(マリア視点)
『キャメロット』という組織が出来上がって、その組織が集まる活動拠点として、巨大な施設が必要となったの。
ついでに褒姒達の組織『百八家』にも施設を作る必要が出てきて、アポロと褒姒は共に自分の資産を出し合って、帝都コリントが設立された当初に建造された、初期型ドームを帝国から中古価格で譲り受けたの。
ただ、やっぱり中古なだけに諸々の設備が時代遅れの代物で、基幹部は問題無いんだけどちょっとしたインフラや建物は埃を被っているので、手入れやリフォームは必要ね。
だからアポロと褒姒は、大量に元アラム聖国出身の東方教会信者を雇用して、自分達と一緒に中古ドームのメンテナンス作業やリフォームを行う事で、諸々の蟠りをゆっくりと解いて行くことにしたわ。
当初は、かなり警戒して中々心を開かない東方教会信者が多かったけど、信者の子供達はアポロと褒姒を始め『キャメロット』と『百八家』の関係者の子供と一緒に、子供でも出来る雑巾がけや箒を使った掃除をして仲良くなって行くのを見て、少しずつ行動を共にしてくれ始めたの。
今現在の帝国は、宇宙に職を求めて色んな国の人々が、スターヴェーク公国に有る『軌道エレベーター』を通じて『宇宙ステーション』に上がって行くので、帝都コリントでも地上で働く就職口が沢山余っているので、この中古ドームを住居として登録し、結構良い職場を斡旋して上げると、大分経済面と学業面で余裕が出来てきて、宗教面での違和感も積極的に『ゲルトナー』枢機卿が派遣してくれた、司教クラスの幹部がゆっくりと東方教会の教えを西方教会のそれに融合させて、改めさせているわ。
きっと、後10年もすれば違和感は解消するんじゃないかしら?
そんな風に、ある種の共同団体として過ごさせていると、『キャメロット』と『百八家』に参加して行く元アラム聖国出身の東方教会信者が出てきたの、きっと彼等も大切な仲間になっくれるでしょう。
6月になり、毎年恒例の『世界武道大会』が開かれるんだけど、まだ私達は中等部なので対戦形式の武術は認められて無いんだけど、今年はちょっと様子が違ったわ。
何と、例の『バグス』を仮想敵とした格闘技の演武を行うと発表されたの!
『バグス』って敵は、本当にあのイヤーな虫(言葉にしたくもないゴキブリや、カマキリ)に似た奴等なんだけど、明らかに人間の大人よりも大きくて頑丈な外骨格で身体で構成されてるの。
だから、本来は人間が格闘技で相手するには、武器を使用しないとならないと想定されているのに、今回の大会では拳聖・剣聖・拳王・剣王の方々が、『バグス』の死体から作り出した『再生体』を相手に対処する武術を披露するらしいわ。
ただ、相当に凄惨な場面になると思うので、15歳以下は観れない様に配慮するそうだけど、私やサクラちゃんと褒姒ちゃんというちょっと特殊な立場な女の子は、見学しても良いらしいので是非観せて貰うつもり。
そして、『世界武道大会』が始まったら、予想通り帝国小等部の代表となっていたアポロの妹達と弟君は、ケントの弟と一緒に優秀な演武を見せてくれて、優勝と準優勝を飾っていたわ。
そして私達も、4年連続の成績を修めたの。
正直な処、こんな何時も通りの結果は本当にどうでも良くて、例の『バグス』を仮想敵とした格闘技の対処方に、みんなの興味は集中していて、拳聖・剣聖・拳王・剣王の方々の対『バグス』試合が、中等部の演武が終わった後の17時に始まるという事で、選手だった私達は宿舎に一度帰還して着替えてから、試合が行われる”コロシアム”に戻って来たわ。
「おーい、こっちだよ! サクラちゃんにマリアちゃん!」
とロンが私とサクラちゃんを手招きしてる。
その隣には、賢聖『モーガン』様と賢王『マリオン』様がおられるの。
中等部に入ってからは、完全に武術をしなくなったロンは、隣に座る賢聖様と賢王様の直弟子として、今回の『バグス』の死体から作り出した『再生体』の製作にも関わってるの。
実際の処、この『再生体』についてはあまり良い気分では無いのよね。
だって、何だか気味が悪いし倫理的にも疑問でもあり、何よりもゴキブリに似てるのが生理的に受け付けないわ!
そんな風に、気持ち的にモヤモヤしながら試合場に目をやると、”コロシアム”の機能を使ったフィールドが試合上に広がったの。
これで、『再生体』のバグスは試合上から逃げれないし、死ぬ様な怪我を負っても直ぐに甦れる事になったわ。
そして試合場脇に居た、私の父上である『剣王シュバルツ』が試合場に上がったの。
私は、密かに心の中で父上を応援してたんだけど、父上は何時もの双刀を腰に履かずに、柄頭だけを両手に持っているわ。
そしてこの特別試合の為にだけ、ワザワザ解説役をして下さる、アポロの父上『アラン皇帝陛下』が試合場に登壇されて、皆に聞こえる音量で話し始めたの。
「この特別試合は、何故行われるかと云うと、ただ見せしめにする訳でも余興で行われる訳でも御座いません!
私アランは、武道家の皆様が何故日頃の修練を積み上げ、己を鍛え上げるのか? という一つの答えを提示したいのです!
人は、生まれたままの能力では、その辺にいる犬の牙や猫の爪にもアッサリと傷付けられて、怪我を負って場合によっては簡単に死んでしまいます。
しかし、人は遥か過去から己を見つめ続けて、身体と精神を鍛え上げる事で獣や魔物に打ち勝つ事が出来る様に努力して来ました。
そして我々は、その究極形としての武道を、今から武道の大家の方々によって提示させて頂きます!」
その宣言を行うと、アラン皇帝陛下は試合場から降り、私の父上に頷かれたわ。
その頷きに父上も頷き返すと、やがて父上の対面に『再生体』のバグスがコクーン(繭状のカプセル)が運び入れられたの。
「コクーン解除!」
そうアラン皇帝陛下が命令されると、コクーンが両側に開かれて、徐に目を覚ました『再生体』のバグスが、ゆっくりと全身を現して睨めつける様に辺りを見渡し、目の前に居る父上を見つけると、虫のそれである顎を開けて、
「キシャーーーー!」
と奇怪な声を上げて、父上を威嚇して来たんだけど、何時もの様に父上はごく自然体でその威嚇をいなして上で、『再生体』のバグスと対峙したの。
私は、当然父上の勝利を確信してるけど、緊張で手に汗を握っている自分に気付けずに居たの。