(クーガー視点)
オイラが帝国に所属し、アポロニウス皇子の直属の臣下になってもう直ぐ1年が経つ。
その間オイラは、アポロニウス皇子の臣下として相応しくなる為に、『ナノム玉2』の服用と徹底的な催眠教育、そして基礎的な身体の体幹見直しと筋組織の改善を行い、学習面でもアスガルド城付きのアポロニウス皇子の弟、『ルーファス』皇子の教育係の教師によって、帝国小等部の基礎学力の叩き込みに2ヶ月を掛け、中等部の学習を7ヶ月掛けて叩き込まれた。
これは、本来自分の様な出自さえ怪しい人物が受けられる筈が無い、最高峰の環境での教育システムだ。
なので、オイラはこの恩に報いる為に、アポロニウス皇子の手助けとなるべく、アポロニウス皇子を信奉する組織『キャメロット』が設立されてからは、『キャメロット』とアポロニウス皇子の間に入り、親友様方や褒姒様達との融和を目指し、テオ様始め護衛騎士団の方々との連携を進めて、より良い形での組織運営に従事しました。
すると、『キャメロット』が機能的に動き始めて、拠点として中古で余っていた初期型ドームを、アポロニウス皇子と褒姒様が買い取ってくれたので、そこを『キャメロット』の事務所や車両倉庫、そして様々な作業空間と武術や魔法演習場として使える様に、『キャメロット』と『百八家』の構成メンバーとその関係者で整備していった。
そしてその輪を、中々蟠りを解けずにいる元東方教会信者とその家族を、積極的に招き入れてその過去の信仰に凝り固まった頑なな心を解きほぐして上げようと云う、アポロニウス皇子の想いを汲んでオイラはこの中古ドームに元東方教会信者とその家族達の面倒を見ている。
まだまだ、オイラ達の行動の意味を測りかねて彼等は戸惑っているが、黙々と中古ドームの整備とリフォーム作業を『キャメロット』と『百八家』の構成メンバーがして行き、ドンドン彼等の為の住居や生活環境が整えられて行くのを見て、徐々にオイラ達の作業の手伝いをし始めている。
そして、そういった作業とは別に色々なイベントや催し物を開催していると、参加する者も増えて来ている。
そのイベントの中には、拳王様と剣王様による武術教室というものがあり、あまり武術方面で一般人民に広める事をして来なかった元アラム聖国の方針に染まっていた元東方教会信者とその家族は、珍しい物を見るように見ていたが、徐々に子供達が武術教室に参加し始めた。
オイラも、一緒になって拳王様と剣王様による武術教室に参加して、基本から教わっている。
そんなオイラにとって、拳王様と剣王様の師匠筋に当たる拳聖様と剣聖様は、師匠の師匠という存在なのでまるで神様に等しい方々である。
その神様に等しい方々が、今から『再生体』のバグスを一切の武器や道具も使わずに倒すというのだ。
とても信じられたものでは無いが、拳聖様と剣聖様がその神技を見せてくれるそうなので、是非拝見しよう。
主君であるアポロニウス皇子の父上、アラン皇帝陛下が合図を送り、太鼓が叩かれた。
「ドン!」
との太鼓の音で、試合場のフィールド拘束が解けた『バグス』の『再生体』は、
「グギャギャギャ!」
と奇怪な吠え声を上げて、飄々としている『剣聖ヒエン』様を威嚇して来たが、そんな『バグス』の『再生体』に対して『剣聖ヒエン』様は、スッといった感じで何も持っていないのに正眼に構えた。
双方の気迫が、両者の間の空気を歪ませる様な錯覚がオイラには見えている。
「キシャシャシャ!」
と奇声を上げて、ガサガサといった感じで横に『バグス』の『再生体』は動き始め、真横に廻ると飛んで『剣聖ヒエン』様に襲いかかった!
「キエエーー!」
と雄叫びを上げて『剣聖ヒエン』様は、上段からの斬り落としを手に何も持たずに振り下ろした!
「ズパッ」
『バグス』の『再生体』と『剣聖ヒエン』様が交差した瞬間、その音が聞こえ『バグス』の『再生体』の右側の3本の手が切り飛ばされた!
《何で、斬れたんだ?!》
と不思議に思い、『剣聖ヒエン』様の手元を良く見ると、薄っすらと練られた『気(オーラ)』を突き出した人差し指から剣の形で作り上げている!
《つまり、『気(オーラ)』で出来た剣で、『バグス』の『再生体』の手足を斬り飛ばしたと云う事か!》
そう理解したが、そんな技術が存在するとはオイラは全く知らなかった。
知らないのはもしかして、オイラがまだ教えられて無いからかと思ったが、アポロニウス皇子の友人方も知らなかったらしくて、凄く驚いている。
あまり痛みを感じていないのか、『バグス』の『再生体』は斬られていない鎌の様な左手で、『剣聖ヒエン』様に斬りかかって来た。
その行動に対して、大上段から『剣聖ヒエン』様は裂帛の気合と共に、『気(オーラ)』で出来た剣を振り下ろした!
「チェストー!」
その猿叫の様な気合を込めた雄叫びは、真っ二つにされた『バグス』の『再生体』が、両側に倒れて行く姿と共に、オイラ達の心に届く魂を揺さぶる衝撃だった。
そう、オイラ達は、『剣聖ヒエン』様の神技に魅入られてしまっていた。