(ロン視点)
マリアのお父さんである『剣王シュバルツ』様が、賢聖『モーガン』様と賢王『マリオン』様そして僕が、研究に研究を重ねた『バグス』の死体から作り出した『再生体』と勝負する。
本当なら、如何に人類の敵であろうと、頑張って製作した作品である『再生体』がやられるのは、嫌な気持ちを抱きかねないが、僕達3人には毛程も残念な気分が湧いて来なかった。
何故なら、本当の意味で『バグス』の死体からその製造された真実を理解してしまったからだ!
『再生体』とは呼称されているが、あれは真の意味では『バグス』そのものである。
11年前の大戦に於いて回収された『バグス』の死体は、そもそも量産された『複製品』だったのだ。
いや、『複製品』と言うのも可怪しいのかも知れないな。
恐らくは、本体(オリジナル)と言える『バグス』は数体、もしくは1体だけなのかも知れない。
回収した『バグス』の数体の死体には、明らかに複製した痕跡と量産された物特有の類似性が認められたのだ。
つまり、こいつらは最初から兵器として量産された生物であり、自然発生した天然自然の生物では無いという事だ。
この事実は、実は例のアラム共和国から供与された、古代の『宇宙船』のメインストレージに保存されていた、極秘ファイルにある程度記載があって、今までにも接触が何度も有った『古きものども』が恐らく生み出した生物兵器だろうと推測されていた。
ならば、死体から再生された『バグス』の『再生体』は、結局本体(オリジナル)を復元した代物という事だ。
そんな、他者が複製したものを再度複製したものなどに、正直な処3人共に愛着など全然湧いて来なくて、早く処分されてしまえとしか思っていないのだ。
「ドン!」
と太鼓の音で、試合場のフィールド拘束が解けた『バグス』の『再生体』は、何の躊躇もなく『剣王シュバルツ』様に襲いかかった!
だが、そんな『バグス』の『再生体』に対して、素早く体を躱した『剣王シュバルツ』様は、両手に持つ柄頭の尻の部分を『バグス』の『再生体』の後ろ首に叩き落とし、たたらを踏んだ『バグス』の『再生体』が振り返りざまに薙いで来た、そのカマキリの前足に似た鎌の部分に柄頭で応戦した。
「ガガガガガッ!」
と鈍い激突音が鳴り響き、『剣王シュバルツ』様は『バグス』の『再生体』のカマキリの前足に似た鎌の部分を全て跳ね返し、相手が次の行動に移るべく顎で食いつこうと構えた瞬間、両側の開いた脇腹に柄頭をめり込ませた!
「ゴズウッ!」
人間では有り得ない鈍い音が響き、前のめりに倒れ込む『バグス』の『再生体』の頭を、上下から柄頭を叩き込み、「グシャ!」という物が拉げる音と共に『バグス』の『再生体』の頭部を、グズグズにしてしまった。
そうやって『バグス』の『再生体』を殺したのだが、とんでもないことに頭部を無くしたにも関わらず、再度襲いかかって来たので、『剣王シュバルツ』様は柄頭を揃えて『バグス』の『再生体』の腹部に強烈な突き込みを放ちとどめを刺した!
漸く『バグス』の『再生体』は完全に動きを止め、試合が終わった。
そして試合場にアラン皇帝陛下が上がって行き。
「此の、『バグス』の『再生体』は、ベーシックな部類に入る『ビートルタイプⅡ型』と云う通常型で、此れから我々が宇宙に上がって行き、彼等と対戦する事が多いタイプとなります。
本来なら、人類の基本能力ではやられるしか無い相手ですが、此の様に刃を失った剣の柄部分だけでも、対処が可能な事を『剣王シュバルツ』殿が証明して呉れました!
次に、手甲だけでも人が対処可能な事を、『拳王ミツルギ』殿に証明して頂きましょう!」
そう、アラン皇帝陛下が言われると、試合場の脇に居たサクラのお父さんで、最近拳王に戻った『拳王ミツルギ』様が、試合場に上がった。
そして、”コロシアム”の機能によって『バグス』の『再生体』は、時を巻き戻すように復活した。
「ドン!」
と太鼓の音で、試合場のフィールド拘束が解けた『バグス』の『再生体』は、まるでさっきの試合を再生したかのように何の躊躇もなく『拳王ミツルギ』様に襲いかかった!
『拳王ミツルギ』様は、両手に嵌めている手甲を気合を込めて打ち鳴らすと、かなりの速度で振り下ろされる『バグス』の『再生体』のカマキリの前足に似た鎌を、その両拳で迎え撃った!
「ガギイーーン!」
硬質な金属が打つかる様な音が響き、『バグス』の『再生体』の前足の鎌は上に跳ね上げられた。
次の瞬間『拳王ミツルギ』様は、『バグス』の『再生体』の正中線に向けて『正拳三連突き』を放つ。
その攻撃で動きを止められた『バグス』の『再生体』に対して、背後に廻った『拳王ミツルギ』様は、右腕に逆関節を掛けて投げ飛ばし、その首に右足の脛の部分で地面との間で挟む事でへし折り、そのまま倒れ込みながら『バグス』の『再生体』の手足の関節を、手甲で破壊した!
暫くの間、死んだ筈の『バグス』の『再生体』は、ビクンビクンと痙攣していたが、『拳王ミツルギ』様は残心の構えで死ぬまで『バグス』の『再生体』を見続けた。
『バグス』の『再生体』が死んだ事を確認したアラン皇帝陛下は、試合を終了させて。
「皆さん、ご覧になられた様に、手甲での格闘技でも『バグス』には対処可能です!
さて次は、剣聖殿と拳聖殿の神技を見て貰います。
此処までに至るのは、正直なところごく一部だと思いますが、到達出来ない極地では無いので、どうか武道家の皆様は、鍛錬を続けて此の神技を目指して下さい!」
そうアラン皇帝陛下は述べられて、試合場から降りられると、それに代わって剣聖様が剣も履かずに登壇した。
久しぶりに帝国に戻って来た剣聖様は、飄々とした風情で試合場で仁王立ちしている。