アーガマは安定した飛行をして、第一目的地の公都スターヴェークにある『軌道エレベーター』に着いた。
父様達は此処で様々な公務が有るので、そのまま滞在して暫くしたら西方の国家群を廻って帝都コリントに帰還する事になる。
僕達は、1日滞在したらアラム共和国に向かう予定だ。
「凄えぇーー! 大き過ぎだぜーーー! 公都と同じ規模じゃねえか!」
とケントの騒ぐ声が示す通り、至近距離で見る軌道エレベーターは尋常でない面積と高さを、僕達の前に見せつけた!
「其れはそうですよ、荷物の上げ下ろしだけでなく、何れは艦船の静止軌道への移送を考慮した規模ですからね!」
と僕達に説明してくれたのは、今回の世界一周旅行の団長にして新設の護衛騎士団長である『テオさん』だ。
何故立場がしっかりとしているのに『さん』なのかというと、この『テオ・エラ』天才兄妹は公式な場では、父様とクレリア母様をちゃんと皇帝陛下・皇妃陛下と発言するが、僕達家族だけになると昔ながらの『アニキ・アネキ』呼びがふとした瞬間出てしまうらしい。
然も、こういう呼び方をする時は結構内密な話しをする時なので、僕達兄弟達も『テオ兄ちゃん』『エラ姉ちゃん』と幼い時は呼んでいて、今では混乱しない様に弟妹達と親友達全員で、この天才兄妹は『さん』づけで統一した経緯がある。
「テオさん! 公都スターヴェークの公城に向かいますので、護衛お願いします」
「ハッ、皇子殿下方と皇女殿下方の安全はお任せ下さい!」
と公の場であるので畏まった態度で請け負ってくれて、テオさんは配下の護衛騎士を編成して僕達を護衛させる。
父様に公城での公務に向かう件を告げて、クレリア母様と弟を連れて公都スターヴェークに向かう。
公都スターヴェークの公城にリムジンで入城すると、熱烈な歓迎を受けてしまった・・・。
「クレリア皇妃陛下! アポロニウス皇太子殿下! ルーファス皇子殿下! スターヴェークへのご帰還御目出度う御座います!
我等、帝国臣民にしてスターヴェーク公国臣民は、大変感謝致します!」
と土下座しそうな勢いで、元宮内庁長官、現スターヴェーク公国公城維持管理局長の『ロベルト老』が出迎えてくれた。
「・・・ロベルト・・・、そんなに大騒ぎしなくて良い、そもそも此の城は私と息子達の家なのだ、家に帰る事をそんなに騒ぐ必要は無い。
それよりも、此の古い城の維持管理ありがとう」
「由緒正しきスターヴァイン王家の王宮であり、帝国の基幹たるスターヴェーク公国の公城をお任せ頂き、このロベルト死ぬまで務めさせて頂きますぞ!」
その些か、熱すぎる想いをいなしながら、クレリア母様と僕達は己の公務を果たすべく執務室に向かい、其れ其れの領地の官僚達との報告と陳情を受ける。
クレリア母様はスターヴェーク公国の政務状況を決済して行き、様々な陳情を処理して行く。
僕と弟は、弟の領地である『ルドヴィーク侯爵領』の政務状況を、ルドヴィークから来てくれた官僚達が報告して来たので、弟の手伝いをして出来る限り住民達の希望に寄り添う様に解決して行く。
ルドヴィーク城はあの連続ドラマのお陰で、一躍有名になってしまい、見物客が引きも切らないので、官僚達に命じて見物客が入れる様にして、更に歴史資料館とする事で入城料を設定して、維持管理費に回すことで住民達からの税金を掛けない様にしたし、住民達からの税金は全て住民に還元される様に、インフラ整備と物流の円滑化、子供教育の拡充や医療機関の充実などに割り振っている。
弟もルドヴィーク侯爵として、侯爵領の住民が絶対に飢えない様に、食料の備蓄と特産品の開発には日頃から熱心で、必ず新製品が開発されれば自分にサンプルを送らせる(実際の処、弟はクレリア母様譲りの大食漢なので、食べ物の特産品をいち早く食べたいというのが真実だろう)。
なので、弟はルドヴィーク侯爵領民には、食べ物が大好きだけど領民の暮らしを良くする事に熱心な愛すべき主君だと認識されている。
特に一昔前のルドヴィーク辺境伯が、クレリア母様を落ち延びさせる事に尽力し、最後には10倍以上の悪のアロイス王国の軍隊に対して籠城戦を戦い抜き、遺骸すら残せずただ一房の遺髪だけが、遺臣の手でクレリア母様に渡された話しは、連続ドラマの名エピソードとして此のルドヴィーク侯爵領民にとって、観なければならない必須物語として定着していた。
弟は、半ばその最後のルドヴィーク辺境伯爵と重ねて見られていて、連続ドラマのファンからTV放送局を通して数々のファンレターやコメントが寄せられている。
弟は律儀にもその一つ一つに返事したり、今後先代のルドヴィーク辺境伯爵に恥じない当主になる事を、表明している。
弟の頑張りを無駄にしない為にも、兄としてサポートをしていこうと思うので、官僚達には帝都の一流政務官と地元の熱意ある行政官を採用している。
きっと、ルドヴィーク侯爵領は帝国でも素晴らしい領地だと、何れは評価されるだろう。
そんな風に公務を終わらせて、ロベルト老の帝国に成るまでの道程の昔話を聞かされながらおやつを食べていると、父様と妹達そして親友達が軌道エレベーターからやって来た。
親友のロンが、
「やっぱり素晴らしいな戦艦イーリス・コンラートは!
現在、静止衛星軌道上に建設中のオービタルリングの中継基地として活躍中だし、飛来して来る彗星や数々の軌道上の衛星群を整理する事で、月面探査のスケジュールがかなり前倒しに出来てるんだ!
きっと、僕等が高等部に上がる頃には、月に行けると思うぞ。
アポロの神機『メタトロン』に、後4、5年で出会えるな!」
と大興奮で報告して来た。
当然僕は、その情報を父様からの最新情報で知ってはいたが、ロンから言われて実感出来た。
《・・・とうとう、後4、5年で会えるのか僕の神機に・・・。》
その事実は、僕に郷愁の様な切なさを感じさせた。