『宇宙ステーション』に上がってから早一ヶ月が過ぎ、僕と友人達は様々な訓練と経験を積み、本当に有益な時間を過ごすことが出来た。
「・・・これだけ無重力に慣れてしまうと、重力の有る生活は面倒臭く感じるかもな・・・。」
と親友のケントは、休憩時間に無重力帯のラウンジで周囲に、チューブ入りのジュースとゼル状のお菓子を空中に浮かせたまま、空中で器用に寝そべって居る。
「そんな事を言ってるけど、暫く振りに地上世界でしか食べれない、ケントのけんとのな『拉麺(ラーメン)』は食べれないままだぞ!」
「ああ、そうだった! やっぱり長期間『宇宙ステーション』に滞在するには、その辺を解消してくれる技術革新か、頻繁に地上世界と往復出来る様にならないかなー!」
とケントは嘆いてみせた。
《・・・その辺の事も、なるべく早く解消しないと、次の段階である『スペースコロニー計画』も進まないかも知れないな・・・。》
人が生活する上で、なるべく地上世界との差を無くさないと、ストレスやフラストレーションで人は簡単に精神の均衡を崩してしまうだろうから、結構大きな問題だと思い、僕は忘れずに父様達に報告して置いた。
その後、全てのカリキュラムを終えて、僕達と交代要員の100人が行きと同じ形で、カーゴタイプの乗り物に乗り、シャトルに積み込まれて軌道エレベーターを降りて行った。
シャトルには人だけでは無くて、無重力でしか精製されない貴重な資源や、研究資料が満載されていて、今も数々の研究と実証実験が繰り返されている事が判る。
僕達は、行きと同じく五時間後には地上に降り立つと、暫くの間軌道エレベーター横に存在する検疫室に通されて、様々な項目チェックを終えてから、帝都コリント行きの魔導列車に乗り込み帰路に着いた。
みんな疲れて居るのだろう、魔導列車の車両一つを借り切った車内で、全員が豪快に寝息を立てて熟睡している。
《みんな、初めての未成年学生のテストケースとして、手探りのカリキュラムを熟してくれてご苦労さま》
僕は、自分の将来に於いて領地となる、スターヴェーク公国の非常に長閑な田園風景を車窓から眺めながら、熟睡しているみんなの顔を見て感謝した。
特急の魔導列車は帝都コリントに夕方到着し、其れ其れの家や寮に全員が帰宅して行く。
「兄ちゃん、お帰り!」
「兄様、お帰りなさいませ!」
「兄貴、お帰んなさい!」
と三者三様の兄が帰還したことへの挨拶を、アスガルド城の玄関で妹達と弟がしてくれて、自宅に帰って来た事を本当に感じさせてくれた。
「お前達は兄が居ない間、ちゃんとクレリア母様を守って留守番出来ていたか?
父様とセリーナ・シャロン母様が宇宙ステーションに長期滞在しているのだから、クレリア母様が負担すべき役柄は非常に多かったから、家庭事情で迷惑を掛けていなかっただろうね?」
「「「勿論、迷惑なんて掛けていません!」」」
と3人共に元気良く答えてくれた。
まあ、もしもとんでも無い問題が発生していたら、宇宙空間だろうとAR空間を介したAR通信で知らされただろうから、実際に問題なかったんだろう。
「アポロ、長い間の特別訓練体験、ご苦労さまでした。
早速、お話しを聞きたいから、夕食を食べながら報告して下さいな」
と皇妃宮に帰還の挨拶がてら伺うと、クレリア母様は頬笑みながら僕を迎えてくれた。
「勿論ですよ、クレリア母様!
色々と土産話が御座いますので、是非聞いて下さいね!」
「ええ、楽しみにしているわ。
アランとセリーナ・シャロンそして、賢聖殿達の様子を教えてちょうだいね!」
と言われたので、僕は自室に戻ってサスケと星猫のアルの僕が居ない間の報告を受けた。
「アポロ様とご友人方の宇宙ステーションの生活具合は、帝国と同盟国に開示して良いと判断した部分を、ニュース番組内で取り上げられて、概ね好意的に受け止められていまして、次に向かう事になっている学生たちは、非常に意欲的に準備して居ります」
「アポロ達が宇宙に向かってから、『神機』達が特別な反応をする可能性が有ったから、兄弟達と気を付けていたんだけど、全然反応が無くてかなり肩透かしだったよ!」
と云う報告で、全然問題は無かった様だ。
僕の留守中ずっと警戒してくれた2人に労い、僕は久しぶりの我が家での夕食に向かうべくレストルームに向かった。
夕食を家族で楽しみながら、色々な宇宙での体験話を家族に披露していると、僕の話題の中で出てきた『イーリス』様の場面になると、妹達と弟はただ凄いと表現していたが、クレリア母様は結構思う事が有ったらしく、沈黙してしまった。
若干気になったが、他にも報告したい事があり、その話題には深く突っ込まずに、宇宙での食事事情や無重力状態でのトイレはどんな感じだとか教えて上げて、周りに居たメイド達の笑いを引き出す事が出来た。
食事後の団欒も終えて、僕は自室に戻ろうとしたが、クレリア母様に呼び止められた。
「アポロ! 貴方に報告して置きますが、私も2次の学生選抜グループが宇宙ステーションに向かう際に、同行する予定です。
そうなると、貴方が帝国に居る皇帝一家の最年長者となります!
今更言わなくても貴方なら大丈夫でしょうが、覚悟を以って責任を自覚して行動しなさいね!」
「了解です! どうぞ心安んじて行ってきてください!」
と僕が返事すると、クレリア母様は大きく頷いてくれた。