「凄かったです、アポロ皇子!」
意識の戻った『源 義経』殿は、食い気味に僕に迫って来て、自身を打ちのめした技の事を聞いて来た。
だけど、『神音(カノン)』はシャロン母様が父様に追いつく為に、父様が学んだ『地球』とは別の惑星の武術の秘技や奥義を研究しそして編み出した奥義なので、僕がシャロン母様の許可無く教える訳にはいかない。
それに、そもそも空気を足場に蹴る事が出来なければ、成立しない技である。
「・・・『源 義経』殿申し訳無いが、貴方に懇切丁寧に技を教える事は僕には出来ないんだ。
だけど、技名は教えて上げられるよ。
技名は『神音(カノン)』!
その昔、或る格闘技のみで武力を司る国家が有った。
その国の武門の一派に、特に蹴りを得意とする若者が居て、ある戦争の折に敵の大将との決戦時にトドメとして使用した必殺の奥義なのだ!
当然、『源 義経』殿に喰らわせた技は格段に手加減した物で、本気で使用した場合貴方は四散していた筈だ。
敢えて貴方に使用した訳は、『源 義経』殿ならば独自の修練で、此の秘奥義を習得出来ると考えたからです。
どうか、修練に継ぐ修練を重ねて、会得してください!」
と僕が『源 義経』殿に伝えると、
「・・・『神音(カノン)』・・・!」
『源 義経』殿は身震いしながら呟き、目を閉じた。
そしていきなり、ブツブツと口ずさみながら物思いに耽り始めたのだ。
恐らく、自分が喰らった技の内容を反芻しながら、再現してみようと己の考えに沈んだのだろう。
僕は、その状態の『源 義経』殿を邪魔しないように、病院を出て『平安京』の迎賓館にリムジンで向かった。
リムジンには、テオさんと『安倍 晴明(あべ の はるあきら )』殿が乗っていて、先程の僕と『源 義経』殿の試合内容を話題にして来た。
「アポロ皇子! 貴方があそこまで本気で闘うとは驚きましたよ。
私が貴方の本気を見るのは、3年前のセリーナ様との剣術練習で、お互いに高め合い過ぎて引っ込みがつかなくなり、百本試合をしてしまって、アラン様とシャロン様が間に入って漸く終わった時以来ですよ!」
と思い出しながらテオさんに言われ、僕はあの時を思い出し苦笑してしまった。
あの時は、セリーナ母様が日頃の軍事資料の書類作成が煩雑過ぎて、とてもストレスが溜まりその鬱憤晴らしに、僕が付き合ってあげてたんだけど、セリーナ母様が想定してたより僕の習得レベルが上がっていた様で、様々な奥義を僕に対して試し始め、それが徐々にエスカレートしてしまい、最終的に奥義まで使い始めたので、僕も全力で応じなければ大怪我をしてしまい兼ねなかったから、思わず本気のぶつけ合いになったのだ。
普通、家族で本気の試合なんてしないよなと思い出し、苦笑を深めていると、
「それにしても、先程の闘いでのアポロ皇子が練る、『循環魔法』の微細な緻密さは、見事としか言い様が無いですね。
対戦相手の『源 義経』殿がもしかすると、『循環魔法』の使用者としては同年代で最高だと思ってましたが、アポロ皇子と比べると粗が目立ちました。
僕も式神の扱い方には自信が有りますが、身体能力を底上げする『循環魔法』には自信が有りません。
是非、御指南頂きたいと願います!」
そんな申し入れを『安倍 晴明(あべ の はるあきら )』殿から受けたので、僕は『源 義経』殿と同時に教授したいと思い、明日『源 義経』殿が退院したら僕の所に来て下さいと答えた。
「有難うございます!」
と『安倍 晴明(あべ の はるあきら )』殿は、その色白の面を輝かせ僕に礼を述べて来た。
その後、僕は『日の本諸島』に居る間、迎賓館に逗留して色々と公式行事を熟しながら、僕と同世代の学生や若い官僚そして武人との交流を深めていった。
特に、『源 義経』殿と『安倍 晴明(あべ の はるあきら )』殿は僕が教授する魔力を効率的に扱う技術、そして魔法の新技術の開拓がどの様に進んでいるかを共に論じ合い、仲良くする事が出来た。
帝国首都の帝都コリントでの再会を誓って、僕はアーガマに乗って崑崙皇国への帰路に着いた。
テオさんは僕と共に、夕焼けに映える海を見ながら、『日の本諸島』で好きになった『ほうじ茶』を喫して、その美しさを愛でて寛いでいた。
「中々有意義な旅でしたな」
そう言いながらお茶請けの、『日の本諸島』の名物である『水羊羹』を匙で口に運ぶ。
「そうですね、今後も『日の本諸島』は、帝国にとってもセリース大陸にとっても、重要な地域となって行くでしょう。
それに『源 義経』殿と『安倍 晴明(あべ の はるあきら )』殿を始め、若手の躍進は非常に有り難いです」
「でしょうね、アポロ皇子の代での有能な廷臣が増えるのは、私としても有り難いですよ。
アラン様にも有能な廷臣が多く居りますが、アラン様並の能力を持つ家臣は流石に居られないので、今でもアラン様自身が率先して各地を廻っているくらいですからね。
今回出会えた、『源 義経』殿と『安倍 晴明(あべ の はるあきら )』殿は素晴らしい人材です。
大切になさいます様に」
「勿論ですよ! 彼等は能力もさる事ながら、気持ちが通じ合う友人となってくれました。
帝都コリントで出会える日が楽しみです!」
そう会話して、僕は帰還する崑崙皇国の首都『南京』で猛特訓している筈の、親友達と褒姒達に思いを馳せた。