拳王『ダルマ』様は僕の状態を確認し、充分大丈夫と判断し稽古試合をする事にする。
僕は、改めてクーガーと褒姒達それに3兄弟に言葉を掛ける。
「先程の剣王『カイエン』様との試合は、スピードの極限を見せれたけど、今度はその逆のスピードとは別の駆け引きを見せようと思う。
至近距離での勝負を見てくれ!
それではダルマ様お願いします!」
「良し! 私も久々に幾つかの技を、お見せしようではないか!」
と太い笑みをこぼしながら頷かれた。
審判役となった剣王『カイエン』様が、合図を出した。
「始め!」
そのまま、僕と拳王『ダルマ』様はゆっくりと歩み寄り、双方地面に腰を降ろす。
本来の立ち会いでは有り得ない、地面に座ると云う行為、しかし敢えて僕達はその常識を破る。
但し双方の座り方は違う、拳王『ダルマ』様は『結跏趺坐』と云う座り方で、僕は正座と云う座り方だ。
いや、正座とは若干違うな。
膝は完全に折りたたんでいるが、足指は本来の正座と違い立てていて、所謂爪先立ちをしている。
周囲の門下生達は、とてもこれから格闘技をする様に見えない、双方の体勢に違和感しか感じないらしく、どよめいている。
しかし、この体勢こそが今回の皆に見せる技の体勢だ。
僅か1メートル程の間合いは、完全に双方の攻撃距離なので、いきなり拳王『ダルマ』様の右腕が、容赦無く頭上から振り落とされて来て、僕はその攻撃を足指の動きだけで拳王『ダルマ』様の懐に飛び込むと、そのまま右腕を抱え込み一本背負いの体勢に移行した。
その意図を挫くべく、拳王『ダルマ』様は右腕の勢いを縦では無く、横に切り替えるとそのままラリアット風に振り回した。
その勢いを利用し、拳王『ダルマ』様は右腕の勢いを加速させる為に、裏側から両手で押しながらそのまま逆関節を極めて、拳王『ダルマ』様を投げた!
「ヌワッ!」
と呻いた拳王『ダルマ』様は、前方にひっくり返る様にして僕の技を躱したが、僕の攻撃は終わらない。
そのまま巻き付く様に右腕を絡め取ると、関節を極めに行く。
『腕拉ぎ十字固め』そう言われる技に入る瞬間、拳王『ダルマ』様は腕を強引に畳み、肘を僕の胸骨に押し当てて地面に叩き付けた!
「グハッ!」
と僕は肺に溜まっていた空気吐き出させられたが、その前のめりになった体勢は、僕の狙い通りだ!
一気に足を伸ばし、拳王『ダルマ』様のその太い首に巻き付かせ、所謂『三角絞め』に持ち込んだ。
だが、完全に極める事が出来なかった、拳王『ダルマ』様は左腕を両脚の間に割り込ませて、そのまま僕の片脚を掴むと地面に叩き付けて来た。
その投げて来た腕の付け根に、持たれていない足の蹴りを喰らわせ、手を離させる。
そしてまた先程と同じ、変形の正座の姿勢となる。
それに対して今度も拳王『ダルマ』様は、元の結跏趺坐の姿勢に戻し受ける構えを取る。
双方共に受けの体勢を取っているが、不用意に攻撃を仕掛けると返し技を繰り出されるのは、先程の技の応酬で双方共に判っている。
しかし、それならば挑戦者の立場である僕が仕掛けるのが筋だろう。
「其れでは仕掛けます、御留流『御式内(おしきうち)』が技の一つ、『車倒迎突』!」
そう宣言して、僕は横回転して肘打ちを拳王『ダルマ』様の顎に放つ!
当然その肘打ちは簡単に避けられ、拳王『ダルマ』様は体勢の崩れた僕を抱え込もうとして来た。
その動きに合わせ、僕は新たな『御式内(おしきうち)』の技を放った。
《一本捕をダミーに四方投げ(影)を仕掛ける》
拳王『ダルマ』様が僕を抱え込もうとして来た腕をスルリと避けて、腕の逆関節を取ると一本捕の体勢に移ろうとしたが、それに対応して素早く腕を素早く引き抜いた拳王『ダルマ』様の動きを利用した。
鋭く拳王『ダルマ』様の右手首を捉えると、腰を切って右手首を両手で挟み込み、剣を振り下ろす様に一気に投げる!
その僕の技に対して一切逆らう事をせずに、拳王『ダルマ』様は両足で地面を蹴って、後方宙返りして僕をその勢いを活かした形で、膝を僕の背中に押し当てると固め技の『片羽千鳥』で極められた。
「参りました、降参です!」
僕の降参宣言を受けて、剣王『カイエン』様は直ぐに僕の負けを認め、僕と拳王『ダルマ』様は互いに礼をして試合を終えた。
「どうだい、みんな今の試合で何か掴めたかな?」
との僕の問いに、皆は良く判らなかったらしいが、何となく高度な技の応酬だった事だけは判った様で、溜息を漏らしている。
「うーん、難しかったかな? こういった関節を取ったやり取りや、相手の力を利用する技を習得していると、更に武術の高みに行けるんだけどな・・・。
まあ、仕方無いな、クーガーとサクラちゃんそして褒姒は、たっぷりと剣王『カイエン』様と拳王『ダルマ』様から指導を受けると良いよ。
その間に、僕はアーガマで『日の本諸島』の用を済ませに行ってくるよ。
その間の一週間、徹底的に扱かれて成果を上げたら、僕と対戦出来る資格有りと認めるよ!」
その僕の言葉に、何とも言えない顔をしていた皆は、他の門下生達と共に鍛錬する為に剣王『カイエン』様と拳王『ダルマ』様に連れて行かれた。
一週間もあれば、流石に自分の問題点を洗い出せると願うよ。