やがて『ミネルヴァ』が、僕達が話して居る場所にやって来た。
まだ、幼いミネルヴァは周りのドラゴン達より明らかに小さいが、現在8メートルの巨体は僕達にとっては遥かに大きいから、人間用の台車に乗ってミネルヴァの顔近くに台部分を上げて貰った。
「久し振りだなミネルヴァ! 元気だったかい?」
と僕がミネルヴァの鼻を撫でてあげると、『ナノム・ネットワーク』を利用した会話で答えてくれた。
《私が、『南北アメリア大陸』に遠征して以来だから、かれこれ2ヶ月振りね!
あちらで、私は単独で様々な魔獣を倒して来たのよ。
然も、北アメリア大陸から一気に大西洋を飛び越えて帰還出来たのよ、成長したでしょう!》
とその大きなドラゴンの胸を反らし、彼女は大変得意気だ。
確かに彼女の年齢を考えると、例え最強の魔獣と言われるドラゴン種と言えど有り得ない成長だが、そもそも彼女の生まれた経緯や調整槽での強化を、賢聖様に教えて貰っているので当然とも言える。
「そのまま順調に、成長してくれ!
小等部に来年上がる僕達5人を、入学祝いに全員乗せて飛んでくれると云う約束は、必ず果たしてくれよ!」
「まっかせてよーーー!
みんなで、私の背に乗って世界一周旅行をする約束は、必ず果たすわよ!」
と応答してくれた。
それから、僕達4人とミネルヴァはアメリア大陸の話題と、拳聖様との修行の話題に花を咲かせ、夕方になったのでミネルヴァが持って返ってくれたお土産を受け取り、アスガルド城に帰る。
専用車両でアスガルド城に帰る途中、親友達が其れ其れの家に夕食をアスガルド城で摂る事を連絡させる。
折角のアメリア・バッファローのハンバーグをプレゼントすると言うと、僕のプレゼントを疑っていたサクラちゃんとマリアちゃんは手のひらを返して喜び、楽しい会話を広げていると、アスガルド城の父様の料理技術の直弟子であるシェフに料理して貰う話しになり、何時の間にかみんなで食事する事に決まったのである。
アスガルド城の食料搬入口に専用車両を向かわせ、シェフに直々に僕は会うと、アメリア・バッファローの肉を渡して、ハンバーグを作って貰いたい事と、僕の弟のルー君とケントの弟のマー君用に『ミートボール』を作って貰いたいと依頼した。
シェフは快く応じてくれて、アメリア・バッファローの『テールスープ』を作ってくれると約束してくれた。
親友達と皇子宮まで歩いていると、丁度高等部から帰って来た『エラ』さんと合流した。
「アポロニウス殿下並びに御学友の皆様、お久し振りです!
皆様お元気でしたか?」
と尋ねられたので、
「みんな元気でしたよ。
其れよりも、『世界武道大会』5年連続の学生演武部門優勝、おめでとうございます!」
「「「おめでとうございます!」」」
僕以外の親友達も、真剣に称賛する。
中でも、サクラちゃんとマリアちゃんの称賛する態度は凄いものが有る。
まあ、良く判るよ。
エラさんと兄上の『テオ』さんは、僕達幼子にとっては身近な憧れで、尊敬の対象だからな。
エラさんとテオさんの兄妹は、僕達の生まれる前から伝説となっている、『クラン・シャイニングスター』の僕と同じ5歳の時に初期メンバーで、子供ながらにクランの本拠地を父様から防衛する様に託されたり、『魔の大樹海』に入植した当初からクレリア母様の護衛をしたり、常にクレリア母様と女子会のメンバーの円滑化を図ったり、前述の通り武芸に於いては事実上同世代では世界一で、学業に於いてもあらゆる分野で引く手数多なのに、本人は一生涯、僕達皇帝一家に仕えたいと言い張るのである。
兄上のテオさんも、今現在、軍の士官学校に入っていて、妹と同じく5年連続の学生演武部門優勝を飾り、士官学校でも将来を嘱望されている英才だ。
父様としても、テオさんが卒業するタイミングに丁度創立する手筈の、『近衛護衛隊(ロイヤル・ガーディアン)』の初期メンバーにするつもりらしい。
まだ入学してはいないが、帝国どころか全世界の『学校』に於いて、半ば伝説の兄妹として有名なのだ。
サクラちゃんとマリアちゃんには憧憬の女性だし、アスガルド城に来ると時々会えるから頻繁に来たがるんだよね。
そんな憧憬の女性と同行しながら、僕達は皇子宮に向かうと、先客が待っていた。
「母ちゃんにマー君、早いな!」
とケントが驚いた声を上げたが、僕はある程度そうだろうなと予測していた。
なんたってケントの家はアスガルド城の眼の前だし、叔母さんの『カレン』さんはクレリア母様の女官にして女子会メンバーだ。
アスガルド城に勤務する職員にとっては、皇帝家に事実上最も親しい家柄で、全く疑う必要の無い人々だ。
きっとアッサリと入城したのだろう。
そんな野暮な事を考えてる間にも、僕の弟のルー君とケントの弟のマー君は、最近走れる様になったばかりだというのに、凄い速さで追いかけっこをしている。
二人もほぼ同時に、このアスガルド城で産まれた経緯が有って、殆ど双子の様な仲の良さだから、きっと僕達5人みたいに親友になるんだろうな。
そんな仲睦まじい弟達を眺めていると、続々と残りの親友達の家族が皇子宮に集合して来た。
さて、みんな楽しみのハンバーグパーティーの開催だ。