「賑やかねー」
と僕の学問の師にして、帝国はおろか世界でも学問に於いて最高の学者でもある、賢聖『モーガン』様は食前酒を飲まれながら、楽しそうに笑いながら立体プロジェクターで何時もの座席に着いている様に見える父様に話し掛けている。
「まあ、こういう風に楽しく過ごす為にこそ、3年前まで必死に戦ったのですからね」
と父様も立体プロジェクター越しに、感慨深げに子供達の居る少し離れたテーブルを眺めながら、食前酒をゆったりと味わう様に口に含み転がすように喉に流す。
「本当にそうね。あの大乱を超えられたこらこそ、今の幸せが有るのだからみんな楽しむべきよ!」
と賢聖様も頷き、既に凄い勢いで食べ始めている僕達5歳以下の幼児を、嬉しそうに眺められた。
僕達は、こうなる事が予想されたので、両親達から少し離れた幼児用のテーブルにみんなで陣取り、礼儀もへったくれもない様子で、大皿に積まれた子供サイズに小さくされたハンバーグやミートボール等肉類と様々な幼児用の惣菜類とサラダ、そしてシェフが子供用に味を整えてくれた『テールスープ』を、メイド達が取り分けてくれたものを食べる。
「此れは本当に美味しいな! 是非、帝国でも畜産ドームで放牧して欲しいよ!」
「アポロ! ハンバーグとミートボールもオイシイけど、つくね串もオイシイぜ!」
「マリアちゃん! このテールスープって始めて飲んだけど美味しいよ!」
「サクラちゃん! テーブルに足をのせてると、ママのオウカさんに後で怒られちゃうよ!」
「マー、ぼくのミートボールたべちゃやだー!」
「ルーこそ、ぼくのはんばーぐとったよー!」
と凄まじい喧騒で、両親達が避難して大人同士の食事をしているのも、宜なるかなといった具合だ。
みんなで大満足の食事を終えて別室にメイド達に案内されて幼児達全員で移動し、大人達はゆったりとした広間に向かいお酒を楽しむ様だ。
僕達は、大きなモニターの有る部屋で最近流行りのアニメーション番組『クレヨン キンちゃん』を見ていたら、御眠になったルー君とマー君はウツラウツラし始めたので、メイド達が抱えて寝室に連れて行った。
アニメーション番組を見終わりゲームを楽しんでいたら、其れ其れの両親が迎えに来て、アスガルド城内の客室に連れて行く。
「其れじゃあ、明日、教室でね、おやすみなさい」
「「「うん、おやすみー!」」」
と挨拶し合って別れると、僕は賢聖様のアスガルド城内に有る研究室に向かった。
「どう、『インビジブル・スーツ(光学迷彩服)』の隠蔽率は?」
といきなり賢聖様は入室するなり、僕の背後に問い掛けた。
その問いに、僕の背後から声が返って来る。
「そうですね、一般の大人と子供達は完全に隠蔽出来ましたけど、武道に携わる者や軍人の一部の方々には、違和感を与えていた様です。
特に、拳聖様と剣王の方々、そして皇帝家の皆様には完全に看破されていて、特にアラン皇帝陛下は時々、自分の護衛の仕方で不備が有った場合に、『ナノム・ネットワーク』で指摘する程に、完璧に見破られていました!」
と申し訳無さそうに申告しながら、「す~っ」といった感じで項垂れた姿を現した。
その項垂れた姿を見ながら、
「・・・仕方無いよ佐助。
父様は探知魔法を編み出した創始者にして、気功法と魔法技術の大家でもある。
此の世に有って、父様を欺ける生物は存在しないと思うよ」
と、僕を常に守護する『猿の佐助(ましらのさすけ)』を労った。
佐助は片膝を着いて、
「ハッ! 今後もっと精進致します!」
と僕に答えて、佐助は賢聖様と僕に目礼して研究室から退室して行った。
「さて、貴方に課していた負荷魔法と其の影響の確認、そして『ナノム』の充填作業の確認をしましょうね」
と賢聖様は僕を研究室に有る調整槽に入れると、パネルを操作して僕の状態を確認する。
「うん、魔力を抑える負荷魔法は良い感じで安定しているわ。
ナノムがその余剰魔力を溜め込んで、空の魔石に充填する作用も問題無しね。
きっと、小等部に入る頃には此等を、貴方は任意で行える様になる筈よ」
と保証してくれた。
そう、僕は別に病人では無いのだが、先天的に魔力保有量が普通の人に較べて数十倍と云う、殆ど有り得ない量を保有していて、まだ魔法を使えない段階で魔力を暴走させると、最悪は周囲100メートルに渡って爆発してしまいかねなかったのだ。
その危険性に気付いた父様と母様達は、賢聖様と直弟子そして『八仙』が編み出した、『負荷魔法』によって僕の魔力を抑え込み、余剰魔力を他の媒体に流す方法を作り出して、正常化を図ったのだ。
現在その方法は上手く行って、僕は一切暴発する事無く普通に生活出来ている。
ただ、変な副作用で僕は魔法も使えないのに、魔力の制御が出来てしまうと云う、本来有り得ない技術を会得してしまった。
まあ、別に些か早い段階で魔力の制御が出来ただけなので、大した事では無い。
その後、賢聖様に諸々報告して、自分の私室に向かった。
部屋に入ると、相棒の星猫アルが僕のベッドの上で寝ている。
そっと、起こさない様に静かに歯を磨いてから寝巻きに着替えていると、その気配に気付いたのかアルがのそのそと起きてきて、
「お帰りアポロ! 今日も遅かったな」
と言って来たが、
「そんな事ないよ、まだ22時だし多分普通の5歳児でも起きている子供も居ると思うよ。
そんな事よりアルは今日も兄弟達と、お父さんの『ケットシー128世』さんの教育を受けてたんだろう。
お疲れ様だね」
と労って上げると、
「全くだよ! 親父とお袋は俺たち兄弟に厳し過ぎるんだよな!
確かに将来俺たち兄弟は、アポロ達と共に神機に搭乗する事になるから、色々と訓練しなければならないのは判るけど、まだまだ先の話しだから現在は必要無いと思うけどね!」
と言ってきたが、
「だけど、マリアちゃんとロン君の神機が見つかった事、そしてミネルヴァのご両親で有るアトラス殿とグローリア殿による、静止軌道上への貨物輸送の目処も立った。
意外と神機の起動は早いかもよ!」
「そうかも知れないな。
まあ、俺もアポロと一緒に最強の神機『メタトロン』に、一刻も早く乗りたいからな!
お互い頑張ろうぜ!」
互いの努力を誓い合い、僕達はハイタッチしてから其れ其れの寝床に入り、眠りについた。
ハンバーグパーティーで騒いだ所為で疲れていたのか、簡単に寝付けて僕は深い眠気と共に良い夢を見たいと願った。
此れにて序章が終了します。
本編の主人公である、アポロニウスの或る一日の様子です。
次回からは、アポロニウス達の『学校』入学、そして小等部での生活描写を記します。
第一章は小等部編、第二章は中等部・・・・・
といった感じで物語は進行して行きます。
お楽しみに。