皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第一章 第20話

 「やっと会えた! このオイラと手合わせしようぜ!」

 

 ホテルの警備員に取り囲まれた、僕よりも3歳位上に見える褐色の少年が宣ってきた。

 正直な処、混乱著しいが取り敢えず詳細を聞く為に、ホテルの会議室を借りて僕と親友達、そしてテオさんと3人の護衛騎士が同伴して、彼ことホテルへの無断侵入者に事情を聞く事になった。

 

 話しを戻すと、昨日ホテルに到着して荷物をホテルマンに部屋へ持って行って貰う様に依頼し、ケントに連絡して大浴場の男湯で合流して、珍しい露天風呂やサウナを堪能した後、女性陣も誘って首都『ムンバイ』をアラム共和国の案内人と共に散策した。

 その際に、地元のTV放送局の取材を受けたので、かなりのリップサービス混じりのコメントを述べて、昨日は夕食の後は直ぐに就寝したのだけど、今朝になって早朝の散歩に繰り出した処、いきなり路上から声を掛けて来たのがこの少年だ。

 

 ホテルの会議室に入って話しを聞く前に、お腹を派手に「グゥーッ!」と鳴らした彼の為、取り敢えず朝食前の軽食を食べさせながら要件を聞く。

 

 クーガーと名乗る彼は、旺盛な食欲で軽く焼かれたクロワッサンとお菓子を口に頬張り、直ぐに飲み込んでそれをお茶で流し込むと、彼は僕に向かって最初と同じ文言を言って来た。

 それを聞いて僕は、

 

 「何でクーガー君は、この僕と手合わせしたいんだい?

 格闘ならこのアラム共和国には、かの拳王『ダルマ』様が道場を開いているから、其処に入門すれば幾らでも腕試し出来るのに」

 

 「ああ、確かにそうなんだけどさ、もうダルマの地方道場は5つ行ったんだけど、どこも弱くってさ面白く無かったんだよ!

 だから地方じゃなくて本部のあるこのムンバイに来たんだけど、肝心のダルマは崑崙皇国に出張中らしくってさ、師範連中もそれなりに強かったけど、スピードが遅すぎてさ、面白くないんだよな!

 そんな時に、先月の武道大会の放送を見て驚いたんだよ!

 あんた、スゲエじゃねえか!

 基本の演武の後に、エキシビジョンマッチで崑崙皇国の褒姒とプロテクターをした勝負を見たんだが、あまりのスピードにオイラは感動しちまったんだよ!

 しかも、全然まだホンキじゃ無さそうだったから、ホントはどこまで早いのか気になっちまってさ!」

 

 その言葉に僕は苦い顔をしてしまった。

 あのエキシビジョンマッチは、実に不味かった。

 基本の演武だけで終わらせたかったのに、褒姒の奴が、

 

 「男子と女子で優勝が2つ有るのは変よ! 真の小等部の優勝者を決めたいわ!」

 

 と無茶な要求をして来て、しょうがないから休憩時間の余興として、付き合ってやったのだ。

 なのに、褒姒の奴は夜の裏武道大会でやれば良いのに、ある程度本気になってそれなりのスピードで攻撃して来たのだ。

 仕方なく僕もそれなりのスピードで対戦してしまって、帝国小等部の面子を保つ為に勝ってしまった。

 だが、余興にも関わらず盛り上がる結果となってしまい。

 TV放送局の方も、ただの余興と取り上げず男子・女子の優勝者同士のエキシビジョンマッチとして、特別放送してたらしい。

 その特別放送を見て、彼は感銘を受けたらしい。

 

 「オイラはさ、スピードにスゲエ自信があったのさ。

 世界でも同年齢ではオイラが一番速えとな、しかしあの放送を見てもしかすると、オイラと同等か速い奴が居る事が判ったのさ!」

 

 「ん? そんなにスピードの速さを目指すのなら、格闘技では無くて100メートル走のランナーを目指した方が良くないか?

 昔と違って、スポーツ競技でも職業になるから目指している人は多いよ!」

 

 「あんな、一直線に走るだけなんて面白くも何ともねえさ!

 それに今世界で一番速えと言われているヤツなんかより、ホントはアンタの親父さんのほうがもっともっと速えんだろう?」

 

 敢えて僕はその問いに返事せずに、クーガー君を誘いホテルの朝食を親友達と一緒に摂る事にした。

 クーガー君と初めて会った親友達は、

 

 「おや、かなり絞り上げられた肉体だな、まるで今にも跳び上がりそうだぜ!」

 

 「ふ~ん、格闘は相当強そうね! だけど剣術は出来ないみたいね!」

 

 「うーん、素質は良さそうだけど、あまり良い鍛え方をして無さそう」

 

 「アポロ、後で僕の買い物に付き合えよ! 良い感じの魔道具ショップを見つけてるんだ!」

 

 約1名を除いて、クーガー君をそれなりに評価しているので、僕の見立ては間違えていない事を確認出来たので、予定通りに拳王『ダルマ』様の道場に午前中に来訪する事にした。

 

 全員でバイキング形式の食事を食べたが、僕達にとって珍しい『カレー』を主体とした食事内容は、とても美味しかった。

 

 クーガー君はかなり旺盛な食欲を見せて、3人前をペロリと食べ終えると、初めて食べるらしいアイスクリームをかなり気に入った様で、お代わりを2回していた。

 

 ホテルからそれ程離れていないので、歩いて拳王『ダルマ』様の本部道場に向かった。

 予めアポイントを取っていたので、すんなりと道場に入れたが、クーガー君を見た道場生達は、何で彼が僕達と一緒に居るのか不思議がっていた。

 僕達を迎えて本部道場の師範代が、

 

 「本日は、帝国のアポロニウス皇子殿下とその友人方からの来訪を受けて、我等拳王『ダルマ』本部道場に取って大変な栄誉となります!

 道場生は全員ご存知でしょうが、アポロニウス皇子殿下とその友人方は、毎年行われる『世界武道大会』に於いて優秀な成績を修めて居られる方々ばかりです!

 恥ずかしく無い練習風景をお見せしましょう!」

 

 と檄を飛ばされ、早速中々の練習風景を見せてくれた。

 暫くして、本部道場の師範代が僕に尋ねて来て、

 

 「如何ですか、アポロニウス皇子殿下? 皆の練習具合は?」

 

 「かなり良いですね! 正直此処まで地元の武術と神拳流、そして帝国の格闘技術の融合が図れているとは思いませんでしたよ!

 此れなら、僕の来年以降の『世界武道大会』の優勝は、怪しくなって来ましたよ!」

 

 「大変有り難う御座います! アポロニウス皇子殿下のお言葉を賜り、一層練習に励んでくれるでしょう!」

 

 と本部道場の師範代は、喜んでくれていたが、僕の連れである親友達と特にクーガー君はつまらなそうにしている。

 

 「処で師範代殿、不躾ですが今からこの道場を使用して、僕の試合をさせて頂きたいのですが?」

 

 「エッ! 本当ですか? アポロニウス皇子殿下の例の褒姒皇女殿下とのエキシビジョンマッチは、大人の道場生の間でも話題になっているんですよ!

 ですが、大変申し訳無いのですが、アポロニウス皇子殿下の相手になる様な子供の道場生は居ませんので、私が相手致しましょうか?」

 

 と申し出て来たので、

 

 「いえいえ、師範代殿相手ですと身長差が有りすぎて、返って害になる試合しか出来ませんよ。

 其れに師範代殿も判って居られるのでしょう、彼(此処でクーガー君を見て)と試合をしようと思うのですよ」

 

 「・・・やはり、彼なのですね・・・。 やって来た段階でそうだろうとは思っていましたが・・・。

 正直な処、彼ことクーガー君については私共も測りかねて居たのですよ。

 道場に来たのは良いのですが、型の練習はしないくせに、いざ乱取り形式の練習を大人の道場生が始めると、積極的に参加して来るのですが、逃げ回っているばかりで乱取りにならないんですよ!

 些か持て余していまして、拳王『ダルマ』が帰って来ましたら相談しようと考えていたんですよ!」

 

 との言葉に成る程と納得し、クーガー君に向き直って言葉を掛けた。

 

 「クーガー君、お許しを貰ったよ!

 そして君の望みも大体判っているよ、つまり君は動きやすい格好で試合をしたいんだろう?

 然も、なるべくなら場所の区切りも無くて、広い空間で戦いたいと?

 更に言えば、プロテクターの類すらいらないんだろう?

 了解したから、一切のルール無用で君の望みに従い、決着は君が納得するまでとしようじゃないか!」

 

 その僕の宣言に、師範代と道場生達は驚愕していたが、親友達とテオさん始め護衛騎士達は苦笑いしている。

 そして肝心のクーガー君は、其れまでの退屈していた素振りが掻き消えて、爛々と眼を輝かし始めた!

 

 「やっぱりアンタはスゲエ! アンタをTV放送で見た時から感じていたとおり、オイラをマンゾクさせてくれる奴はアンタしか居ねえ!

 ああ、そのとおりだよ! できるなら裸のままで試合したいんだよ!」

 

 「流石に、裸だと返って動きづらいから、此のインナースーツで(此処で僕は衣服を脱いで、下に着ていたインナースーツを見せる)戦おうじゃないか?」

 

 「おお、それなら試合しやすそうだな! 判ったその服に着替えるよ!」

 

 そう言ってくれたので、テオさんに予備のインナースーツをクーガー君に渡して貰い、着替えて貰った。

 

 さて、久しぶりに幾つかのリミッタ-を外してみるとするか。

 

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