「兄ちゃん、という訳なのよ!」
「兄様、という訳なのです!」
妹達二人、セラスとシェリスは、僕にそう言って僕へ報告を終わらせた。
大体理解したが、一部の古株信者の子供達が、どうやら新入の信者の子供達をいじめてたらしい。
つまり妹達二人は、いじめられていた信者の子供達をかばったのだが、その時にやりすぎてしまい、『女神ルミナス』立像の両腕を折ってしまったようだ。
《・・・ふ~む、そんな対立が有ったとは知らなかったな・・・。》
ただ、妹達からの一方的な話しでは判断がつかないので、僕は弟のルー君と相談し翌日ルミナス教ドームに向かった。
但し、ワザワザ皇子達が来ると予め知らせると、しっかりとした裏付ける情報が取れない。
なので、光学迷彩スーツと変装用の幻術マスク(サスケから借りた)を付けて向かった。
ルミナス教ドームのゲートでは、光学迷彩スーツで潜り抜け出来ないので、幻術マスクとダミーカード(こういった場合用の予備カード)を使用して入り、中では光学迷彩スーツを使用するつもりだ。
想定通り、僕とルー君はアッサリとルミナス教ドームのゲートを抜けて、トイレで光学迷彩スーツに着替えて、妹達から聞いた信者の子供達のコミュニティーに向かった。
すんなりと信者の子供達が居るエリアに行くと、丁度大勢の子供達がドッジボールを楽しんでいる。
暫く見ていると、ある状況が見えて来た。
明らかに、服装が整っている子供達の運動能力が、服装の見窄らしい子供達より良くて、必然的に一方的な形で服装が整っている子供達のチームが勝利して行った。
すると、どうしても勝ちたいのか服装の見窄らしい子供達のチームは、ルールを逸脱して反則行動で勝とうとしたので、其れを指摘して来た服装が整っている子供達との間で諍いになっていた。
その様子を伺いながら、周りの子供達の呟く子供の言葉や、納めに来た信者の大人達の言葉を、僕とルー君は変装用の幻術マスクを使用して双方の信者の子供に似せて、理由や状況を聞いて廻って、どうやらこの諍いは常に起こっている事が大凡判った。
そして、ルミナス教ドーム内の食事処や、土産物屋等での聞き取りをしてから、僕の影に潜んでいたサスケに命じて、ルミナス教のNo.2である『ゲルトナー枢機卿』への面会を申し入れさせた。
流石に急な申し入れ過ぎたらしく、面会が適ったのは3時間後だったが、要望通り余人を交えない私室に通してもらい、今回の面会の来訪の挨拶を行った。
「いきなりの面会申し入れを、快く受け入れてくださり有り難う御座います、ゲルトナー枢機卿様!」
「いえいえ、此方こそお待たせして申し訳ありません。
常々、アポロニウス皇太子殿下には、ルミナス教へのご寄進と各国での教会の来訪を賜り、世界各地の宗教職員からの感謝の報告が来て居ります。
本当に有り難い事です!」
一通りの挨拶を済ませ、僕は今回の面会の論旨を語った。
「実は、以前ボランティアで僕の妹達が、此のルミナス教ドームでの清掃活動をしていた折に、諍いが生じたとの話しを聞きまして、真実はどうなのかと思いまして来訪させて頂きました。
ゲルトナー枢機卿様に置かれましては、心当たりは御座いませんか?」
との僕の問いに、『ゲルトナー枢機卿』は難しい顔をなさって、暫く黙った後に重い口を開いた。
「此の事は、何時かアラン皇帝陛下に進言するつもりだったのですが・・・。
実は最近になって、元西方教会圏の信者と元東方方教会圏の信者の間で、若干の諍いが有るのです。
凡そ、10年前のアラム聖国の崩壊により、西方教会圏と東方方教会圏の争いは終止符を打ち、新しい形での統合が図られたのですが、実際の所は仮の法王となられた『カルマ』殿が、一研究者となる事で法王の座から降りられて、西方教会圏のトップで在られた『ヨハネ教皇』が唯一の最上位者になってしまい、元東方方教会圏の信者にとっては、ただひたすら自分達の信仰が間違っていたかの様な思いに囚われてしまいました。
当然、我ら元西方教会圏の幹部は、其の様な受け止め方をせずに、折角、アラン皇帝陛下を祝福しに『女神ルミナス』様を始め神々が降臨されたので、新しい教義と神話を編纂し新しくルミナス教を改革しようとしていたのですが、此処でどうしようもない問題が起きました。
ルミナス教に於いての最高神で在られる『女神ルミナス』様が、直々に選ばれた『神人』たるアラン皇帝陛下が絶対的な正義で、それに背いたり反抗した者は絶対悪であるという認識です。
然も、此の認識は致し方ない話しですが、諸々の事実が証明してしまっていて、覆し様が無いのです。
そして、如何ともし難い話しなのですが、帝国は15年前からの『ナノム玉』の服用推進により、ほぼ100%の帝国民がナノムの恩恵を受けて居ります。
そして、その恩恵は生まれて来る子供にも影響が有ったのです。
アポロニウス皇太子殿下ご自身が証明なさってますが、幼児期もさる事ながら、成長していっても其の差は埋まらず、小等部に入学した際に必ず供与される『ナノム玉1』の服用でも、段階が1段階差が有る事が如実になってしまいます。
なので、親の世代で『ナノム玉』を服用していない者の多い、アラム共和国の子供達はどうしても、全ての面で帝国の子供と差が生まれてしまうのです。
その事が結局、未だ精神が成熟していない子供達の諍いという形で表面化してしまったのが、今回の事件なのです」
ゲルトナー枢機卿様の長い話しが終わったが、僕は何と返事して良いか言葉に詰まってしまった。
正直な処、客観的に見ても帝国は敗戦国の民を救うべく、様々な取り組みを施す事で、飢餓や貧困等の解消を志しその行為は、ほぼ成功したと言って良いだろう。
しかし、今回の事件は失われた過去をやり直せ無い以上、解決しようが無い。
僕は、仕方無く父様に報告する旨だけを告げて、アスガルド城に帰るしか無かった。