皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第一章 第40話

 試合では無く稽古と云う事になったので、特に審判役は置かずに只、クーガーと拳王『ダルマ』様が試合場に上がり、お互いに礼をした。

 

 「さて、師範代から聞いているが、相当にスピードに特化したスタイルらしいな。

 ならば、最初から全開の速度で攻撃して来い!」

 

 と拳王『ダルマ』様の掛け声に、予め試合場に限定した稽古の場にしないとのルールにしたので、いきなり試合場を越えてクーガーは走り始めた。

 

 ある程度、そのクーガーの闘い方を皆に周知させていたので、闘う当人二人以外の全員は2階席に上がっている。

 

 「バオッ!」

 

 と道場の中を一周した瞬間、一気にクーガーは拳王『ダルマ』様の真横目掛け、蹴りと共にかっ飛んで行った。

 

 「・・・ふむ・・・」

 

 と呟くと、拳王『ダルマ』様はひょいといった感じで体を捌いて、その攻撃を避けそのままクーガーは脇をすり抜けて行くと思えた瞬間、地面を蹴って急ブレーキを掛けるとそのまま跳躍して頭上から拳王『ダルマ』様の肩口に蹴りを放った!

 

 しかし、そんな動きを当然予測していた拳王『ダルマ』様は、その太い手の平で蹴りに来たクーガーの右足を捕らえると、ブンッ!と音が鳴る勢いでぶん投げる。

 

 そうやって投げられたクーガーも、以前とは違いしっかりとした動きで体勢を整えると、

 

 「ダンッ!」

 

 と道場の壁を蹴り、再度、拳王『ダルマ』様に向かいかっ飛んで行ったが、ござんなれと向かい会った拳王『ダルマ』様の直前で消えた!

 

 2階席から見ていた門下生達が、クーガーを見失ってどよめく中、3兄弟と剣王『カイエン』様、そして褒姒とサクラちゃんはクーガーの動きを捉えていた。

 

 「下だ!」

 

 3兄弟の『張益徳』殿が叫び、拳王『ダルマ』様の背後からスライディングする様にして、両足を使った『蟹挟み』をクーガーは仕掛けた!

 

 しかし、腰を落とした拳王『ダルマ』様の両足は、大地に根が生えた様に小揺るぎもせず、逆にクーガーはその得意な速度を止めてしまった。

 

 慌てて立ち上がろうとするクーガーを、その太い足を器用に絡めさせたまま蹴り上げると、拳王『ダルマ』様は空中に放り出されたクーガーを抱きとめ、脳天からパイルドライバー気味に落とした。

 

 無論、拳王『ダルマ』様は本気では無く、かなり手加減した技で落としたのだが、その全てが太い拳王『ダルマ』様のパイルドライバーは、如何に鍛えられたクーガーでも洒落にならない代物で、アッサリとのびてしまった。

 

 「まあ、こんなものか」

 

 と拳王『ダルマ』様は呟かれ、のびているクーガーを横たえると、試合場脇に居た救護員にクーガーを連れて行かせ、次に2階席に居る褒姒とサクラちゃんに声を掛けた。

 

 「褒姒皇女にサクラ生徒! 先程の試合を見ていて、君等は武道の何たるかが判っていない面が有ると感じた。

 さあ、其処から降りて掛かった来られよ! 教えて進ぜよう!」

 

 と言われたので、どうも先程の試合を論われたと判った二人は、瞬間湯沸かし器の様に頭に血が上り、2階席から一気に拳王『ダルマ』様に襲い掛かった!

 

 「「舐めないでよ!!」」

 

 と、拳王様に対して、とても無礼な言葉を吐いて二人は攻撃して行ったが、そんな精神状態が定まっていない攻撃は、如何に力を込めようと無意味だ。

 

 二人の手刀による『唐竹割り』と踵落としを、拳王『ダルマ』様は簡単にいなすと、そのまま空中に浮いている二人をその太い腕でラリアット気味に絡め取って、道場の壁に向かって放り投げた。

 

 辛うじて受け身を取った二人は、与太突きながらも試合場に上がってきたが、そんな体幹が出来ていない人間が闘える訳もなく、二人共腕を取られて一本背負いを決められた。

 

 「バンッ!」

 

 二人は同時に畳に叩き付けられて、完全に意識を失ったらしく、拳王『ダルマ』様がクーガーの時と同様に救護員を呼んで二人を救護室に運ばせた。

 

 「何とも、聞かされていた状況と変わってしまったが、色々と整理しよう。

 カイエンにアポロ皇子! 降りて来てくれるかな?」

 

 その言葉に、僕と剣王『カイエン』様はヒラリと1階に降りて、3人が集まりその場で会談した。

 

 「どうだろう、まだまだアポロ皇子以外の学生達は、武道の基本が出来ていない様に思うが・・・。」

 

 「確かに、精神面での幼さが残っていて、然も中途半端に強いので良く無い育ち方をしてますね。

 剣聖と拳聖が、育てているので其の面を心配して無かったのですが、まさか此の様な育ち方をしているとは知りませんでした・・・。」

 

 「嗚呼、お二人はそう言えば知りませんでしたね。 実は此処3年ばかり僕達と褒姒は、拳聖様と剣聖様からの指導を受けて居ませんよ。

 お二人は、現在ご自身の修行だと言われて、『南アメリア大陸』に有る秘境として有名な『ギアア高地』に登られていて、時折麓に造られたドームに買い物に来る以外、降りて来ないそうです」

 

 「何と! 最近3年間音信不通だったから、便りが無いのは問題無い証だと思っていたのだが、そんな事になっているとは!」

 

 「無責任過ぎるでは無いか! 仮にも何万人もの弟子を持つ立場に有りながら、その弟子の育成を放ったらかしにして自分の修行にかまけるとは!」

 

 「まあ、しょうがないですよ! 『ナノム玉2』と『新陳代謝改善コクーン』の完成で、殆ど30代にまで若返ったので、己の目標を達成したいと以前から言われてましたし・・・。」

 

 と説明すると、お二人は呆れて言葉も無い様だ。

 其処で僕は提案した。

 

 「ですから、僕の希望でも有るのですが、お二人と僕の稽古試合を、此の場にいる門下生と僕の仲間に見て貰いましょう。

 つまり、見取り稽古をして学んで貰いましょう、如何ですか?」

 

 その僕の提案にお二人は、顔を見合わせて喜んだ様に受け入れてくれた。

 

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