皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第一章 第51話

 「・・・そうか、其の様な問題に発展していたか・・・」

 

 「はい、此ればかりは、問題点を改善させる事は、殆ど不可能です・・・。

 過去を無いものには出来ませんし、体質改善と言っても一律にした処で、どうしても全員横並びにする事は出来ない以上、仕方が無い面が残ります」

 

 「・・・ふ~む・・・」

 

 その返答に父様はAR通信空間の中で腕組みして、暫くの間黙ってしまった。

 

 父様と賢聖モーガン様、そして賢王マリオン様は、多数の魔法科学研究所の研究員、そしてアトラス殿とグローリア殿を筆頭としたドラゴン軍団を連れて、静止軌道上で衛星群を繋ぎ合わせた『オービタルリング(静止軌道円環)』の基礎工事の真っ最中で有る。

 

 既に、『宇宙戦艦イーリス・コンラート』を核とした『宇宙ステーション』を基礎ブロックとした基地は完成しているので、其処を基点とした円環を此の惑星アレスを一周する形で造り上げるのだ。

 

 当然、空前絶後の工事なので時間と労力が凄まじく必要なのだが、アラム共和国に眠っていた遺産とされていた『宇宙船(艦名:第18宇宙艦隊所属コーラス級護衛艦コーラスⅢ)』が、『宇宙戦艦イーリス・コンラート』の莫大な動力によって、主エンジンが無事に稼働してくれたので、大きな作業を伴う場合は非常に役立っている。

 

 但し、『宇宙戦艦イーリス・コンラート』が建造される遥か以前の宇宙船なので、期待していたFTL通信を行う為の設備等は一切無かった。

 当然、リアクターも存在せず、動力は初期型の核融合エンジンが一基とその補助エンジンが有るだけだ。

 

 しかし、父様とセリーナ・シャロン母様達とイーリス様が当初考えていた、スケジュールスパンが大幅に短縮されて、更に上手く行けば月に残る『調整者』の遺産が使用できれば、恐らくは後10年以内にリアクターは建造出来る上に、外宇宙への進出も可能だろう。

 

 その様な惑星を越えたレベルの段階にまで来ているのに、こんな宗教上の過去のしがらみや、たかがみみっちい隣人との能力差等は、本当に馬鹿馬鹿しい話しだ。

 

 そんな風に、父様と僕は答えの無い袋小路の思考に因われていると、イーリス様がAR通信空間の中に顕現されて僕達の悩みへの提案をなされた。

 

 「こうなればある程度の真実を明かすべきでしょう!」

 

 そうイーリス様が父様と僕に告げて来たので、父様と僕は提案を吟味してみた。

 

 確かに、先程の僕の思いを汲み取った提案は一考の価値があった。

 

 何故なら、僕の思考が子供の其れでは無くなったのが、先ず最初に父様が僕が5歳の時に教えてくれた、父様とセリーナ・シャロン母様達は此の惑星アレスの人間では無くて、遥か彼方の星系からやって来た異邦人(エトランゼ)であると云う事実と、敵対者である『バグス』という存在、そしてその背後に居る『古きものどもの』の暗躍を知らされてからで、2回目が10歳になった時にイーリス様からの全ての情報の開示であった。

 それからの僕は、とてものんべんだらりと学生生活を送る気分になれず、常に思考は何時か合流した上で共に戦わねばならない友朋である、本当の意味での『人類銀河帝国』との連携と、次元を越えてやって来た『古きものどもの』の尖兵である『バグス』を、如何に倒すか?という点に絞られていたのだ。

 

 そういった意味で、僕にとっての衝撃だった真実をある程度だけでも全世界に開示すれば、こんな宗教上の過去のしがらみ等はあまりにも小さな悩みで、これからの世界にとっては不要なものであると周知出来るかも知れない。

 ただ、中々人の意識とは、為政者にとっては誘導し辛いもので、上手く導けるか疑問符が点いてしまう。

 

 そんな風に僕が推敲している中、父様が、

 

 「・・・ふむ、ある意味では問題を棚上げしてしまい時間を稼いで、徐々に世代を進ませる事で問題点そのものを、無くしてしまうという事か・・・。」

 

 父様の言葉から、僕は、

 

 《成る程、結局の処、文句を言っている世代は、此の10年間程の移行期間の世代なのだから、極端な話し此の世代以外の人々を、帝国民と同等に扱いナノムの差も改善して行けば、何れは問題点そのものが消えて行くだろう》

 

 と思い至った。

 

 では、どのレベルまで真実を全世界に公開するかと云う点だが、此れはある程度状況と真実を知っている者達と、しっかりとした討議を重ねて慎重に会議で図り、万全の体制で公開すべきだろう。

 

 しかし、いよいよ此の惑星アレスにとって、とても重要な事実がある程度とはいえ公開されると云う訳か・・・。

 

 今後此の惑星アレスの住民全ては、自分達だけが世界にとって唯一の霊長では無く、兄弟とも呼べる他惑星の住民が存在していて、然も帝国の皇帝その人が他惑星からの異邦人(エトランゼ)である事を知って行くのかと、僕は感慨深く思った。

 

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