「ようこそいらっしゃいました、アポロニウス皇子殿下!
此のカルマ、この日を待っていましたぞ!」
元東方教会代表『カルマ法王』にして、現在は一研究者として此処『ラサ』でサイヤン帝国の遺物である、『宇宙船』の改修作業に全力を上げている。
「いえ、カルマ様。 貴方や『八仙』の方々の尽力で此の宇宙船が、とうとう稼働出来るのですから、人類にとって素晴らしい成果ですよ!」
「しかし、主エンジンは未だにアイドリング状態で、あくまでも外部に取り付けた代替エンジンでの移動しか出来ません。
其れすらも、貴方の膨大な魔力でのスターターを必要とします。
どうか、ご協力お願いします!」
「勿論です! 代替エンジンで移動させて『マーラーヤナ』で整備を行い、軌道エレベーターで静止軌道まで上げれば、戦艦イーリス・コンラートの莫大な動力によって、主エンジンはアイドリング状態から、ドライブ状態に持って行けます。
そうすれば、月までの事実上の往艦船として運用出来ます。
お互い、努力して参りましょう!」
「本当に、アラン皇帝陛下とそのご家族には頭が下がります。 貴方方が居られたお陰でどれ程この惑星アレスの民が救われた事か。
私は、僧籍にありますので妻帯しておりませんが、子供を持てるなら貴方の様な息子を持ちたい!」
との言葉に、握手をしながら頷いて見せた。
やがて準備も整い、僕は希望して随伴してくれたテオさんと親友のロンと共に、宇宙船(艦名:第18宇宙艦隊所属コーラス級護衛艦コーラスⅢ)の船内に入り、専門の技官達が様々な作業を熟す中、専用の機材からの配線が多く取り付けられたコクーン(繭)に入室した。
その中にある椅子に座り、専用のヘルメットを装着して、カルマ様に報告する。
「カルマ様、準備完了しました!
此れより代替エンジンの状況を把握します!」
「了解した。 専用ヘルメットに詳細なデータを流す!」
と応答された瞬間、膨大な情報が専用ヘルメットに流れ込む。
其れは、僕達が乗ってきた『アーガマ』に積んである、魔力動力炉の特殊用途用にカスタマイズされている物を八仙が其れ其れ担当する8基の同調同期比のデータである。
宇宙船の片側に4基ずつ配置されている其れを、バランスをとりながら出力を安定させるのは、中々骨が折れそうだ。
「其れでは始めるぞ! 少しづつ出力を上げて行ってくれ、アポロニウス皇子殿下!」
「了解しました、始めます!」
と僕はカルマ様の指示通りに、ゆっくりと魔力を放出して行き、僕の席の周りのコクーン(繭)は全ての僕の魔力を吸い出して行く。
其れを八仙の方々は、非常に安定した状態で魔力を振り分けて行き、充分に行き渡ったと判断したカルマ様は、
「良し! 充分に魔法シールドを纏えたぞ、魔力放出出力を上げてくれ!」
「了解、魔力放出出力を上げます!」
僕は、その指示に凡そ10%に魔力放出出力を上げてみた。
「良し、取り敢えずその出力で安定させてくれ!」
「ハイッ!」
すると其れまで細かく揺れていただけの宇宙船は、激しく動き出したが、当然魔法シールドをしている為に崩れ落ちる天井からの岩塊は、全て跳ね飛ばされる。
「良しこのまま発進するぞ、皆そのまま席に着いてシートベルトを確認せよ!」
「「「了解です!」」」
その言葉に船内の座席に座っている研究員達は、予め座っている座席の安全性を確認する。
その様子を確認しカルマ様は、
「さて、いよいよ行くぞ! 『コーラス級護衛艦コーラスⅢ』発進!!」
その掛け声に合わせ、宇宙船の外側に並ぶ代替エンジン8基が、唸りを上げて下部に有る噴出孔から、魔力で変換された噴流(ジェット)を噴出させて推進し始めた!
宇宙船は、山肌の開閉口(以前帝国本土を攻撃したレールガンが有った場所)を破壊しながら、その巨大過ぎる船体を地上に現した。
今までその殆どの全体は地中に埋まっていた筈なのに、その金属の塊の様なメタリックの鈍い輝きは、太陽に照らされて非常に幻想的だったらしい。
カルマ様は、船内のモニターからその映像を確認し、感極まったのだろう、滂沱の涙を流して僕に呟かれる様に話し始めた。
「・・・悠久の時の彼方・・・、この宇宙船は、難を逃れる為に此の地、惑星アレスに辿り着いた・・・。
だが肝心の乗組員たちは、そのあまりの困難な旅路と不時着の衝撃で、殆どの民が死んでしまっていた・・・。
しかし、ごく僅かの生存者は、惑星アレスに先住していた『人類に連なる者』と混血する事で、血を伝える事に成功し、サイヤン帝国の科学技術と『調整者』の存在を不完全ながら伝承させてくれた。
だが、その血を伝えた者の中には、自分達を追いやった国家を恨み続ける一派が有ったのだ。
その末裔こそが、例の『アグニ』とその一派だ。
そして『アグニ』とその一派は、同じく此の惑星アレスにやって来た異邦人(エトランゼ)であられる、アラン皇帝陛下によって討ち取られた・・・。
この事実は、『アグニ』達の思いそのものが間違っていたと、私は想う。
だからこそ、奴等はまるで勝手に追い詰められる様に自滅して行き、最後には『古きものども』に乗っ取られると云う哀れな最期を遂げたのだ。
アポロニウス皇子殿下、貴方にはどうかこの宇宙船を有効活用する事で、負の遺産とならない様に計らって欲しい・・・。」
その願いを込めた独白に、僕は力強く頷き、
「必ず、その思いを果たすべく僕は頑張って参ります、今後ともどうぞお導きを」
と返事すると、カルマ様は大袈裟にも深々と頭を下げられた。