《流石だな、剣聖様は!》
僕は、『剣聖ヒエン』様が長年の『ギアナ高地』で編み出した、神技『気剣(オーラソード)』を始めて見せて貰った時の感動を思い出した。
父様と僕の元へ、修行完了を報告に『拳聖』と共に来られて、実際の試技を魔物相手にして貰い、その凄まじさを思い知ったのだ。
此の神技『気剣(オーラソード)』とは、実は既存の技術の発展形なので、奇を衒った代物では無い。
元々の『神剣流奥義、極刃斬』と『神剣流、斬撃』の基礎である、剣に『気(オーラ)』を込めて切れ味を増させると云う技術を究極に昇華させ、『気(オーラ)』のみで刃を現出させる程に練り上げるのだ。
実際に、魔物のグレイハウンドとオークをアッサリと斬り伏せて見せて、鋼の鋼材を一刀両断して見せられて、父様も素晴らしいと絶賛していた。
ただ、やはり究極とも言える『気(オーラ)』の練り上げは、習得に剣聖でも6年間と云う時間が掛かったので、此処までに至らなくても近い技術を学べる様に指導して行く努力を続けて行くべきだろう。
そんな事を、父様と剣聖様そして拳聖様が熱心に話し会っていたことを思い出して、もう一つの神技を携えて来た、拳聖様が試合場に登壇する姿を見て、僕は姿勢を正して良く観察しようとする。
『拳聖ダンテ』様も、自然体を崩さずに少しも緊張感が無い様に見えた。
父様が合図を送り、太鼓が叩かれた。
「ドン!」
との太鼓の音で、時を巻き戻すように復活した『バグス』の『再生体』は、試合場のフィールド拘束が解けたと同時に、一気に後退すると、『拳聖ダンテ』様の様子を伺っている様に見える。
『拳聖ダンテ』様は、ゆっくりと腰を落とし神拳流の基本構え『組手立ち』で、『バグス』の『再生体』に対した。
『バグス』の『再生体』は、今までと異なり大きく横に広げた顎から『拳聖ダンテ』様に喰って掛かった。
「カッ!」
と短い呼気を飛ばすと、『バグス』の『再生体』の頭に向けて、下顎をかち上げる様に昇竜脚を放ち、その頭上に上げた脚を踵落としで頭に叩き込んだ!
「ゴガッ!」
かなり鈍い音が鳴り、硬い物同士が激突した音なので、拳聖様の足を見ると剣聖様の『気剣(オーラソード)』と同じく『気(オーラ)』を纏っているのが見て取れた。
そんな拳聖様に対して、貫く様に『バグス』の『再生体』は鋭い鉤爪を繰り出して来た!
「ハッ!」
との掛け声を拳聖様は上げ、拳で『バグス』の『再生体』の鋭い鉤爪を捌き、両拳に足と同じく『気(オーラ)』を纏わせ、両手の貫手を『バグス』の『再生体』の腹部に目掛け次々と繰り出した!
「ズドドドドドッ!」
かなりの防御力を持つ『バグス』の『再生体』の外骨格を、凄まじい拳聖様の貫手は貫きまくり、血液では無い何かの液体が溢れて来たが、穴だらけの身体にも関わらず『バグス』の『再生体』は、鎌状の両腕で拳聖様に襲い掛かる!
「ケエエエエーー!」
凄まじい気合を上げて、拳聖様の廻し蹴りが『バグス』の『再生体』の鎌状の両腕を横殴りに折り、そのままの回転で旋回すると逆の足が首を捉えた!
「ボグッ!」
と鈍い音がすると、『バグス』の『再生体』の首は完全に折れ曲がった。
そして拳聖様は、折れ曲がって腹の辺りまで来た『バグス』の『再生体』の頭を目掛け、凄まじい正拳が叩き込まれた!
「ズンッ!」
と震脚の音が響き、錯覚では有るが地響きが起こった様な気がした。
そして正拳は、ものの見事に『バグス』の『再生体』の頭を貫き、そのまま腹を貫通し背中まで正拳が飛び出していた。
その拳は、明らかに『気(オーラ)』を纏っていた。
つまり、剣聖様と拳聖様は『ギアナ高地』で『気(オーラ)』を、剣と拳に纏わせる技術を修行し、見事に武器以上の物に出来る様に鍛え上げていた。
「ドンッ!」
と太鼓の音が鳴り、全ての『バグス』の『再生体』と武道家との、試合が終わった事を知らせ、父様が試合場に登壇して来た。
そして父様は、
「此の複数の試合を観てくださった皆様。 ご覧頂いた通りに人間は己を鍛える事で、本来は基本能力で圧倒的に上の『バグス』にも人は勝利し得るのです。
我々が今後宇宙に進出するにあたり、『バグス』との敵対は避ける事が出来ない事態です。
かと言って、宇宙に進出せずに此の惑星アレスに逼塞していても、遠からず『バグス』とその背後にいる『古きものども』が此方に向かって来ている以上、否応なく戦わざるを得ません!
ならば、他の『人類に連なる者』達と協力しあって、奴等と対峙しなければならないのです。
その際に、武器や車両等が無くて、どうしても素手で『バグス』に立ち向かわなければならない時に、此の対処方法と鍛錬をして置けば、少なくとも一方的にやられずに済むでしょう。
どうか皆様、今日見たことを心に刻み、今後の生き方を真剣に考えて下さい!
そして皆様が選択した未来に対して、帝国は全力で支援して参ります。
私が皆様に望む事は以上です。 明日からは今日の試合を念頭に試合を鑑賞して下さい!」
そう言って試合場を降りた父様は、もう一度大きく頭を下げて、拳聖様達と”コロシアム”を出て行った。
その姿を見送った、僕を含む人々は騒然としながらも、明日からの武道の訓練がこれまでと一切が違う事になる事実に気づいていた。