉藻前の調査を綿密且つ長期に渡って行え!
但し、お前の叔父である父様の御庭番『飛び加藤』には知らせるな、そして帝国の諜報機関であるNSA(国家安全保障局)にも気取られるな。
独自に情報を得て、僕に報告せよ!」
「ハッ! 了解致しました!」
サスケはその返事と共に影に沈む。
「アルは、兄弟達と連携して警戒だけは怠らない様に、但し僕の弟妹達には極秘とする。
判ると思うが、弟妹達はとてもでは無いが、ポーカーフェイスを出来る年齢では無いし、逆に藪蛇を突付きかねないからな!」
「判ったよ、相棒! 兄弟達とは独自のナノムネットで情報を共有し、警戒網を構築するさ!」
星猫のアルは器用に両足で立つと、胸を前足で叩いて応じてくれた。
その後、着替えを済ませた僕は、漸く起きてきた弟妹達と布団から剥がしたシーツを、迎賓館の職員に渡して洗顔とうがいをさせて、各々が着替えを済まさせてから、迎賓館のビュッフェルームに向かい朝食の準備に掛かった。
一旦、上座に設けられた特別テーブルに着いて、父様と母様ズに朝の挨拶をする。
「おはようございます! 父様・母様方!」
「「「おはようございます!」」」
「おはよう、アポロ・セラス・シェリス・ルーファス! 良く眠れたかな?」
「「「「ハイッ!」」」」
「おはよう! 貴方達お行儀よく過ごせたのかしら?」
「勿論です、クレリア母様! みんな静かに過ごしましたよ、なあ、セラ・シェリ・ルー!」
「「「ホントだよ母様!」」」
「「「本当かしら?」」」
「まあ、変な報告は上がって無いから、子供達の言う事を信じようじゃないか。
さあ、アスガルド城での朝食と違うから、其れ其れが迎賓館職員の指示に従い、ビュッフェスタイルのやり方を学びなさい!」
「「「「判りました、父様!」」」」
といったやり取りの後、僕達兄弟達は初めてのビュッフェスタイルの食事を堪能した。
僕も初めてなので、種類の多い数々のパンや料理を何時もより多く取り、最後にスープコーナーに向かう。
その途中で、各国のVIPの子弟達とすれ違い挨拶を交わしながら進むと、彼女が居た!
彼女は、中華(崑崙皇国は自国内ではこういう風に名乗る)粥のコーナーで幾つもの注文をし、納得してから僕と同じくスープコーナーに来た。
朝からその白銀の頭髪と目の色は、とても目立っていて周囲の目を惹く。
僕は努めて、注目しないようにして、彼女が後ろに並ぶのに気付いて無い風を装い、スープの品定めをした。
【返してよ!】
突然、ナノムネットの接触回線が開かれて、頭に声が聞こえて来た。
良く見ると、彼女の長い髪の毛が何本か僕に触れているのだ。
普通は皮膚で接触するのに、髪の毛の様な細い代物で通信するとは、大したものだと感心する。
【何をだい?】
【惚けないで、我の友達をよ!】
【友達?】
【そう、友達の管狐の事よ!】
【ふーん、僕の事を管狐で探ってたのを認めるんだね?】
【ええ、別に隠すつもりは無いわ。 ちょっと興味を抱いて『クーちゃん』に頼んだのよ!】
【興味?】
【我が認めるアラン様の長子にして、世界の盟主たる『人類銀河帝国』の後継者!
事実上、此の惑星アレスの命運を握る者!
こんな存在が、どんな人間か知りたいのは当然じゃない?】
【そんな御大層な人間じゃないよ、ただの小等部の新入生に過ぎないさ】
【我も、そんな風に最初は侮ったが、あれだけ隠蔽させて送り出したクーちゃんを、アッサリと捕まえてしまうなんてね】
【あれは、僕の相棒のお手柄さ。 僕の実力じゃないよ】
【もしかして相棒って、噂の星猫なの?】
【ああ、そうだよ今も僕の懐に居るよ!】
【見せて!】
【いいよ】
と応じて、僕は持っていたお盆を近くのテーブルに置いて、懐のアルを彼女に見せて上げた。
意外なほど目を輝かせて彼女は、アルを覗き込みアルが持っている竹筒を見つける。
上目遣いに僕を見上げた彼女に僕は目で頷き、アルの手から竹筒を彼女は受け取った。
「・・・ありがとう・・・。」
と今度は口で僕に礼を言ってきたので、
「どう致しまして」
と僕は応じて、スープコーナーで選んだコーンスープを受け取り、テーブルに置いておいたお盆に載せて自分のテーブルに帰った。
幸い、僕の弟妹達と母様ズは一連の行動に気づかなかった様だが、父様はテーブルにいち早く戻っていて、僕の状況を見ていたみたいで若干苦笑ししながら、
「・・・アポロ、今日の学生の演武大会が終わり、後片付けが終了した21時に、武道場に来なさい」
と父様が言って来たので、
「・・・判りました、特に用意する物は有りますか?」
と聞くと、
「そうだな、特には無いがお前の体格に合わせた道着を着てもらうから、着替えをする前提の服装で着なさい」
「了解しました・・・。」
声量を落とした応答を済ませ、僕達家族は全員で楽しく朝食を摂り、もう直ぐに始まる『第七回 世界武道大会』に備えた。