第二章 第1話
「兄ちゃん、この技を受けて見ろー!」
「兄様、この技をお受けなさいー!」
「兄貴、僕の技を喰らえー!」
三人三様の気迫の籠もった声を受けて、僕は三戦立ちして全ての攻撃を敢えて受けた。
早朝のアスガルド城皇子宮にある道場での朝練は、走り込みをグラウンドで終えた後ストレッチを熟し、道場に入り一連の型の練習を終えて、乱取りを熟してから最後に格上の相手に挑むのが恒例なのだが、昨日まではセリーナ母様かシャロン母様がしてくれていたのだが、中等部に上がったので今後は僕が毎朝3人の妹・弟の相手となる。
セラスは助走を付けた『流星脚』を僕の左側面に叩き込んで来て。
シェリスは、『水面蹴り』を僕の足元に掛けてきて。
ルーファスは、『正拳三段突き』を僕の正面からかましてきた。
セラスの『流星脚』は右腕で払い。
シェリスの『水面蹴り』は膝裏から僕の左足で掬い上げ。
ルーファスの『正拳三段突き』は3つ共、僕の左手で受け止めた。
そして3人に僕は父様から習い覚えたばかりの技の体勢に入った。
『雪崩払い』
相手の力を利用して姿勢を崩し、そのまま複数の敵同士を絡ませて行動不能にする技だ。
3人共に、諦めず次の攻撃を僕に繰り出して来たが、僕は準備の出来た『雪崩払い』で迎え撃つ!
セラスは、蜻蛉返りしながら勢いの付いた踵落としを仕掛けて来たので、蜻蛉返りの勢いを更に増すように背中を押してやる。
シェリスは、下段からの昇龍脚を放って来たが、その勢いを更に増すように腰を優しく蹴り上げて、上空に跳ね上げて、放物線を描きながらセラスに落下して行く。
ルーファスは、らしいと云うべきか、真っ正面からの前蹴りを放って来たので、横に捌きながらセラスの方向に向きを変えてやり、そのまますっ飛んで行かせる。
そうして力の方向を変えてやった妹達と弟は、体勢を立て直す事も出来ずに絡まりながら転んでいた。
まあ、習い覚えたばかりの技なので、慣れていないから怪我をさせずに絡ませるのが精一杯だった。
妹達と弟は、絡まってしまった手足を抜くのに四苦八苦していたが、上手く抜け出せなかぅたので僕が優しく引き抜かせてやった。
「兄ちゃん、今の技は例の『雪崩払い』なの?」
「兄様、習得出来たのですね!」
「兄貴に綺麗にいなされてしまったぜ!」
3人は、僕の『雪崩払い』が未完成にも関わらず、感銘を受けているようだ。
「・・・いや、まだまだだな・・・、本来なら手首か足首の返しだけで力の方向を変えて、なるべく省エネルギーで相手を無力化するのが、此の技の真骨頂だからまだまだ研鑽を重ねないとな!」
そう言いながら、兄弟全員でシャワールームに向かい、道着を籠に放り込み冷たい水でのシャワーを浴びた。
汗と汚れを落としてから、クレリア母様と一緒に朝食を摂る為に食堂に行き、出張中の父様と軍務の為に軍事ドームに泊まり込みしているセリーナ・シャロン母様達以外の家族で朝食を摂る。
「アポロ! 貴方は本日から中等部に入学するのだけど、例のアランが発表した事実と学習カリキュラムの変更を受けて、貴方は兎も角、他の生徒達は混乱著しいと思うわ。
くれぐれも、発言と行動には気をつけなさいよ」
とクレリア母様は僕に釘を刺して来た。
僕はそれに対して答えた。
「勿論です! 恐らく僕に質問が集中するでしょうが、何も知らないで通しますし、実際公開された情報以上は知りませんしね。
セラス・シェリス・ルーファスも、小等部で根掘り葉掘り聞かれるだろうが、知らないで通せよ!」
「「「ハイッ、そうします!」」」
と元気良く3人は答えて来たので、小等部は大丈夫そうだ。
やはり問題なのは、中等部だろう。
僕は今日の入学式で、新入生代表として挨拶文を読み上げる事になるのだが、若干文章内容を変えて読み上げる事にしている。
そんな事を考えながら、自室に戻り準備を整えて、サスケを呼び出した。
「サスケ、判っているだろうが、今日の入学式からの僕達への様々な動きを把握する為に、例の新型ドローンを光学迷彩を常時稼働させて情報リンクをさせておけ。
そしてその範囲は僕達皇族だけでなく、僕の交友関係全般としろ!」
「ハッ、了解であります! 既にマザードローンと新型ドローンのリンク、更に中央情報局を本部とした情報共有は、アラン皇帝陛下の指示がありますのでそれに従って居ります!
ですが、アポロ様のご命令が私の最優先事項なので、当然私はアポロ様のご命令に従い、アポロ様の交友関係全般に対する、あらゆる情報を共有させます!」
「嗚呼、宜しく頼むよ!」
と僕は事前準備を整えて、アスガルド城から中等部へ向かう為に、最近の練習がてらの幻術を常時発動させた飛翔魔法で、近所のケントの家まで飛んで行った。