皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第一章 第36話

 崑崙皇国の首都『南京』にあるスポーツを専門とするドームに僕達は向かい、剣王『カイエン』様の道場に案内された。

 

 「どうぞ、此方へ」

 

 と道場の門下生と思われる若者が僕達を導いて、レストルームに案内してくれたので、其処で此の道場の試合着である羽織袴に着替えた。

 着こなしを確認し、道場の練習場に向かうと、ザワっと周辺に居る門下生がざわめいた。

 

 「・・・流石はアポロ皇子! 見事な着こなしと隙の無い佇まいだ、私の門下生で貴方に伍する人間がどれ程居るか判らんな・・・。」

 

 そんな声が、練習場で門下生達の練習風景を見られていた人物から発せられた。

 

 そう、此の人物こそが剣王『カイエン』様、此の世に3人しかいない剣王のお一人だ。

 

 「お久しぶりです、剣王『カイエン』様! 貴方様のお弟子さんである崑崙皇国の廷臣のご子弟の方々の礼儀正しさには常々感心しておりまして、帝国でも剣王『カイエン』様もお弟子さんは、出来が良いと評判ですよ!」

 

 その僕の言葉に、剣王『カイエン』様は苦笑していたが、やがて少し考え始めた。

 暫くして、意を決した様な顔をされると、道場の板壁に寄りかかって退屈そうにしている、3人の13歳から15歳の門下生に声を掛けた。

 

 「玄徳(げんとく)、雲長(うんちょう)、益徳(えきとく)!

 お前達が日頃求めていた強敵が来てくれたぞ!

 各々の試合用の袋竹刀(ふくろしない)を持って来い!」

 

 との剣王『カイエン』様の言葉に、道場の板壁に寄りかかって退屈そうにしていた3人は、喜色満面になると自分のロッカーに急行して、其れ其れの得物を持参して来た。

 

 そして早速3人でじゃんけんを始めて、順番を決めると先ずは『雌雄一対の剣』を両手に携えた15歳くらいの門下生が試合場に上がって来た。

 僕も3人に見覚えがあったので、面白く感じて道場に有った予備の袋竹刀(ふくろしない)を、何本か受け取って素振りをした。

 中々バランスが良いのを選び、試合場に上がって相手を見た。

 玄徳(げんとく)と言われた双剣を携えた門下生は、年齢にそぐわない感じに落ち着いた風情で、僕に話し掛けてきた。

 

 「私は、姓は劉(りゅう)、名は備(び)、字を玄徳(げんとく)と申します。

 兼ね兼ねアポロ皇子の噂を耳にしていて、以前、年始の挨拶で父母と共に、アラン皇帝陛下の御前にてお会い致しました。

 常々、アポロ皇子とは撃剣を交わしたく願っておりまして、本日、漸くその願いが天に通じました。

 どうぞ、その実力の一端をお示し下さい!」

 

 「やはり、貴方が今年の中等部3年生での剣術演武部門の優勝者、『劉玄徳』殿なのですね!

 貴方の双剣の見事さは、同じ双剣の使い手である剣王『シュバルツ』様が褒めていましたよ!」

 

 「其れは光栄ですね! では演武では無く撃剣での実力をお見せしましょう!」

 

 「そうですね、此れ以上の言葉は無用でしょう」

 

 そして僕と『劉玄徳』殿は向かい合い、審判役の剣王『カイエン』様の合図で試合を開始した!

 

 「フゥオーン!」

 

 と風が鳴いた瞬間、僕と『劉玄徳』殿は試合場の四隅一杯を利用して、袋竹刀(ふくろしない)を交差させあう。

 

 「カカカカカカッ」

 

 凄まじい速度で剣戟を繰り返しながら、僕は『劉玄徳』殿の技の冴えに感心していた。

 決して、重い訳でも速い訳でも無いが、理に適った技と斬り返しの見事さは、恐らく此の人物の人柄から来るもので、正に正道そのものの剣技である。

 50合程の打ち合いの後、『劉玄徳』殿は試合場の中央にて構えを取った。

 

 「天地合一!」

 

 その気合いを乗せた叫びを残して、僕に真正面から『劉玄徳』殿は右手の剣は上段、左手の剣は下段に構えて突進して来た。

 その何の衒いもない真っ直ぐな剣技に、僕も真正面から青眼に構えて応じた。

 

 「ババンッ!」

 

 と袋竹刀(ふくろしない)が払いのけられる音と共に、『劉玄徳』殿の両手の剣が宙に飛び、そのまま試合場の中央に落ちてきた。

 

 「勝負有り!」

 

 と剣王『カイエン』様が宣言して、試合が終わった瞬間、道場から、

 

 「おおおおーーー!!」

 

 と歓声が上がった。

 次の瞬間、パチパチと拍手をしながら『劉玄徳』殿は僕に歩み寄られ、握手を求めて来たので、僕も両手で握り返すと、『劉玄徳』殿は莞爾と笑いかけてきて言葉を述べて来た。

 

 「流石だ、アポロ皇子! 正に王者の剣と言って良い真っ向勝負の剣技!

 君が歩むべき王道をその剣技が示している!

 私は、君が照らす王道に続いて歩もう!」

 

 「有難うございます! ですが『劉玄徳』殿の立場からすると、先ずは崑崙皇国の廷臣となるべきでしょう」

 

 「・・・其れが、悩みどころだな・・・。」

 

 と言って『劉玄徳』殿は項垂れながら試合場を降り、代わって雲長(うんちょう)と呼ばれた方が試合場に上がってきた。

 

 《前から思っていたが、大柄だな!》

 

 そう、此の雲長(うんちょう)と呼ばれる人物は確か14歳の筈だが、身長は180センチメートルに達し、凄まじい程の意志を感じるその眼は、非常に厳しい。

 そして徐に雲長(うんちょう)殿は、私に頭を下げて来て、

 

 「某は、姓は関(かん)、名は羽(う)、字を雲長(うんちょう)と申す!

 アポロ皇子には、知って置いて貰いたいのだが、某の尊敬する人物は、貴方様と密接に関係する御方だ。

 貴方様のお父上のアラン皇帝陛下の側妃にして、帝国高機動軍の司令官であられる『セリーナ中将』様です!

 理由は、某の得物を見てお判りと思うが、『セリーナ中将』様の青龍偃月刀『冷艶鋸改』を、女性とは思えない程にあの巨大な薙刀を自由自在に振り回す姿は、某の理想な姿そのものなのだ!

 其の『セリーナ中将』様が、ある武術番組で貴方様とほぼ互角の打ち合いをしている姿を見たのだ。

 正直最初は、番組の構成で演武をしていると思ったのだが、『セリーナ中将』様の本気の目と力の入れ具合に本当の打ち合いなのだと理解できたのだ。

 あの『セリーナ中将』様と僅か10歳の子供が互角の打ち合いをする、その事実に某は驚愕するとともに感動したのだ!

 自分より2歳も下の子供が、尊敬する人物と互角の武術を修めていると云う事実!

 何という武術の奥深さと、修練の可能性!

 嗚呼、此れからその当人と試合が出来る僥倖!

 アポロ皇子! 全力を挙げて挑ませて頂く!」

 

 その絶叫じみた歓喜の雄叫びに、僕は黙って『関雲長』殿の熱い思いに答えるべく、袋竹刀(ふくろしない)では無く、長めの杖術用の棒を選び構えた。

 

 その様子に、『関雲長』殿も本当に嬉しそうに練習用の木製の大薙刀を構えた。

 

 いよいよ、『関雲長』殿との試合が開始されようとしていた。

 

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