皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第一章 第44話

 「・・・此れが、『葛城山の大穴』か・・・。」

 

 壊滅してしまって、一度平坦に地均しした元の大和朝廷の都、『平城京』に程近い葛城山の中腹に開いている大穴が、『葛城山の大穴』と呼ばれる、ひっきりなしに魔物が出現する魔物多出ポイントである。

 

 此処は、帝国軍が『八岐の大蛇』を滅ばしてから暫くして、大穴が開くと同時に大挙して魔物が現れた、災害地と呼んで良い場所だ。

 然も、かなりのレベルの魔物が出現するので、近隣には民を住まわせることが出来ず、魔石工場と魔物の肉体を肥料にする為の、処理工場が葛城山の麓に造られて、此処は『魔石』と『肥料』を無限に産出する、『日の本諸島』の一大拠点になっている。

 

 そんな事を思い返していると、『源頼光』様が一族の男達を引き連れて現れた。

 

 「どうです、魔物処理大分自動化されたので、魔物の被害がほぼ無くなりました。

 まあ、今でも一定以上のレベルを越えた魔物は、我等『武士』か、『陰陽師』の方々の式神が処理するしか有りませんが、それも熟れて来て『武士』が怪我をする頻度も減りましたよ!」

 

 と『源頼光』様の説明を受けながら、僕とテオさんは様々な魔導装置を観察して行く。

 

 『葛城山の大穴』は峻険な山肌の中腹に有るので、魔物は飛行タイプで無ければ容赦無く麓に造成された円形の処理場に落ちて行く。

 

 その落ちて行く最中から、円形の処理場の外枠に取り付けられた『魔導砲』から、様々な魔法が魔物達に砲撃される。

 此の様々な魔法により、ある魔法には耐性があるが、他の魔法には弱い等の理由で殆どの魔物は、魔石を専門に抜く『ボット』が倒れた魔物から魔石を抜かれ、そのままボットが操るブルドーザーで魔物の肉体を肥料にする処理工場に続く、ライン上のベルトコンベアに落とされて行く。

 

 時々出現する、飛行タイプの魔物も、葛城山全体を覆う形で展開している、天蓋状のバリアーが邪魔しているので、飛行タイプの魔物は此の一帯から逃げ出す事は不可能に近い。

 

 ただ、どの様な完璧に見えるシステムも、規格外の強さや頑丈さを持つ魔物の個体では、些か処理に手間取ってしまう。

 

 その時に初めて、手練の武士や陰陽師の式神が働く出番だ。

 

 先ずは、手練の武士が魔法で強化された弓矢や、魔導ライフルで飛行タイプの魔物は撃ち落とし、円形の処理場に落ちた段階で、『陰陽師』の方々の式神が強靭な魔物を抑え込み、パワードスーツに乗った武士が狩って行くのである。

 

 丁度、僕が見ていると3匹の『牛鬼』が、『魔導砲』の攻撃に耐えきって、周りの魔物を蹴散らし始めている。

 

 その様子を見て、『源頼光』様が一族の男達の中に居た一人の人物が、名乗り出てきた。

 

 「我こそは、『八幡太郎(はちまんたろう)義家』なり、『牛鬼』よ我が矢を受けてみよ!」

 

 との堂々たる名乗りを上げたのは、信じ難い程の太さを持つ弓を軽々と片手で持つ、僕より5歳程上の17歳くらいと思われる若者であった。

 

 そしてそのまるで丸太の様な弓につがえた矢は、とても矢と云う範疇に無い代物で、槍よりも尚太いまるで杭の様な矢だ!

 

 人間がとても引ける筈の無い、その弓矢をいとも簡単に引き絞ると、雷撃の魔法をその先端の鏃に込めて、狙いを付けて若者は放った!

 

 「ドゴッ!」

 

 とても矢が立てる音とは異質な衝撃音を残して、『牛鬼』の脳天を貫いた矢は雷撃の魔法を放って、『牛鬼』の内部を雷撃で硬直させると、そのままぶっ倒した。

 

 他の2匹の『牛鬼』は、巨大な2匹の鬼の式神に抑えられ身動きが取れない中、かなり細い身体を持つパワードスーツが、非常に軽やかな動きで『牛鬼』の急所と思われる目やこめかみ部分、そして眉間に近接武器のパイルバンカーを使用して貫いて行く。

 

 「大変見事ですね! 『八幡太郎(はちまんたろう)義家』殿の弓術にも驚きましたが、巨大な2匹の鬼の式神を見事に使役する陰陽師の魔力の制御力! そしてあの細身のパワードスーツをまるで格闘技に優れた人間の様に動かす操縦技能! 此の『日の本諸島』には大変優れた人物が居られる様ですね!」

 

 「此れは、大変有り難い称賛の言葉を頂きまして恐縮です。 是非、此の3人を紹介致したいので、連れてきて宜しいでしょうか?」

 

 と僕の言葉に、答えてくれた『源頼光』様の願いに僕が頷くと、嬉しそうに頷き返し近くに居た処理場の職員に『八幡太郎(はちまんたろう)義家』殿以外の2人を呼んでこさせた。

 

 そして僕の前に、3人の若者が片膝を着いて並んだ。

 

 『源頼光』様はやけに嬉しそうに、目の前に並んだ3人の若者を紹介し始めた。

 

 「左に居りますのが、先程名乗りを上げたのでご存知でしょうが、私の甥に当たる『源義家』と申す者で、通称は八幡太郎(はちまんたろう)と言われて居ります。

 見ての通り、弓術に優れていまして、来年からは『世界武道大会』の弓術部門に参加するべく、日々精進しております!」

 

 その紹介を聞いて、僕はさもありなんと、改めて『八幡太郎(はちまんたろう)義家』殿を称賛した。

 

 「見事な弓術の腕前! 是非来年は帝都コリントに出向いて貰い、強豪達と弓術の腕を競って下さい!」

 

 すると、その勇壮な出で立ちに不釣り合いな、はにかんだ感じで頬を紅潮させて『八幡太郎(はちまんたろう)義家』殿は深く頭を下げられた。

 

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