いよいよ崑崙皇国に入国するのだが、先ずは大都市の『長安』と『洛陽』に立ち寄って、色々と見聞を広めようと思う。
アーガマは山海関の国境線関所に到達し、指示された軍の駐留所に係留する事になった。
諸々の手続きを行いながら、カザフ侯国での『饕餮(とうてつ)』の群れの殲滅戦の報告をし、崑崙皇国の関所職員は驚愕しながら詳細な情報を求めて来たので、用意しておいた資料を全て引き渡すと、非常に感謝された。
報告を受けた『長安』から、直ぐに山海関へ指令が行った様で、僕達を早く長安に向けて進発させる事を要請した様だ。
その日の内に僕達の入国許可と空域を自由に航空する許可が出た。
暫くして準備を整えた僕達は、一通り職員に挨拶を終えて山海関の有る『万里の長城』を空から乗り越えた。
そして、麦畑や牧草が棚引く地平線まで続く農地を見て、
「凄く豊かな土地ですね!」
かなり理知的な言葉使いに変わったクーガー君は、最近の催眠学習のお陰か大分礼儀が身に付いて来たが、ふとした瞬間は地がでるみたいなので、もう少し頑張って貰いたいな。
「嗚呼、此の『万里の長城』を越えた崑崙皇国は、10年前からのMM(マイクロ・マシーン)での土壌改良と、『システム・ガイア』のフル活用によって、従来型の農地開発は廃れてしまって、最新型の農地利用方法が確立したから、国土の殆どが豊かな滋味ある土地となっているんだよ」
とクーガー君に説明してあげた。
其れに対して、クーガー君は、
「・・・オイラの生まれたアラム共和国は山脈が多くて、崑崙皇国みたいに地平線まで続く平野なんて無いから、中々豊かに成れそうも無いですね・・・。」
ややしょんぼりしながら僕に告げて来たので、間違いを指摘して上げた。
「いや、クーガー、其れは心得違いだよ。
確かにアラム共和国は山脈が多くて、豊かな農地は得られないかも知れないが、山脈は山脈で人間の生活を豊かに出来る資源が豊富に有るんだよ。
大体、崑崙皇国の此の豊かな国土で生産している穀物類は、崑崙皇国の国民の必要な穀物資源の凡そ1万倍に達していて、当然その余剰穀物類は他国への輸出を念頭に置いた生産だし、アラム共和国ではその広大な山岳地帯から採掘される『レアメタル』『レアアース』によって、世界中で必須といえる『ナノム玉』と『MM(マイクロ・マシーン)』の重要な供給源となっているよ。
クーガーの生まれ育った村の辺りは、珍しく地下資源が少なく、魔物が多い地域だったから、開発が遅れていたそうだけど、後5年もすればインフラ整備も整って、クーガーの様な難民の子供を置き去りと云ったケースは減る筈さ。
何より、クーガー自身がそういった事に関心を持って、将来問題点を解決出来る様に努力してくれると嬉しいな!」
と僕が言ってやったら、顔を紅潮させて頷いている。
そんな雑談等の時間を過ごしていると、やがて非常に立派な城址が見えてきた。
そう、あの立派な城址こそが崑崙皇国の大昔の首都にして、僕の好敵手『褒姒』の祖母が暮らす『長安』である。
僕達の乗るアーガマは、城からの誘導で何故か長安の中心にある城の発着場に着陸し、直ちに僕と親友達更にはテオさん達護衛騎士も城に来て欲しいと、要請されたので早速向かう事になった。
此の長安と云う大都市は、昔の首都だった経緯もあって、古い城郭や趣のある造りの建物がそこかしこに有るんだけど、郊外にはかなり大きなドームが四隅に存在していて、主なインフラは其処で行われているみたいで、城はその喧騒とは離れた形になっていると云う、古さと新しさの混在している大都市である。
此の何だか鄙びた城に案内されて、僕達はいきなり謁見の場まで通されてしまった。
《・・・いきなりだな・・・》
と思ったが、城の主は僕達が齎した『饕餮(とうてつ)』の情報に、かなり深刻な懸念を感じて居るのだろうと考え直し、型通りの礼儀をして壇上の席に座る城の主を見上げた。
「良くいらっしゃいました、帝国の皆さん!
崑崙皇国と此の長安は、貴方方の来訪を歓迎致します」
と女性の落ち着いた言葉が、僕達へ届いた。
そう、壇上に居られる御方こそは、現在の崑崙皇国皇帝陛下『李世民』の母上にして、僕の好敵手『褒姒』の祖母。
『則天武后』様その人である。
彼女は、既にそれなりの老齢の筈だが、とても老婆に見えない矍鑠とした姿で席に座っていたが、一通りの挨拶を済ませると、僕達全員を誘って比較的大きな会議室にしっかりとした足取りで向かった。
その会議室には、かなり巨大なモニターに既に様々な『饕餮(とうてつ)』の情報が映されていて、現在カザフ候国の軍が巣を焼いている状況まで、映し出されていた。
「貴方方の情報から、崑崙皇国に帝国から提供された超高性能ドローンを現地に飛ばし、状況は把握したわ。
そして、貴方方には、此方が得ている新情報を伝えるわ。
此れを見てくれる?」
そう言われて『則天武后』様は、立体プロジェクターを起動させ、或る深山の奥ふかい森の中の様子を空間に映し出した。
其処には、何やら原始的な生活をする人の影が有った。
しかし、よく見ると明らかにその人と思われる影の頭部は、人間にしては異常過ぎた!
何故なら、その人らしき影の頭部は大き過ぎる上に、二つの大きな角がこめかみ辺りから横に大きく張り出しているのだ!
「・・・『牛種』・・・。」
誰かの呟きが大きい音でないのに、大きな会議室に響いた。
そう、その姿は10年以上前に滅ぼされた筈の、『蚩尤』の眷属である『牛種』そのものであった。
人物紹介⑤
ロン
本名『ロン・ダンブルドア』
父:『帝国TV放送局社長 ハリー・ダンブルドア』
母:『帝国TV放送局局長 ハーマイオニー・ダンブルドア』
生年: コリント朝元年 11月11日
現在は帝国第一小等部の6年生にして生徒会情報処理係
親友達の内でも、情報処理能力と研究能力に秀でている。
相棒は、星猫のイプシロン。
賢聖がアポロと一緒に個人的な師匠である。
父母の影響で、中等部では報道部に入る予定。
将来は、神機『ガルガンチュア』のメインパイロットとなる予定。
父母の伝手を利用した、様々なネットワークを構築していて、子供と思えない程の情報収集力を持つ。
人物紹介⑥
クーガー
本名『クーガー』
父:『不明』
母:『不明』
生年: 不明
両親は難民だったと云う事だけは判っているが、それ以上の情報は無い。
アポロの家臣として育成中。
かなりの身体能力を誇るが、現在其れを矯正した上で更に鍛えている。