皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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最終章 第23話

 何だか、此れから死ぬと云うのに段々と愉快な気持ちになり、俺も『薩摩武士団』の連中と付き合い過ぎて、『捨て奸(すてがまり)』と云う謂わば己が死ぬ事で仲間を救う事に意義を感じ、誇り高い気分を味わってしまう。

 

 《・・・まあ、此れで『人類に連なる者』の勝利は確定したよ・・・、仮称『新種のバグス』・・・、お前を次元の彼方に放逐してしまえば、新たな司令塔となるべき存在を失い、バグスに取っては取り返しの付かない命取りの被害となるだろう。

 此の『虚無(ヴォイド)空間』に集結させている、兆単位のバグスの大軍団も『巣(ネスト)』という生産拠点も失ってしまえば、増産する宛も無くなり時間は掛かるだろうが、少しづつ削って行けばやがて殲滅する事が出来るだろう・・・。

 其れに比べて『人類銀河帝国』は、俺が居なくなろうと欠片も揺るがない!

 父上『アラン皇帝陛下』は、堂々たる権威の元で健在だし、帝国を支える各星系も復興著しい。

 其れに後継者も、二人の妹達と弟が居る。

 きっと、帝国に盤石の体制を齎してくれて、銀河を帝国の元に戻してくれるだろう。

 頼んだよ、愛すべき妹弟達よ・・・。》

 

 穏やかな気持ちで、いよいよ暴走させた『ゴッド・ハート(神の心臓)』を反転エネルギーに変換する起動スイッチに手を掛ける。

 

 「・・・さて、最期の時だ・・・。」

 

 そう独り言を呟いた瞬間に、答える者が居た。

 

 「・・・思っていたより諦めが早いな、アポロ・・・?」

 

 出し抜けに此処に居ない筈である人物の声が、耳朶を打った。

 

 驚いたので、思わず座っていたメタトロンのコックピットに有る座席から、転がり落ちそうになりながら、此処に居ない筈である人物の名を叫んだ。

 

 「父上?! 何故、父上の声が聞こえるのですか?」

 

 思わず問いかけると、アッケラカンとした様子でネタバラシを父上はしてくれた。

 

 「簡単な事だよ、以前『戦略・戦術シミュレーター』で、私とお前の同期をナノムレベルでしただろう。

 其の際に、同期しながらラスプーチン戦での最後の戦いで、私とお前は『神鎧ジークフリート』を装着しただろ?

 その時の同期パターンは、本物の『神鎧ジークフリート』にも刻まれる様にプログラムされた。

 つまり、お前は私と同じく神々(調整者)の承認が下りた、『神人』として『神鎧ジークフリート』に認められたのだ!

 『神鎧ジークフリート』は、次元と空間を司る能力を持つ。

 故に、『神鎧ジークフリート』を通せばタイムラグ無しに意思疎通が可能だし、『神鎧ジークフリート』そのものを転移させる事も可能だ、此の様にな!」

 

 そして父上は、あの『戦略・戦術シミュレーター』の時と同じく召喚する。

 

 「対外敵プログラム"武神アラミス"起動!

 

 モード『異空間からの侵略者』!

 

 『神人』の要請に従い顕現せよ!

 

 『神鎧ジークフリート』!!!」

 

 次の瞬間、俺の乗る半壊した『神機メタトロン』と、近付いて来る仮称『新種のバグス』の間の空間に、突然空間の歪みも無く現れる物が有った!

 

 辛うじて動いているモニターに綴られていく文字が有った。

 

 《其は、神々の大いなる遺産、如何なる者も傷付ける事能わず、不滅なる特異点、神々が祝福と共に鋳造せし神の鎧、汝の名は『ジークフリート』!》

 

 七色の光に煌めく神聖なる存在、"武神アラミス"が装着したと伝わる鎧である『神鎧ジークフリート』!

 

 いきなり現れた、其の信じ難い程に神聖なる光を放つ存在を見て、今迄何の感情も見せなかった仮称『新種のバグス』が、明らかに怯んだ!

 

 頭部に有る巨大な角は大きく震え、付け根にある二本の触角は小刻みに振動している。

 

 更に六本の鉤爪を先端に持つ脚も、今の今まで折り畳まれていたのに両脇に大きく張り出して硬直している。

 

 そんな仮称『新種のバグス』を横目に『神鎧ジークフリート』は、各パーツに分かれた。

 

 そして導かれる様に俺は、インナースーツ型の宇宙服でメタトロンのコックピットから出ると、『神鎧ジークフリート』目掛け跳躍した。

 

 各パーツに分かれた『神鎧ジークフリート』は、俺の身体の部分に次々と装着して行く。

 

 俺の身体にに完全装着した『神鎧ジークフリート』は、まるで歓喜するかの如く、七色の光を煌めき放ち辺りを照らす。

 

 其の姿は、且つて『ラスプーチン』を討ち取った父上の姿と同じく、神々の権限の執行者『神人』の顕現である。

 

 其れまでひたすら震えていた仮称『新種のバグス』も、流石に覚悟を決めたのか対抗する様にある行動に移った。

 

 奴が先程、神機達に被害を与えた時と同様に、周囲の空間に有る全ての物質、つまり『巣(ネスト)』を粒子化させて腹部にある宝石の様な突起物の中に吸い込んで行く。

 

 其れはつまり、2メートル程の一般バグスよりも小さい仮称『新種のバグス』の中に、恒星並の大きさと尋常でない生産力を誇った生産工場と司令塔を兼ねていた『巣(ネスト)』の全てが吸い込まれた事を意味する。

 

 次の瞬間、仮称『新種のバグス』の背後に後光が指す。

 

 但し、其れは太陽の光では無く、ブラックホールを思わせる漆黒の光であった・・・。

 

 そして『神鎧ジークフリート』を装着した俺と、『巣(ネスト)』を全て吸い込んだ仮称『新種のバグス』は、一定の距離を保って睨み合った。

 

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