「凄い風景だな~!」
スターヴェーク公国公都に魔導列車でやって来て僕と友人達は、遥か宇宙まで届いている軌道エレベーターを見上げていると、『源義経』殿が溜息の様に独り言ちてきて、その言葉は僕を含め全員の心の言葉だと思う。
「さあ、皆さん此方へどうぞ!」
と言いながらホルガー伯爵が僕達を、スターヴェーク公国歴史資料館で出迎えて案内してくれる。
此のスターヴェーク公国の代表は当然公王たるクレリア母様なのだが、帝国皇妃でもあるので帝都コリントに常駐するのは当たり前の為、ロベルト老が一応預かる形になっていて、その補助をホルガー伯爵が行っているのだが、実質はこのホルガー伯爵こそが公都を統括している。
「有り難う、ホルガー伯爵。 だが伯爵自ら案内する必要は無いぞ!」
「いえ、私が案内したいのですよ! 敬愛するアラン陛下とクレリア殿下の御子息にして、将来のスターヴェーク公国公王にしてスターヴァイン王家の正統後継者たるアポロニウス皇太子殿下を、本来の領国に迎えられる事は常に我が喜びなのです!」
と僕が言うと、満面に喜びを表現した様子で僕達の前を歩きながら、ホルガー伯爵は歴史資料館の展示室を案内して行く。
僕が生まれる前の歴史展示物を説明して行く内に、帝国成立前の苦難の時代の資料の所でホルガー伯爵は足を止めて、詳細な説明を始めた。
「・・・諸々のアロイス王国による悪辣な企みによって、スターヴェーク王国は王城が失陥し我等ルドヴィークから離脱した騎士達は、8方向に分かれて囮となり『クレリア・スターヴァイン』王女を逃すことに成功しました。
その際に私は、ベルタ王国に救援依頼を出す為に、ベルタ王国貴族に接触を図ったのですが、奸臣ヴィリス・バールケに握り潰されて、エルナ・ノリアン殿を残して捕まってしまいました。
そんな不甲斐ない我々を、アラン皇帝陛下は己の叙爵という大事なイベントが控えていたのに、助け出してくれました。
其処からは、我々含むスターヴェーク王国の遺臣を中心に、様々な戦乱を戦い抜き帝国の基礎を作り上げました。
そして憎むべき怨敵のアロイス王国を倒し、アラム聖国の侵攻を退けて帝国は正式に成立しました。
その後も小規模の人間の争いを越えて西方教会圏は、平らかに収まりましたが、スラブ連邦・旧崑崙皇国首脳部・アラム聖国を操っていた、『古きものども』の暗躍と力による侵略に対し、アラン皇帝陛下は帝国と同盟国を率いて、敢然と立ち向かい勝利致しました。
私と同僚達は、此の壮挙を共に歩み力を尽くしてお仕え出来た事に、真に感謝しております!
しかし、寄る年波によって軍人として働く事が出来なくなりました。
ですが、後方からの支援や統治作業への助力は、まだまだ出来ます。
アポロニウス皇太子殿下とご友人方! 先日のアラン皇帝陛下の情報開示によって、貴方方の戦うべき相手は『古きものども』の尖兵たる『バグス』だという事が判り、然も戦場は大地の上でなく宇宙空間だと表明されました。
私達ロートルの世代は、新たな戦場である宇宙空間へのお供は、とても出来ませんが、アポロニウス皇太子殿下とご友人方の新たな世代の方々ならば、星の海での戦いも率先して先陣を切って戦い抜いてくれるものと信じて居ります。
どうか、アポロニウス皇太子殿下とご友人方の頭上に『女神ルミナス』様の恩寵と、『戦神アラミス』様の武運が輝きます様に・・・。」
と最後は神々に祈りながら、ホルガー伯爵の歴史資料館案内を終えて、僕たちは専用リムジンに分乗して公都スターヴェークの公城に向かった。
車内でクーガーが、感動した様子で僕と親友達に話しかけて来た。
「オイラは、アラム共和国の田舎者な所為で、帝国がどんな風に世界に平和を齎したか、教科書の文章では学びましたが、実際に戦い抜いた人の生の声は、始めて聞きましたので、とても実感が籠もっていて本当に感動しました!
12年前の大戦は、本当に凄かったんですね!」
「そうだよ! 今僕達が平和を享受出来ているのは、さっき会ったホルガー伯爵やその同僚達が、父様と母様達を支える事で成し得たお陰なんだ。
だから、僕達若い世代は彼等の献身と努力を決して忘れない様に、歴史の授業や様々な資料には目を通す様にしているよ。
クーガーも、教科書だけでなく例の連続ドラマシリーズ、『人類銀河帝国物語』を、外伝含めて観て貰いたいな!」
「了解です、アポロ様!
ただあまりにも膨大な大河ドラマらしいいんで、今の詰め込み催眠学習を終えたら魅せて貰いますね!」
その返事に僕は頷くと、現在ロンの両親が編纂しているらしい、父様とセリーナ・シャロン母様達そしてイーリス様の、『人類銀河帝国物語』前史がどの様な内容に成るのかに思いを馳せた。