皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第一章 第23話

 [ロン視点]

 

 

 面白い人材が、やって来たな!

 僕としては、何時ものメンバーだと僕の性格を知り尽くしていて、実験に付き合ってくれないので、全く警戒していなくて頑丈そうな実験体は大歓迎だ!

 

 実験体候補の名前は『クーガー』と言い、褐色の肌を持つ中々素早しっこい肉体を誇る、アラム共和国の奥地の村出身の男だ。

 あまり学が無い所為か、頭が良く無さそうなのは協力を取り付ける際に、悩まなくて済みそうで有り難い。

 ただ、親友の一人である『ケント』が、クーガー君をアポロの家来と認めた様なので、ケントが居ない時に僕の実験に付き合って貰おう。

 

 『クライナ公国』に着いて早々に、トレーラー・ギルドの『ホシ』さんがアーガマにやって来て、依頼していた幾つかの重要な資材や魔道具をアポロに渡してくれた。

 

 「ホシさん、ご苦労さまでした!」

 

 「どーってことねえよ、偶々俺以外に手の開いている野郎が居なかったから、カカアに申し付けられただけさ。

 それに、久しぶりにアラン様の息子に会えるんだから、俺も喜んで来たんだよ」

 

 そんな挨拶を交わして、ホシさんはアポロを始め僕達を、乗って来たご自慢の『デコトレ(デコレーション・トレーラー)』の所に連れて行き、最新式のデコトレの説明をし始めた。

 この陽気なおっちゃんにしか見えない、デコトレ野郎は自分の作品であるデコトレ『一番星』の改装には、尋常でない執念を燃やしていて、その内容は僕の師匠である『マリオン』帝国魔法技師長ですら、一目置いている程だ。

 

 案の定、一番星の内装を見せて貰うと、信じられない技術を使用していた。

 先ず、座席が帝国軍の最先端戦闘車両にも見られない、ショックアブソーバーを搭載していて、どの様な悪路であろうと御意見無用で突き進める様になっていて、どんな天候であろうと現在位置と路面状況が判る『ナビゲーションシステム』が、モニター画面に映し出される様になっている。

 

 車体に至っては、例の連続ドラマでも人気を博した、普段はスピーカーとして使用する『音響破壊装置』。

 サーチライトは、当然の様に普段のライト機能に加えて、いざという時は『ビーム・カノン』(帝国軍の精鋭部隊に配備されたばかりの新兵器)となる代物だ。

 そんな尋常でない機能の魔力を供給する新型魔力発動機は、ケントの祖父にしてマリオン師匠の義父『ガトル』帝国科学技術長顧問の謹製で、そもそも帝国でも正式採用されていない実験発動機だ。

 

 この殆ど、帝国軍の一部隊と互角に戦えそうな化け物を、あくまでも趣味の範囲でデコトレとして運用している姿は僕と似た匂いを感じていて、時折帝国に戻った際には僕もマリオン師匠と一緒に意見を交わし合っている。

 

 僕以外の親友達はやや呆れた様子で、ホシさんのデコトレ自慢を聞いていて、新人の仲間であるクーガー君に至ってはあまりの派手さに、神輿とでも思ったのかその無意味な突起物やバンパーに感銘を受けていた。

 

 「処で、ナタリー常務はお元気ですか?」

 

 とアポロが尋ねると、途端に相好を崩してホシさんは話し始めた。

 

 「カカアはよ、途轍もなく忙しいのに俺の子供を4人産んでくれたから、クライナ公国支店長室の隣に大きな育児室を併設してくれて、社員たちの子供を全員受け入れて専門のベビーシッターを複数人配置しているから、ストレス無く過ごしてるぜ!

 お陰で子供達は、伸び伸びと同年代の子供と一緒に育って健康そのものだ!」

 

 との返事に、サクラちゃんとマリアちゃんの女性陣が、乗り気になってその育児室を見たいと言い出した。

 そう言えば、ホシさんの4人の子供は全員幼い女の子だから、久しぶりに会いたいんだろうな。

 なので、子供用のお土産を持たせて、ホシさんのデコトレと共に女性陣は、超巨大総合商社『アリスタ・コーポレーション』のクライナ公国及び北方統括本部に出向いて行った。

 

 アポロはケントとテオさんそして護衛騎士の面々を引き連れて、クライナ公国のガデッサ政庁に出向くので、僕とクーガー君は留守番と云う事になった。

 千載一遇の好機だ! さてクーガー君を誘いに行こう。

 僕は自室から出て、恐らく格納庫に特別に用意されたトレーニング・ルームに居ると思われるクーガー君に会いに行く。

 

 「中々、座禅って難しいよーー!」

 

 と何やら文句を言いながら、アポロから身体能力を引き上げる為の宿題である、己を身体の中から見つめる座禅を言い渡されて実行しているクーガー君は、四苦八苦している様だ。

 

 正直、アポロも無理を言うなあ、と思わざるを得ない。

 

 大体座禅と云う物は、精神修養と己のチャクラ(気を使い回す車輪蓮華)を活性化させる技術だ。

 やり方を他人が指導しないと、先ず独力で出来る訳が無い。

 

 そうして大変そうなクーガー君に、

 

 「クーガー君、君には誰も指導しない座禅は難しいと思うよ。

 それよりも、僕の実験もとい、訓練に付き合った方が向いているから、協力してくれないかな?」

 

 「それは、どんな訓練何だい?」

 

 「嗚呼、興味を持ってくれたのかい? いや何簡単な訓練でね。

 あそこに有る(格納庫の一角に有る、僕等のプチ・パワードスーツを指差して)、魔導機械に搭乗して、適度な負荷を掛けながら運動する訓練だよ。

 中々、僕達以外にこんな練習が出来る人材が居なくて、困っていたんだよ」

 

 「そうすると、アポロ殿下も訓練する内容なんだな?」

 

 「その通りさ、アポロもやった事があるよ!(1回だけだけど)」

 

 「判った! やらせてもらうよ!」

 

 と快く受けてくれたので、早速僕のプチ・パワードスーツをサイズ変更して、クーガー君の体格に合わせて着て貰った。

 クーガー君は着心地を確認しながら、ゆっくりとプチ・パワードスーツで歩き出した。

 

 「何だか奇妙な気分だし、力が抜けて行く様に感じるぞ!」

 

 「いや、それで良いんだよ! 普通の人なら必要な魔力係数が出せる訳が無いから、そもそも動け無い!

 だから、今は単に歩けてるだけで、クーガー君の魔力は鍛えられていて、きっと君の望むスピードを上げる訓練になっている筈さ!」

 

 「そいつは嬉しいな! スピードが上がる訓練なら何でもやるぜ!」

 

 「判った! 君が今後も僕の実験に協力してくれるなら、僕も君の望むスピード育成に協力しよう!」

 

 「ありがとう! だけど何だかモウレツに腹が減ってきて、メマイがして来たよ・・・。」

 

 「あっ、不味いな、魔力が10%を切り始めた! 降りてくれ」

 

 ギリギリまで頑張ってくれたクーガー君を、プチ・パワードスーツから降ろして、アーガマ内の食堂に連れて行き、僕のおごりで好きなだけ食べさせてやった。

 生まれの所為か、食欲旺盛なクーガー君は幸せそうにカレー料理を主体に食べまくる。

 

 その様子を見て、この男なら親友達が付き合ってくれない実験に、今後も付き合ってくれそうだと、僕も満足して後で今日の実験データを精査して、練習メニューを考えようと決意した。

 

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