大浴場『極楽湯』の中に暖簾をくぐって入ると、『日の本諸島』風の脱衣所にみんなで向かい、竹の編み籠に着ていた衣類を脱いでドアを開けて入ると、視界を覆うほどの湯気が押し寄せて来た。
「「「オオオーー!」」」
と歓声を上げて、僕達は掛け湯でお湯を身体に掛けて洗い場に向かい、石鹸とシャンプーで身体を丹念に洗っていると、連れて来たクーガーが戸惑った顔をして呆然としているので、ケントとロンを誘い簡単な浴場のルールを教えこんで背中の洗い合いを始めた。
ただ洗う為の道具が、ヘチマという植物を水にさらして軟部組織を腐敗させて除き、繊維だけにして、スポンジ状にした物で、非常に肌当たりが良い道具なので、きっとルシウス設計技師や李世民皇帝のこだわりの洗道具なのだろう。
その使い心地に感心しながら、僕達は身体を互いにしっかりと洗い、早速『炭酸泉』に入った。
小さな気泡が下から次々と浮き上がっている湯を見て、初めて炭酸泉を見たクーガーは驚いていたが、僕達が普通に全身を浸からせて気持ち良くしていると、警戒心を解いてお湯に入ると肌に小さな気泡が張り付いて来て、血流や肌の潤いが改善される効果の為、徐々に気持ち良くなった様で、リラックスした顔をしている。
充分に炭酸泉を堪能した僕等は、『薬湯』に入り直した。
この薬湯とは、桑、槐(えんじゅ)、楮(こうぞ)、楡(にれ)、柳、の五木と、菖蒲、艾葉(がいよう)(ヨモギの葉)、車前(オオバコ)、荷葉(ハスの葉)、蒼耳(そうじ)(オナモミ)、忍冬(にんどう)(スイカズラ)、馬鞭草(ばべんそう)(クマツヅラ)、蘩蔞(はんる)(ハコベ)の八草を使用する、五木八草(ごぼくはっそう)湯で、新陳代謝の促進、老廃物の除去、保温性の他に、タンニン酸類を含むものは収斂(しゅうれん)作用、消炎作用がある。
薬湯で、匂いの付いた身体をまた掛け湯で洗い流し、ヒノキの木材で出来ている『サウナ』に入る。
「ウワッ! 暑い! 此処は何ですか?」
クーガーはそのムワッとした熱気に驚いて尻込みして、部屋から出てしまった。
僕とケントは笑いながら、
「そうなるとは想像していたよ、まあ無理に入る必要も無いから、ロンに案内してもらって『電気風呂』にでも入って来なよ!」
と言葉を掛け、ロンに目配せした。
ロンは、僕の意思が判った様で、苦笑しながらクーガーを電気風呂に連れて行く。
僕とケントは、『サウナ』内に居た『趙匡胤』様と子弟達に挨拶をして、汗をかきながらサウナの熱気を楽しむ。
趙匡胤様は、
「アポロ皇子は、本当に大人顔負けの立ち居振る舞いだし、サウナのルールも完全に弁えていて、儂は頭の下がる思いだよ。
匡義(弟)、徳昭(次子)、徳芳(四男)よ、お前達もそう思うだろう?」
その言葉に、崑崙皇国の司法長官である趙匡義様は、
「そうですね、帝国で出会った時も12歳と思えない程の思慮深さに驚きましたが、他国への歴訪でも帝国の力を背景とした威圧を一切出さずに、ご自分の考えで訪問国の状況に応じた対応をされて、アポロ皇子個人を訪問された国の方々は、評価しているそうですよ」
と僕の事を過大評価していて、帝国に留学している趙徳昭(中等部3年)殿と趙徳芳(中等部1年)殿は、
「俺達の年代でもアポロ皇子は噂されてるし、俺は来年から高等部では無く崑崙皇国の士官学校に入るから、アポロ皇子との接点が無くなるから、その点はざんねんだな!」
「僕は、このまま帝国の中等部から大学まで留学するつもりだから、長い付き合いになるな!
アポロ皇子は、世間一般では例の『世界武道大会』での武勇が有名だけど、数々の魔法開発を賢聖モーガン様とその一派、そして『八仙』の老師方との協力の元で編み出し、将来は大成するだろうと噂されてますよ!
アポロ皇子、必ず中等部に入ったら、この僕『興元尹』趙徳芳に会いに来てくれ!
この僕以外にも、様々な人物が中等部には留学生として活躍しているよ、是非楽しみに入学してくれよ!」
趙匡胤様の子弟達は、皆優秀だと聞いていたので、
「僕の方こそ、宜しくお願いします!
徳昭殿とは暫く会えそうもないですが、僕も高等部を終えたら士官学校が進路になりますし、その際には先輩として接して下さい!
徳芳殿、僕も中等部で色々とやりたい事が有りますし、様々な人々と関わり合いたい。
崑崙皇国の方々は、優秀な人々が多いので、非常に楽しみですよ!」
そんな風に話し合えて、程よく汗をかいた僕達は、サウナの隣に有る水風呂に入り火照った身体を冷やして、外にある露天風呂にそのまま全員で向かった。