皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第一章 第29話

 『長江』の景観としても景勝地として有名なレッドクリフ(赤壁)が、夕焼けの空をより映えさせる様に朱く染まる幻想的な情景を、ゆっくりと鑑賞しながらアーガマは夕焼けの空を進んでいく。

 

 僕と親友達は、『長安』の都で購入した『皇帝茶』と呼ばれる茶葉で淹れる飲茶を楽しんでいた。

 

 クーガーとケントは、お茶請けの『月餅』と『胡麻団子』を美味しそうに頬張っていて、時折、咽っているから焦らないでゆっくりと食べれば良いのにと、傍から思いながら見ていると、突然僕の脳裏に、

 

 「・・・随分ゆっくりと進んでいるのね!」

 

 とやや怒り気味の、詰問めいた思念が飛んできた。

 

 「褒姒か、随分とご機嫌斜めだね、何か気に食わないことでも有ったのかい?」

 

 「そうよ! どこかの誰かさんが、とってもゆっくりとやって来るんで予定していた、私なりのお出迎えがパーになってしまったのよ!」

 

 「・・・もしかして、そのお出迎えとやらは、『南京』の郊外に用意している花火の砲列の群れの事かな?」

 

 「何だ、バレてたの。 その通りよ! 貴方達の崑崙皇国来訪を祝して、花火と爆竹でお祝いの祝砲を用意してたの! でも、今夜来てくれないと、花火が夜空に映えないじゃない!」

 

 「・・・そもそも僕達は、あくまでも夏休みの旅行であって、偶々新造揚陸艦の『アーガマ』の世界一周の就役に便乗してるだけだよ。

 国使でもないし、公的な使節ですら無いんだよ。 そんな風に祝われると困るんだけどな・・・。」

 

 「何言ってるのよ! 貴方達の立ち寄ってきた各国では、帝国皇太子の同盟各国への親善旅行として、一大イベントとして報道されているわ!

 いい加減に、自分の影響力を認識しなさいよ!」

 

 「ある程度判っているから、君の用意している花火の砲列の群れを確認して、夜への訪問を控えようと決定して、明日の昼に来訪する事にしたんだよ」

 

 「仕方無いわね! それじゃあ我だけでも合流するわ!」

 

 「・・・まさか、飛んで来る気か?!」

 

 「大丈夫よ、光学迷彩スーツで飛ぶから崑崙皇国でも幾人かしか見破れないわよ!」

 

 「まあ、良いけど崑崙皇国のお姫様を迎えれる程の用意は、アーガマには無いぞ!」

 

 「そんなのどうでもいいわよ、それより進路を右に切って、『鄱陽湖』の方向に向かいなさい!」

 

 「『鄱陽湖』には、何か有るのか?」

 

 「まあね、だけど今は秘密よ!」

 

 そんな会話をしていると、僕が黙ってAR通信をしているのに気付いた親友達が、内容を聞いて来たので、今から褒姒がやって来る旨を伝えると、

 

 「マジかよ~! 褒姒の奴、例の『飛翔魔法』で飛んで来る気かよ!」

 

 「しかし、あの魔法は精々2キロメートルしか飛べない筈でしょう?」

 

 「いや、あくまでもその距離は魔力保有量に左右されるから、褒姒ならこの距離でも飛んで来れるだろう」

 

 「でも、まだ『南京』まで200キロメートルは有るわよ!」

 

 「恐らく、その程度の距離は褒姒にとって、庭を走り回るくらいの感覚なんだろうね」

 

 「・・・信じられないわね・・・。」

 

 「僕は、そんな距離を誰にもバレずに来れるか?が興味有るね!」

 

 そんな話しを親友達でしてると、突然凄まじい魔力を全員が探知魔法で感知した。

 

 初めてそんなとんでもない量の魔力を持つ存在を感知した、クーガーは身震いしながら、

 

 「何ですか、何なんですか? この途轍も無い存在は? 然も速さが尋常じゃない!」

 

 「・・・嗚呼、此れが褒姒だよ・・・。

 人間の持てる魔力を遥かに凌駕し、大人のドラゴンすら足元にも及ばない存在だよ・・・。」

 

 と僕もやや呆れながら、クーガーに答えて上げた上で、艦橋に居る筈のテオさんと艦長以下のクルー(乗組員)の褒姒が飛んで来る事を伝えた。

 

 テオさんは苦笑いして、艦長以下のクルーは信じられないのか、ポカンとした表情で一応警戒する様だった。

 

 5分もすると、アーガマに乗っている全員が探知魔法で感知出来て、その更に5分後に金色の魔力を纏った褒姒が、アーガマの進行方向の正面に現れて空中で仁王立ちしている。

 

 「アポロ! 出てきなさいよ! ワザワザ我が出向いて上げたのよ!

 普通、貴方自身も出迎える為に、『飛翔魔法』で途中まで迎えに来るべきじゃないの!」

 

 とプリプリと頬を膨らませて怒っている。

 仕方ないので、僕も甲板上に出向いてスイッといった感じで空に浮かび上がると、褒姒の前に姿を現せてやった。

 すると、フフンッと鼻を鳴らして褒姒は大きく胸を反らして、

 

 「やっと、姿を見せたわね! さあこのまま『鄱陽湖』まで飛ぶわよ!

 準備は良いわね?」

 

 「ちょっと待てよ! せめてアーガマに降りて休憩したらどうだい?

 サクラちゃん達にも挨拶したいだろうし」

 

 「どうせ、後一時間後には会えるから、後で良いわよ!

 それより、『鄱陽湖』に有る特別ドームにアポロを案内したいのよ!」

 

 と有無を言わさずに褒姒は、決めてしまった。

 この状態の褒姒は、梃子でも動かないのは長い経験で判っているので、僕は肩を竦めるとテオさんと親友達に通信して、褒姒の案内の元『飛翔魔法』で『鄱陽湖』に有る特別ドームに向かう事になった。

 此の場所から150キロメートル程だそうなので、まあそれ程魔力を使用せずに飛べるだろう。

 

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