皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第一章 第13話

 剣術の決勝戦が終わり、会場中に30分間の休憩が告げられて、僕達も持参したおやつと飲み物を、昼食時に使った場所で摂っていると、興奮した様子を隠しもしない彼女がお付きとやって来た。

 そして、おやつを食べている僕に歩み寄ると、

 

 「・・・噂と動画で帝国には不敗にして不世出の英才、『エラ』という名の学生チャンピオンがいると聞いていたけど、実物を見れて噂が真実なのが良く判ったわ!

 しかし、あれ程の英才が今回の武道大会で引退って本当なの?

 帝国は何を考えているのよ!」

 

 「・・・別に帝国が命じている訳じゃないし、そもそも本人が望んでいる事を、他人が強制的に進路を変更させる事は出来ないさ!

 其れは、新生された崑崙皇国でも同じだろう?

 過去の崑崙皇国では、人民の虐殺や無理矢理な兵士への動員、更にはインフラ整備に徴集してた様だけど、君の両親が崑崙皇国を引き継いだ結果、一切の人権を無視した行為を禁じたじゃないか。

 だから、少なくとも帝国と崑崙皇国の同盟国や友好国では、本人の意思を無視した強制は出来ないよ。

 まさか、君の代になったら崑崙皇国は人の意思を無視するのかい?」

 

 「そんな訳無いじゃない! 我も『蚩尤』に洗脳されていた前王朝は大っきらいよ!

 ただ単に、『エラ』という英才の才能が無駄になるのが勿体ないの!」

 

 「まあ、外野があれこれ騒いでもしょうがない。 それよりもエラさんを超える位に君が頑張って記録を塗り替えなよ!

 君が6連覇を超える7連覇以上を達成すれば良いじゃないか」

 

 「ええ、当然我は学生記録の限界である9連覇を達成してみせるわよ!」

 

 「其れは凄い! ただ此処に君の連覇を阻みかねない人物が、2人も居るんだよ。

 今の内に把握しておいた方が良いよ」

 

 と指摘して上げた。

 その言葉に、僕とケントから若干離れて同期の女児達と、楽しそうに話していたサクラちゃんとマリアちゃんに、彼女は歩いて行ってくれた。

 

 ハァ~ッ、と息を吐いて肩を竦めると、ケントとロンは何も言わずに肩を叩いて僕を慰めてくれた。

 

 さて、もう直ぐエラさんの格闘技の試合が始まるから、トイレにでも行ってから席に戻ろう。

 

 席に戻ると、何故か母様ズと一緒に居る筈の妹達が僕の所にやって来て、サクラちゃんとマリアちゃんと共に僕とケントそしてロンの周りを囲んだ。

 

 「あの崑崙皇国の皇女、凄い子だったわ! 最初は無礼な子だなと思ったけど、私とマリアちゃんを一目見ただけで、学んだ流派と出来る型まで言い当てたのよ!」

 

 「しかも、あたしとサクラちゃんの事だけでなくて、セラちゃんとシェリちゃんの実力も見抜いて、挨拶してきたのよ!

 セラちゃんとシェリちゃんの実力は、かなり隠してるから判らないと思ってたのに!」

 

 とサクラちゃんとマリアちゃんが申告して来て、妹達もウンウンと頷いている。

 

 流石だな『玉藻の前(たまものまえ)』は、恐らくは彼女の留学先である『日の本諸島』に伝わる、幾つかの技術をこの短期間に既に習得しているのだろう。

 

 《・・・やはり、侮れないな・・・》

 

 そんな事を考えながら、僕はみんなでエラさんの試合を見始めた。

 

 エラさんは、初戦は案の定余裕らしく、自然体のまま相手が不用意に放った前蹴りを抱え込むと、そのままヒールロック(踵固め)で相手にギブアップさせ、準決勝も相手の拳の連打をスルリと躱して、傍目には大した事のない腹打ちを正拳で鳩尾に叩き込み、相手を悶絶させて一本勝ちしてしまった。

 

 《まるっきり、大人と子供の勝負だな》

 

 呆れる程の実力差に会場から嘆息が漏れる中、アラム聖国改めアラム共和国の選手がかなりの実力で勝ち上がって行く。

 

 その選手は、足技が得意ならしく2戦全て、変幻自在の蹴りで相手を下していた。

 

 当然エラさんの決勝戦の相手はこの選手となり、開始の合図があって両者は剣術の決勝戦と違い、双方突進して間合いに入ると、蹴りの応酬になった!

 

 「ドドドガカカッ!!」

 

 と洒落にならない音を立てて、両者の蹴りは交差していたが、変幻自在の相手の蹴りは途中で軌道を変えてエラさんに襲い掛かる。

 しかし、エラさんはその蹴りを腕も使って全てを防ぐと、いきなり後方に向かってトンボを切って距離を取ると、まるで独楽の様に横回転して連続蹴りを放つ、此の技は神拳流とコリント流格闘技のハイブリッド技として有名で、ある程度の実力者は使える基本技だ。

 だが、エラさん程の実力者が使うと、基本技と言えど凄まじい物となった!

 

 「ブオオオオーーー!」

 

 とその連続蹴りが唸りを上げて襲いかかられ、相手選手は顔を引き攣らせて必死に後方に逃げると、エラさんは相手を回転しながら武舞台のコーナーに追い詰める。

 

 「クッ」

 

 と呻いて相手選手は、唯一の安全圏とも言える空中に飛び、エラさんの後方に飛び越えて逃れようとする。

 しかし、当然エラさんがそんな相手の目論見を読んでいない訳が無い!

 

 相手選手が高く飛んで、必死に逃れようとした為に、明らかな隙が相手選手に生じた。

 

 「トウッ!」

 

 と掛け声を上げて、エラさんは回転のエネルギー運動を活かし、空中を駆ける様に飛び上がった!

 

 高く飛び上がった相手選手の更に上の空中に翔んだエラさんは、空中に有って姿勢を変えられない相手選手の背後を取る。

 

 「ヌウウッ?!」

 

 と必死に身を捩りながら相手選手は呻くが、足場のない空中では当然エラさんを避ける事は出来ない!

 スルスルと伸びてきたエラさんの両腕は、相手選手の腕の付け根と首の頸動脈に巻き付き、そのままアッサリと相手選手の意識を失わせると、そのまま腕に抱え直し着地して武舞台に横たえた。

 

 審判が相手の確認をして、意識が無いと判断して結果を述べた。

 

 「選手の意識が無い事を確認! エラ選手の勝利!」

 

 その宣告を受けて、清々しそうな顔をしたエラさんは礼をすると、相手選手に駆け寄り活を入れて意識を取り戻させる。

 半ばぼんやりとしたままの相手選手を、支えながら立ち上がらせると、意識がはっきりとして来た相手選手が慌ててエラさんと抱き合って相手を称え合った。

 

 その見事な試合内容と、スポーツマンシップ溢れる行動は本当に素晴らしい。

 何時か僕があの舞台に立った時も、同じ様に振る舞おうと心に決めた。

 

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