皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第一章 第39話

 『劉玄徳』殿とクーガーを伴って救護室に向かい、『関雲長』殿と『張益徳』殿を見舞った。

 

 彼等は既に常設の救護員からの『ヒール』と、『カーラ印の治癒促進ドリンク』を飲んでいたので、ほぼ全快していて一応の経過観察の為に救護室で休憩していた。

 

 僕達に気付くと直ぐに跪こうとして来たが、当然僕はそれを遮り救護室の隣に有る道場用の談話室に出向き、全員での会話を開始した。

 

 やはり僕の推察は概ね当たっていて、3兄弟は予め褒姒の要請で呼び出されていてあの場に居たが、正直な処、気が乗らなかったらしい。

 しかし、幸いにも僕の方が早く道場に来たので、剣王『カイエン』様が気を利かせて僕との試合を組んでくれて、褒姒との試合と違いスピードに翻弄されるだけの闘いにならず、思いっ切り実力を出せて満足出来たそうだ。

 

 「褒姒皇女には申し訳ないが、我等、崑崙皇国の貴族の立場としては、如何に試合とは云え本気で崑崙皇国の皇族に武器を叩き付ける事は、どうしても躊躇してしまいますよ」

 

 「その通り、某の様な大きな漢が、如何に実力が有ろうと、女子供に本気にはなれませぬよ!」

 

 「賛成だぜ! 俺も同じだし、大体、褒姒皇女はすばしっこすぎて、組打も出来ねえから全然勝負にならなくて、一つも面白くなかったんだよ!」

 

 と3兄弟は口々に言い、更に、

 

 「其れに比べてアポロ皇子は、我等の得意分野で真正面から勝負致してくれました。

 真に有難うございます!」

 

 「左様、某には得物が砕けても格闘戦に応じて戴けた! 初めて全力の勝負が出来た思いですぞ!」

 

 「俺は次兄以外で、本気の殴り合いをして戴けて、本当に満足させて戴けて幸せだぜ!」

 

 と僕に3人とも、頭を下げて来たので、恐縮してしまったが、これからの友誼を誓いあって、武術の話題を共に語らい合ってクーガーの事も紹介して、今後の中等部での関わり方を思考して、拳聖と剣聖の帝国に有る道場で週末に合流して互いを磨きあう事を決めた。

 

 そのまま武道の話しで盛り上がって、談話室から試合場に戻ると、何と未だに褒姒とサクラちゃんは闘っていた。

 多分、談話室での会話時間は30分くらい掛かっただろうから、その間ずっと闘っていたのだろう。

 

 サクラちゃんは母親である剣王『オウカ』様譲りの長刀タイプの袋竹刀、それに対して褒姒は最近の好みなのか九節棍(きゅうせつこん)を袋竹刀にして闘っていた。

 

 二人はかなりやり辛そうで、何とか得物を壊さない様に手加減しながら闘っている様で、フラストレーションを抱えながらやりあっている。

 

 何時の間にか来られていたらしい、拳王『ダルマ』様が僕に近寄ってきて、

 

 「アポロ皇子、お久しぶりだね。 2ヶ月前の『武道大会』では表彰式で挨拶しただけだから、会えた気がしなかったよ」

 

 「そうですね、『武道大会』では『ダルマ』様は来賓席で挨拶しただけなので、本当はアラム共和国でのご活躍をお聞きしたかったです」

 

 「嗚呼、そう言えばアラム共和国の本部道場に来てくれた様だね。

 『武道大会』の後、カイエンの誘いで崑崙皇国の有望な選手を教えに来ていてね、どうやらその有望な選手と手合わせしてた様じゃないか!」

 

 そう言うと、僕の隣に居る3兄弟に視線を移した。

 3兄弟の方も、拳王『ダルマ』様へ黙礼し、しっかりとした師弟関係が結ばれている事が見て取れた。

 

 そして拳王『ダルマ』様の視線は、僕の後方に移り、

 

 「差し詰め、彼が例のクーガー君かな?」

 

 そう僕へ尋ねて来たので、僕は頷くと、

 

 「ええ、その通りなのですが、本来なら拳王『ダルマ』様に連絡を取ってから、僕の預かりとする旨を交渉すべきでしたが、本部に居られた師範代と独断で処理してしまいました、申し訳ありません!」

 

 「いや、そんな事でアポロ皇子が謝る必要は一つも無いよ。

 大体、私とクーガー君は面識も無いし、正式に弟子入りも出来ない私の留守中の話しだからね、本部の師範代の決定は全然問題ないよ」

 

 と答えてくれたので、一応これでクーガーの問題は片付いた。

 

 《・・・それにしてもグダグダだな・・・》

 

 現在の試合場での、褒姒とサクラちゃんの試合は、お互いの決めてが欠いている所為か、只の打ち合いでしか無く勝負が決する気配が無い。

 

 その事実は当人達も判っている筈だが、意地なのか誇りなのか諦める様子が無い。

 

 仕方無いと判断された、審判役の剣王『カイエン』様は、

 

 「両者、引き分け」

 

 との判断を下し、双方も不本意そうだが諦めて、両者中央の停止線で礼をして、試合場を降りてきた。

 

 二人共、相当にイライラしてるらしく、会話が出来そうも無いので、僕は改めて剣王『カイエン』様と拳王『ダルマ』様に集まって貰い、僕の案を提示した。

 

 「剣王『カイエン』様は、知って居られないでしょうが、先日僕の家臣となったこのクーガーは、アラム共和国で拳王『ダルマ』様の道場の門を叩いた、入門希望者だったんですよ。

 しかし、タイミング悪く拳王『ダルマ』様は此処、崑崙皇国に出張中でした。

 それで留守中の本部に行ってはみたものの、どうやらクーガーの望む武術では無かったらしく、丁度僕等が滞在していたので、僕と対戦したら納得したらしく、僕に仕えたいと言ってきましたので、本部道場の師範代と交渉し、僕が引き取った経緯があります。

 だけど、此れではクーガーにも拳王『ダルマ』様の面子の為にも良く無いと思われますので、この際、拳王『ダルマ』様が此のクーガーに胸を貸して上げて貰いたいのです。

 クーガーは、己の速さに自信過剰でしたので、僕がそれ以上の速さを示してひれ伏しましたが、闘いとは速度だけでは無い事を教えてやって下さい!」

 

 「フム・・・了解した。 確かにこのままでは良くないな。

 クーガー君、何かの縁だと思うので、君に稽古を着けてやろう、挑んで来なさい」

 

 と拳王『ダルマ』様は受けてくれたので、クーガーは、

 

 「ありがとうございます! 拳王『ダルマ』様! どうかオイラに稽古を着けて下さい!」

 

 と嬉しそうに言って、早速、試合場に上がって行った。

 

 大分、礼儀と言葉使いが改まったが、まだまだ常識に欠けるので、ゆっくりと教えて行かなければと思いながら、両者の稽古を見物する事にした。

 

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