[『人類銀河帝国』の構成国の一つ、星間国家シレノス星系4番惑星シリウスの或る住民の手記]
私の名前はオルガ。
私達は、今から千年前に『人類銀河帝国』の構成国となった星間国家シレノスの国民でした。
今から18年前に『人類銀河帝国』は、その首都であるアサポート星系第3惑星アデルが、バグスの大艦隊によって陥落して、星間国家シレノスは人類銀河帝国の庇護を失ってしまいましたの。
其れから15年後に、バグスの数個艦隊が宙域に侵攻して来た。
星間国家シレノスには帝国の航宙軍が少ないながらも駐留していて、襲来して来たバグスの大艦隊に対して、勇猛果敢に挑みかなりの損害を与える事に成功しましたが、帝国の航宙軍は艦隊全てが衆寡敵せず倒されて行きました。
そして、バグスは主要な都市を衛星軌道上から攻撃し、都市機能を麻痺させると数千の上陸艇で降下して来たわ。
必死に星間国家シレノスは周辺の星間国家に、FTL通信で救援を求めたのだが、既に滅ばされているのか或いは援軍に行ける余裕が無いのか、返事は梨の礫だったの。
上陸艇に乗って来たバグスの大群は、容赦無く子供や老人を含むシレノスの国民を蹂躙して行ったわ。
3年が経ち、私の両親姉妹は繰り返されるバグスの住民狩りに会って、人間の生産工場か牧場に入れる為に捕まってしまったわ。
この絶望的な状況の中、私と同じくバグスの住民狩りを逃れたシレノスの国民は、必死になってバグスの探索を掻い潜り、元々有ったシェルターや地下道に逃げ延びて暮らしていたの。
だけど、そんなジリ貧で未来の無い生活は、ドンドン私達の精神を衰退させて行き、私達は今にも精神が砕けそうになって行ったわ・・・・。
そんな或る日、私と一緒に埃だらけの毛布に包まっていた幼い子供が、先日捕まってしまった母親を探しに、夜、私が昼間の食糧探しに疲れて泥のように眠っている間に、地下道から抜け出してしまったの。
どうやら地下の使われていないパイプラインを通る事で、バグスの探索に対して警戒していた警備隊の監視の眼を潜り抜けて、地上に出てしまったみたい。
気付いた私と大人達が慌てて追い掛けて地上に探しに行く。
しかし、バグスの住民狩り部隊が使っている、奴等のドローンに見つかる事を考えると、大声を出す訳には行かないので、目視で探すしか無いわ。
仕方無く、物陰に隠れながら幼い子供(ヌイちゃん)を、必死に探すこと1時間、漸く街外れの公園で佇んでいるヌイちゃんを見つける事が出来たの。
小声でヌイちゃんに話し掛けると、ヌイちゃんは何故か反応せずに硬直しているみたい。
警戒しながらヌイちゃんに駆け寄ると、漸くヌイちゃんが硬直してる理由が判ったわ。
目の前に凶暴化している野犬が唸っていたの。
野犬はどうやら腹をすかせているらしく、適当な得物としてヌイちゃんに襲いかかろうとしてるみたい。
私は、ヌイちゃんの前に出てヌイちゃんをかばいつつ、持っていた鉄パイプで野犬を脅しつつ、ゆっくりと後退して行くが、野犬は貴重な得物が奪われる事が諦められないらしく、中々去ってくれない。
暫く、緊張した距離を保ちながら私達の避難場所に向かっていたが、やがて私達の仲間が合流してくれたお陰で、野犬を追っ払ってくれたので、ヌイちゃんを抱きかかえて私は避難場所に走って向かったの。
「オルガ姉ちゃん、ごめんなさい! だけどヌイはママを探したかったんだよーー!」
と大泣きしながら、ヌイちゃんは私に抱きついて来たわ。
「うん、判ってるわヌイちゃん! だけどヌイちゃんのママが戻って来た時に、肝心のヌイちゃんが無事じゃ無かったら、ヌイちゃんのママが悲しむでしょう?
だから、ヌイちゃんは何とかガマンして、無事でヌイちゃんのママと再会しようね!」
「わかったよオルガ姉ちゃん! ヌイはママに会えるまでガマンするよ!」
とやり取りして、再び埃だらけの毛布に包まって私とヌイちゃんは眠りにつく。
翌日、私達は昨夜の事があり、遅い目覚めで寝床を出ると、日課である食材の調達の為に、地下にある食料貯蔵庫に向かい、賞味期限が切れたレーションと缶詰を運び出す作業に入ったの。
私が面倒を見ているヌイちゃんも、文句も言わずに必死に私が自転車で引っ張るリヤカーに、食糧を乗っける作業をしてくれている。
乗せれる量の食糧を積み終わり、私は自転車を漕いでヌイちゃんは脇を歩いて、落ちそうになる食糧を支えてくれてる。
その様子を見ながら、避難場所に籠もってからの事を思い返したの。
此処に籠もって2年間で、半数の避難民がバグスの住民狩りに会い、連れ去られてしまったが、何とかこの避難場所自体は発見されて無いので、私達はまだ生き延びている。
だけど、救われる見込みの無い現状は辛すぎて、精神に異常を来たしたり、自殺する人々が時折出ているわ。
あまりにも悲惨過ぎて、安易な死と云う選択をしてしまう人が出るのは仕方無いと考える反面。
あの、残虐無慈悲なバグス共に、負けてなるものかと云う、反発にも似た思いが心の中で渦巻いても居る。
どうか神様! どんな形でも良いからあのバグス共に、天の裁きが下されん事をただひたすらに望みます!