皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第一章 第42話

 拳王『ダルマ』様は僕の状態を確認し、充分大丈夫と判断し稽古試合をする事にする。

 

 僕は、改めてクーガーと褒姒達それに3兄弟に言葉を掛ける。

 

 「先程の剣王『カイエン』様との試合は、スピードの極限を見せれたけど、今度はその逆のスピードとは別の駆け引きを見せようと思う。

 至近距離での勝負を見てくれ!

 それではダルマ様お願いします!」

 

 「良し! 私も久々に幾つかの技を、お見せしようではないか!」

 

 と太い笑みをこぼしながら頷かれた。

 

 審判役となった剣王『カイエン』様が、合図を出した。

 

 「始め!」

 

 そのまま、僕と拳王『ダルマ』様はゆっくりと歩み寄り、双方地面に腰を降ろす。

 

 本来の立ち会いでは有り得ない、地面に座ると云う行為、しかし敢えて僕達はその常識を破る。

 

 但し双方の座り方は違う、拳王『ダルマ』様は『結跏趺坐』と云う座り方で、僕は正座と云う座り方だ。

 

 いや、正座とは若干違うな。

 膝は完全に折りたたんでいるが、足指は本来の正座と違い立てていて、所謂爪先立ちをしている。

 

 周囲の門下生達は、とてもこれから格闘技をする様に見えない、双方の体勢に違和感しか感じないらしく、どよめいている。

 

 しかし、この体勢こそが今回の皆に見せる技の体勢だ。

 

 僅か1メートル程の間合いは、完全に双方の攻撃距離なので、いきなり拳王『ダルマ』様の右腕が、容赦無く頭上から振り落とされて来て、僕はその攻撃を足指の動きだけで拳王『ダルマ』様の懐に飛び込むと、そのまま右腕を抱え込み一本背負いの体勢に移行した。

 

 その意図を挫くべく、拳王『ダルマ』様は右腕の勢いを縦では無く、横に切り替えるとそのままラリアット風に振り回した。

 その勢いを利用し、拳王『ダルマ』様は右腕の勢いを加速させる為に、裏側から両手で押しながらそのまま逆関節を極めて、拳王『ダルマ』様を投げた!

 

 「ヌワッ!」

 

 と呻いた拳王『ダルマ』様は、前方にひっくり返る様にして僕の技を躱したが、僕の攻撃は終わらない。

 そのまま巻き付く様に右腕を絡め取ると、関節を極めに行く。

 

 『腕拉ぎ十字固め』そう言われる技に入る瞬間、拳王『ダルマ』様は腕を強引に畳み、肘を僕の胸骨に押し当てて地面に叩き付けた!

 

 「グハッ!」

 

 と僕は肺に溜まっていた空気吐き出させられたが、その前のめりになった体勢は、僕の狙い通りだ!

 一気に足を伸ばし、拳王『ダルマ』様のその太い首に巻き付かせ、所謂『三角絞め』に持ち込んだ。

 

 だが、完全に極める事が出来なかった、拳王『ダルマ』様は左腕を両脚の間に割り込ませて、そのまま僕の片脚を掴むと地面に叩き付けて来た。

 

 その投げて来た腕の付け根に、持たれていない足の蹴りを喰らわせ、手を離させる。

 

 そしてまた先程と同じ、変形の正座の姿勢となる。

 

 それに対して今度も拳王『ダルマ』様は、元の結跏趺坐の姿勢に戻し受ける構えを取る。

 

 双方共に受けの体勢を取っているが、不用意に攻撃を仕掛けると返し技を繰り出されるのは、先程の技の応酬で双方共に判っている。

 

 しかし、それならば挑戦者の立場である僕が仕掛けるのが筋だろう。

 

 「其れでは仕掛けます、御留流『御式内(おしきうち)』が技の一つ、『車倒迎突』!」

 

 そう宣言して、僕は横回転して肘打ちを拳王『ダルマ』様の顎に放つ!

 当然その肘打ちは簡単に避けられ、拳王『ダルマ』様は体勢の崩れた僕を抱え込もうとして来た。

 

 その動きに合わせ、僕は新たな『御式内(おしきうち)』の技を放った。

 

 《一本捕をダミーに四方投げ(影)を仕掛ける》

 

 拳王『ダルマ』様が僕を抱え込もうとして来た腕をスルリと避けて、腕の逆関節を取ると一本捕の体勢に移ろうとしたが、それに対応して素早く腕を素早く引き抜いた拳王『ダルマ』様の動きを利用した。

 

 鋭く拳王『ダルマ』様の右手首を捉えると、腰を切って右手首を両手で挟み込み、剣を振り下ろす様に一気に投げる!

 

 その僕の技に対して一切逆らう事をせずに、拳王『ダルマ』様は両足で地面を蹴って、後方宙返りして僕をその勢いを活かした形で、膝を僕の背中に押し当てると固め技の『片羽千鳥』で極められた。

 

 「参りました、降参です!」

 

 僕の降参宣言を受けて、剣王『カイエン』様は直ぐに僕の負けを認め、僕と拳王『ダルマ』様は互いに礼をして試合を終えた。

 

 「どうだい、みんな今の試合で何か掴めたかな?」

 

 との僕の問いに、皆は良く判らなかったらしいが、何となく高度な技の応酬だった事だけは判った様で、溜息を漏らしている。

 

 「うーん、難しかったかな? こういった関節を取ったやり取りや、相手の力を利用する技を習得していると、更に武術の高みに行けるんだけどな・・・。

 まあ、仕方無いな、クーガーとサクラちゃんそして褒姒は、たっぷりと剣王『カイエン』様と拳王『ダルマ』様から指導を受けると良いよ。

 その間に、僕はアーガマで『日の本諸島』の用を済ませに行ってくるよ。

 その間の一週間、徹底的に扱かれて成果を上げたら、僕と対戦出来る資格有りと認めるよ!」

 

 その僕の言葉に、何とも言えない顔をしていた皆は、他の門下生達と共に鍛錬する為に剣王『カイエン』様と拳王『ダルマ』様に連れて行かれた。

 

 一週間もあれば、流石に自分の問題点を洗い出せると願うよ。

 

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