皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第一章 第49話

 崑崙皇国での目的を全て終えた僕達は、褒姒達に別れを告げて『龍脈門(レイライン・ゲート)』を通り帝都コリントに帰還した。

 

 アーガマを帝国の港湾ドックに入港させ、此れまでの航路での問題点や、『龍脈門(レイライン・ゲート)』を通った時のエンジンへの影響等を調べる事となる。

 

 諸々の手続きを終えて、親友達を各家に送り届けてから、我が家のアスガルド城に向かう。

 1ヶ月程の旅だったが、内容の濃い1ヶ月間だっただけに、半年程留守にしていたかの様な錯覚に囚われる。

 まあ、明日になればそんな感傷はなくなるんだろうけど。

 

 アスガルド城に着いて、皇子宮の直通ルートを車で通って家族の元に向かうと、途中の運動場から目敏く僕を見つけた弟のルー君が走ってきて、僕の乗っている車と並走して来たので、窓を開けて挨拶した。

 

 「ルー君、只今帰ったよ! お土産が有るから一緒に皇子宮に向かおうか」

 

 「兄ちゃん、お帰りなさい! じゃあ先に帰って着替えて来るよ!」

 

 とルー君は返事すると、一気に加速してそのままの勢いで、自分の部屋の有る3階ベランダに跳躍し、スルリといった感じで自室に滑り込んだ。

 

 《大分、身体能力に磨きが掛かったな》

 

 お行儀は悪いかも知れないけど、弟の見事な身体術を見ると、しっかりと努力しているのが見て取れた。

 

 皇子宮の玄関口に着くと、30名程の職員が並んで出迎えてくれたので、様々なお土産と諸々の資料を運んで貰う様に指示して、僕は自分の私物と相棒の星猫アルの両親へのお土産を置きに、自室に向かった。

 

 「処でアルは、何時アルの両親にお土産を渡すんだい?」

 

 「ちょっと休んだら、兄弟達と一緒に行ってくるつもりだよ!

 親父(ケットシー128世)が熱望していた『日の本諸島』特産の、天然物のマタタビエキス入りの薬用酒(マタタビ酒)だから、一刻も早く届けないと嫌味を言われそうなんだよ!」

 

 と慨嘆しながら返事したので、思わず、

 

 「お疲れさんだね!」

 

 と労って、僕はアスガルド城での室内着に着替え、家族と親しい友人との憩いの場であるラウンジに向かう。

 

 丁度時間は、午後3時のティータイムを迎えたので、クレリア母様とセリーナ・シャロン母様達が、女子会メンバーの数人と寛いでいた。

 

 「お母様方、只今アポロニウスはアーガマの試用航空を終え、帝都コリントに帰還致しました!

 毎日の報告は、モニター越しに致していましたが、全ての報告書は纏めて他の資料と共に、父様の資料室に送って置きましたので、後で御確認下さい!」

 

 と僕が申告すると、クレリア母様とセリーナ・シャロン母様達は僕に向き直り、代表してクレリア母様が、

 

 「お帰りなさい、アポロ! 家族全員でアポロの旅路の状況と各国の公式行事の様子を見ていたのよ。

 きっと貴方の事だから、報告には上がっていない様々な出来事が有ったのでしょう?

 差し障りの無い範囲で、女子会の方々に喋ってくれないかしら?」

 

 「良いですよ、其れでは崑崙皇国の大浴場施設『極楽湯』の話しでも致しましょうか!」

 

 そんなこんなで、かなり女性陣が好きそうな美容に役立つ温泉の話しをしていると、弟のルー君がテオさんと一緒に、沢山のお菓子と飲み物をワゴンで押しながらラウンジにやって来た。

 どうやら、僕のお土産のお菓子と珍しい飲み物を、ありったけワゴンに載せて来たようで、ワゴンから零れそうだ。

 

 クレリア母様とセリーナ・シャロン母様達、そして女子会メンバーの数人は、日持ちしそうに無い『日の本諸島』の果物を選ぶと、崑崙皇国の飲茶に供されるお茶を飲むことにしたようで、僕が果物の説明とその食べ方、そしてお土産として持って帰って下さいと話すと、とても喜んでくれて帰って行った。

 

 ラウンジに残った僕達家族は、近況の確認をしていったんだけど、その中でも一番驚いたのが、セラスとシェリスの妹達が、夏休み中ずっと礼儀作法の訓練の為に華道と茶道の家元に通っていると言われた事だ。

 

 「どうして突然そんな事になってるんです?」

 

 と二人の母親である、セリーナ・シャロン母様達に聞くと、憤然としてセリーナ母様は僕に教えてくれて、シャロン母様は困った感じで説明してくれた。

 

 「あの娘達は、事もあろうにルミナス教ドームに行って、奉仕活動の清掃活動の際に『女神ルミナス』立像の洗い流しという物が有ったんだけど、巫山戯て箒で遊んでいた信者の一部の子供と一緒に遊び始め、『女神ルミナス』立像の両腕を折ってしまったのよ!」

 

 「なので、改めて淑女の嗜みたる華道と茶道を叩き込まれてるんだけど、何か理由が無いと、流石のあの娘達でもこんな暴挙には出ないと思うんだけど、頑なにその場で起こったことを二人共喋らないのよね」

 

 そう、お二方が言って来たので、もしかすると母親には言えない理由が有るのだろうと当たりを付けて、僕は二人が帰って来たら、子供達だけで相談してみようと思い、弟のルー君に目配せしてアイコンタクトでの意思伝達を行い、幾つかの想定を思考した。

 

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