皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第一章 第48話

 「漸く帰って来たわね!」

 

 僕が帰って来た事を聞いたのか、空港に着地したばかりだと言うのに、空から褒姒がアーガマの甲板上に降り立った。

 

 仕方無いので僕が甲板上に迎えに行き、他の乗組員と崑崙皇国の空港職員に荷物の搬出を任せると、褒姒と一緒に空港のラウンジに行き、例の剣王『カイエン』様と拳王『ダルマ』様の一週間集中の猛特訓は、熟したのか聞いてみると、

 

 「勿論よ!」

 

 と踏ん反り返って、僕の問いに答えている。

 

 まあ、一週間前より体幹が出来ているから、少しは進歩した様だと納得した。

 

 「それより、後二週間すると僕等は中等部に上がるのに、用意は出来てるの?」

 

 「大丈夫よ! 崑崙皇国が帝都コリントに持っているドームの内、留学生用のドームの中に皇族用の邸宅を用意出来てるし、荷物は既に搬入済よ。

 いよいよ、もう少ししたらアポロと我は同級生ね!」

 

 「うーん、同学年にはなるだろうけど、同級生になるかどうかは判らないよ」

 

 「え、生徒の希望通りにはならないの?」

 

 「そんな処に、皇室の権力は使わないよ! 大体皇族や華族が権力を使って、一つのクラスに集中すると、折角の社会常識を一般生徒と触れ合う事で学ぶ機会が失われるので、帝国では推奨されていないんだよ!」

 

 「それだと、安全面で問題が有るんじゃない? 一つのクラスに集中させた方が効率良さそうだけど!」

 

 「全て、当然のリスクだよ。 大体、僕や褒姒を害せる存在なんて中々居ないし、そういった場合の対処方法も学ぶべきだよ!」

 

 「そんなものかしら?」

 

 と何だか、不機嫌そうに返事して来た褒姒は、僕がお土産に買ってきた『日の本諸島』のお菓子である、『栗ういろう』を楊枝に差しながら、ラウンジに用意されていた紅茶を飲みながら食べている。

 

 「其れで、同じ猛特訓を受けていた三兄弟と、崑崙皇国廷臣の方々の子弟も留学してくるの?」

 

 「ええ、小等部以外の中等部以上の物は、我と同時に留学する事になるわ!

 だから、我と同じ学年に留学する廷臣の子弟だけでも、約300人となるわね!」

 

 廷臣の子弟だけでその人数になるのか、やっぱり崑崙皇国クラスの大きな国だと多いな。

 崑崙皇国全土での、帝都コリントへの留学生だと10万単位になるんだろうな。

 

 「まあ、それならサクラちゃんとマリアちゃんとは同学年になるから、仲良く武術の修行に勤しんでね!

 後で挨拶がてら、剣王『カイエン』様と拳王『ダルマ』様に、週末だけでも帝都コリントでの褒姒達の修行の進捗具合を見に来てくれる様にお願いしてくるよ!」

 

 そう僕が言うと、何とも言えないような表情で僕から顔を背けた。

 大体予想した通りだな。 きっと今此処に来たのは一週間集中の猛特訓から、抜け出して来たのだろう。

 褒姒は、その恵まれた才能と膨大な魔力で、殆ど努力せずに何でも熟してきた経緯が有る。

 恐らく、地味で微細な魔力のコントロールや精神の修練は、苦手なのだろうと昔に褒姒と会った時から感じていた。

 その事を、『日の本諸島』に出向いた際に、褒姒が『殺生石』の関係で留学した際に、一時受け入れて教育していた、『安倍 晴明(あべ の はるあきら )』殿の師匠である『賀茂忠行』様からも伺っていた。

 

 此の褒姒の性格というか性質は、嗜める必要が有るな。

 

 そう、このままだと褒姒は上のレベルに武術と魔法で苦労する事になり、常に無理をする事になる。

 この事実は、本人もさることながら崑崙皇国にとっても、不幸な話しである。

 

 まあ、褒姒が他人の言う事を素直に聞くとは思えないので、褒姒が尊敬する賢聖モーガン様とセリーナ母様・シャロン母様に頼む事にしよう。

 

 そんな事を考えて空港のラウンジを出て、褒姒以外のメンバーが今も猛特訓しているであろう、剣王『カイエン』様の道場に車で向かう。

 

 案の定、親友達と三兄弟は凄まじい猛特訓の最中で、かなりボロボロの状態だ。

 だけど疲労著しい筈なのに、全員の顔は充実したものなのは、恐らく己の能力が基礎からレベルアップした事が判るのだろう。

 

 如何に辛い修行でも、自分が強くなって行く事実は嬉しいだろうな。

 まあ、一週間集中の猛特訓だけで本人が判るくらいレベルアップさせるとは、剣王『カイエン』様と拳王『ダルマ』様の修行は、的確だったのだろうな。

 そういった思いを抱きながら、全員の修行を監督している剣王『カイエン』様と拳王『ダルマ』様に歩み寄って声を掛けた。

 

 「剣王『カイエン』様に拳王『ダルマ』様! どうも有り難う御座います!

 みんな、格段のレベルアップしていて目を見張る程ですよ」

 

 「いや、此れは我等の師匠である剣聖と拳聖が、本来しなければならない指導を肩代わりしただけだよ!」

 

 「真にその通り! 全く我等が師匠ながら弟子への指導よりも、己の修行に明け暮れるとは、如何に身体が若返ったとは云え、師匠である自覚が無さすぎるな」

 

 僕の謝意を受けながら、剣王『カイエン』様と拳王『ダルマ』様は、己の師匠である剣聖と拳聖の無責任さに憤慨していた。

 

 その事実を踏まえて、僕は剣聖と拳聖の代わりに帝都コリントでの彼等の修行状況を、週末だけでも見てもらいたいと依頼し、快く受諾してもらった。

 

 だが、やはり褒姒の修行を見るのは難しいと言われ、その点は僕が考えると返答して置いた。

 

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