僕達は、外壁に有るカーゴタイプの乗り物に乗り、軌道エレベーターの基部から中継基地まで5キロメートルの高さまで、上昇して行った。
「凄く高いな! 地表の建物が豆粒の様だ!」
硬化テクタイトで出来た、透明でありながら凄まじく硬いカーゴタイプの乗り物は、かなりの速度で登り続けて中継基地に達して、内部に引き込まれた。
そして内部に有るカーボンナノチューブ状の巨大な管の中に運ばれ、幾つものカーゴタイプの乗り物を搭載すると、往還船タイプのシャトルは直接龍脈から汲み上げた魔力の川に乗って一定速度で上昇するケーブルにアンカーを掛けて、他の物資運搬用のカーゴと一緒に、動力に一切頼らずに静止軌道衛星まで運ばれて行く。
凡そ5時間の上昇中はあまりする事も無いので、シャトル内の席に固定されながら、軌道エレベーターと『宇宙ステーション』の説明を、備え付けられたモニターに動画と資料のスライドショーで学ぶ事になった。
『軌道エレベーター』
本来、地上から宇宙空間にまで到達するには、化学ロケットという方式で燃料として過塩素酸塩を含有する固体燃料や非対称ジメチルヒドラジンなどを使用するしか無いのだが、燃料そのものが有害物質なので
父様はその方式を最初から認可せず、此の惑星アレスを巡らす膨大な龍脈を流れる魔力を循環させる事で、一切消費しない方法で巨大な宇宙空間までの物流システムを構築した。
此の軌道エレベーター内の移動速度は一定では無く、中間部分で最高速度に達するがシャトルの船内では、常に1Gで推移するように魔法処置が行われている。
『宇宙ステーション』
大破した『宇宙戦艦イーリス・コンラート』を基礎として構築された宇宙構造物。
不慮の攻撃により艦橋、機関セクション、第一コールドスリープ、第二コールドスリープ、通信セクション、格納庫セクションを失ったため、航行能力・FTL通信機能は喪失、主砲・副砲も使用不能になっていた。
なので、現在は補助エンジンによる姿勢制御、トラクタービーム、魚雷等が使用可能。動力は太陽光発電により賄っている。
幸い惑星アレスには静止軌道上に、神々(調整者)の残してくれた資源衛星が存在し、更に地上から引き上げた元サイヤン帝国所属の宇宙船『コーラス級護衛艦コーラスⅢ』と、細かい作業を量産型宇宙機動服『雷電改』を装着したドラゴン部隊により、加速度的に工期が短縮されている。
内部構造は、資源の大量供給により補給が行われ、従来の10倍の大量な高機能ボット活用により、機関セクション、工業用セクション、生命維持セクション、医療セクションが従来の仕様通りに稼働出来る様に、高機能ボットは現在24時間フル稼働している
『資源衛星』
神々(調整者)の残してくれた資源衛星は、地上では精製が難しい『半導体』の基礎である『素子』の生産工場が有り、従来のボットより高機能なボットや、帝国の最新型のパワードスーツ等の機械全般の基幹『集積回路』の基盤となっている。
また、別の資源衛星には様々な資材が眠っていて、その資材を使って急ピッチで『宇宙戦艦イーリス・コンラート』の失われた通信セクションと機関セクションの復旧に努めている。
そして資材を使用し尽くした資源衛星には、現在、船内に残っていた『重力コントロール』システムを取り付けて、人の居住が出来るスペースを作り、更にはドラゴン達の為に衣食住が出来る区画を用意したそうだ。
資源衛星と宇宙ステーションとは、カーボンナノチューブで連結してあるので、現在シャトルでの往還が可能で有り、何れは完全に合体させて行く予定らしい。
この様な、地上世界とは明らかに魔法科学技術に於いて、数世紀分優れた進歩具合に僕以外のみんなは、半ば目を白黒させながら動画を見ていたが、親友のロンと『安倍晴明』の二人は目を爛々と輝かせ、動画を食い入るように観ていた。
やがて、終点の宇宙ステーション下部に辿り着くと、早々にノーマルスーツと云う基本宇宙服をインナースーツの上に着込み、最悪宇宙空間に放り出されても大丈夫な準備をして、宇宙ステーションのゲートから気密ブロックでの職員とボットによる検査を終えて、『宇宙戦艦イーリス・コンラート』の船内に入った。
専門の職員の案内で、驚く程綺麗な廊下を進み、アスガルド城にも有るエレベーターに乗り、僕達は艦橋ブロックにまで上がる。
あまりの地上世界との差に、みんな押し黙りながら案内してくれる職員の背中に着いて行き、父様とセリーナ・シャロン母様達そして賢聖様や優秀な『魔法科学局』の職員が居る艦橋室に入室した。
「良く来てくれたね!」
久しぶりに直接会う父様が、両手を広げて出迎えてくれた。
その表情は、何かが吹っ切れた様な安堵の気持ちと、漸く此処まで来たと云う達成感の様なものが満ち溢れていて、非常に満足そうだ。
「本当に良く来てくれたわ!」
そう言葉を発した人物を見た僕の友人達は、見事に凝り固まった!
流石に、此の人物と出会えるとは友人達は想像していなかったのだろう。
そう、今、言葉を発した人物こそは『イーリス』!
ルミナス教に於ける『知恵の神』にして、『赤色艦隊スピカ方面軍第238艦隊2番艦イーリス・コンラートのメインシステムAI』で有る。
長かった・・・。
此の話しを以って、漸く話しのメインが宇宙レベルに移行して参ります。
次話からは、宇宙ステーションでの短期滞在の話しが続き、無重力体験や宇宙空間の体験学習等を熟し、一旦地上世界での学生生活に戻りますが、暫くすると否応なしに宇宙ステーションに来ざるを得ない事件が起こります。
さあ、いよいよアポロにとっての物語の主軸たるスペース・オペラが始まります。
期待していて下さい。