コリント流剣術『二天一流』の基本形『五方之構』の一つ『重ね身』。
其の構えを取りながら、父上の言葉を思い出す・・・。
【足幅を大きく開き重心を落とし、敵に対して半身になりながら一刀を敵に翳し、一刀は逆方向に構える】
その通りに俺は、左手に『神器レーヴァテイン』を握り敵に翳し、右手に『聖剣エクスカリバー』握り逆方向に構えている。
此の構えを見て、警戒したのか仮称『新種のバグス』は、武器を構えたまま大きく迂回して、凄まじい速度で勢いを付けながら右方向から突進して来た。
俺は宇宙空間に有りながら、真半身となるべく引き足をずらして『重ね身』で迎え討つ。
奴は両手上腕に装着した鎌を前面に構えて突進して来たのだが、其の鎌が『神器レーヴァテイン』に触れた瞬間、左手の手首を返すだけで方向を少しずらしてやり、通り過ぎていく奴の後ろ脚の斧状の武器が俺に迫る!
俺は右手に握る『聖剣エクスカリバー』で、奴の後ろ脚の斧状の武器の付け根目掛け斬り落とす!
『切先返し』からの『流討』
此の定石通りの技の流れで、奴の右脚を関節部分を斬り飛ばした。
そのまま通り過ぎた奴は、複眼で斬り落とされた右脚関節部分を確認し、再度突進して来る。
突進して来た奴に対して俺は奥義を叩き込む!
コリント流剣術『二天一流』の奥義『勢法五法之太刀』。
上段・中段・下段・斬り上げ・斬り下げ。
其れを2剣での交差剣で以ってほぼ瞬間的に行った!
「ザザザザザンッッ!」
最初に斬ったのは奴の左腕の関節部分、次に左脇から出る腕の関節部分、そして左脚関節部分を交差剣で斬りとばして、『神器レーヴァテイン』の斬り上げで右脇から出る腕の関節部分、『聖剣エクスカリバー』の斬り下げで右腕の関節部分を斬り離した。
すると見事に全ての関節部分を斬り飛ばされ、関節部分から先を失い仮称『新種のバグス』は、何やら黒っぽい体液を関節部分から噴出させながら錐揉みして離れて行った。
やがて黒っぽい体液の噴出を止めて、関節部分を黒い膜の様な物で覆うと奴は、錐揉みを更に加速させてドリルの様に回転し始めて速度を上げながら突進して来たのだが、前と違うのは其の周囲に暗黒物質(ダークマター)がトルネードとなって追随して来て、押し寄せる様に向かって来たのだ。
然も奴は俺に向かって来ずに、かなり離れた場所に突進して後に続く暗黒物質(ダークマター)のトルネードを、浴びせる形での攻撃方法を選択した様だ。
《・・・成る程な、漸く奴も直接戦闘では俺に敵わず、範囲攻撃や間接的な攻撃しか有効では無いと習得した訳か・・・。
まあ、そんな事をしても無駄なんだがな・・・。》
そう独り言ちて、俺は押し寄せてくる暗黒物質(ダークマター)のトルネードを、『神鎧ジークフリート』の権能である次元移動をして、ギリギリで避けて若干離れた場所に出現して、『聖剣エクスカリバー』と『神器レーヴァテイン』に『次元刀』の権能を付与する。
『次元刀』とは如何なる物体であろうと、次元をずらす事で例えどの様に硬い物質や状態が特殊であろうと、貫いたり斬り裂く事が可能な権能である。
準備が整い、周囲の状況を確認すると、奴が再度俺に攻撃をしようと押し寄せて来るのが見えた
先程と同様に、俺からやや外れた場所を高速回転しながら、奴はドリルの様に突進して来る。
奴の意図する方法を覆す為に、ほんの少し次元移動して奴の真正面に立ち2剣を同時に振り下ろした!
「ザシュ!」
そんな音が聞こえた気がしながら、直ぐに次元移動して問題無く奴を観察出来る場所に立つ。
そしてゆっくりと奴を観察すると、其の高速での回転と推進力を支えていた透明な羽根が目論見通り斬り飛ばされて居る。
其れに伴い、後ろに追随していた暗黒物質(ダークマター)のトルネードは雲散霧消してしまった。
仮称『新種のバグス』は、ヨロヨロといった感じで体勢を何とか立て直すと、とうとう策も何も無く猛然と頭部の角を突き刺す様に俺に向かってきた!
其の凶悪な角が俺に突き刺される瞬間、体捌きで避けるとそのまま奴の背後に回り、奴の残っている関節部分までの腕と脚を両腕で背後から絡め取り、背中の甲殻に両膝を当てる。
次の瞬間、両膝から発剄を放ち奴の動きを止めた!
両腕で絡め取った6本の手脚を叩き折り、更に角の生えた奴の頭部に、コリント流格闘術に於ける足搦み三角絞めを掛けて、両腕で奴の角をへし折った。
『蝉崩し』からの『甲虫倒し』。
此れらの技は、対バグス戦を想定し一対一で徒手空拳で戦う場合に備え、武道家達を含めた全ての軍人が必死の思いで編み出し、習得した必殺技である!
既に文字通り虫の息となった奴に対して、俺は最強の奥義を放った!
「征くぞ! ”武神アラミス”認可奥義『ドラゴン・ファング(竜牙)』!」
俺の背後から黄金色のドラゴンの頭が八つ出現し、凄まじい勢いで奴に襲い掛かった!
奴は八つのドラゴンの顎で身体を喰らいつかれ、空間に固定される様に拘束された。
「トドメだ! ”武神アラミス”認可秘奥義『ディストーション・クライシス』!」
両手に携えた2剣を奴の胸部に突き刺し、そのままくり抜く様に円状に斬る。
更に唐竹割りと真一文字に斬る事で、十字状に4つに斬り分けた。
次の瞬間、仮称『新種のバグス』の背後に虚ろなる穴が空間に出現し、そのまま仮称『新種のバグス』は虚無の穴に吸い込まれる様に落ちて行く。
落ちて行く仮称『新種のバグス』目掛け、2剣の切っ先に魔力を凝縮した強力極まり無い魔法弾を最後に叩き込む!
凄まじい大爆発を起こして消滅して行く仮称『新種のバグス』を眺め、其の余剰衝撃波を此方に届かせない為に、虚無の穴を閉じる。
其れまで、空間を揺るがし続けていた激戦は、此の時を以って終了を迎えたのである。