皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第三章 第8話

 『楊大眼』上級大将と『ヴァルター』大将の2隻の宇宙要塞艦は、背中合わせに2連星であるシレノスとシリウスの間に陣取って居るので、2つに分断されている敵バグスの艦隊は、特に戦術を駆使する事無く、力押しで帝国航宙軍を攻撃して来る。

 

 「アポロニウス皇太子は左方向、ケント中尉は右方向から、敵バグスの艦隊の横陣に攻撃を加えて下さい!

 その間に、敵バグスの艦隊に突撃しているドラゴン部隊が、重要機密等を収集して参ります!

 ドラゴン部隊が帰還次第、殲滅致しますので、其れまでは程々に手加減して攻撃を!」

 

 「「了解!」」

 

 そのやりとりを『楊大眼』上級大将と僕等は行い、僕は敵バグスの艦隊の横陣を左に陣取り、『メタトロン』の36対の翼からパルスレーザーを敵バグスの艦隊目掛け、連続して撃ち放った。

 

 ケントの『応龍』とダイレクトリンクする100頭のドラゴンも、『ライデン』装備で肩部に装着しているブラスター砲で攻撃を仕掛ける。

 

 つまり、『楊大眼』上級大将の乗る宇宙要塞艦と僕の『メタトロン』、そしてケントの『応龍』が3方向から1万隻程の惑星シリウス方向に居る敵バグスの艦隊を攻撃している形だ。

 

 特に戸惑った様子もなく敵バグスの艦隊は、『楊大眼』上級大将の乗る宇宙要塞艦を中心とした艦隊150隻に対し、押し包む様に横陣で攻撃しているのだが、其れを左右の背後から僕等2機が攻撃しているのだ。

 

 此の状況を、帝国航宙軍は敢えて暫くの間続けている。

 なるべく幾つものバグスの行動原理や艦隊の癖、そして思考パターンを把握したいので、ある程度余裕の有る場合は、詳細な情報を得たいのだ。

 

 そんな状況を続けていると、褒姒の『九尾』とサクラの『天照』が、僕とケントと同様に戦場に現れ、それと同時にドラゴンの突撃部隊が、敵バグスの艦から重要なデータを手に入れて帰還した。

 

 其れを待っていた『楊大眼』上級大将は、『ヴァルター』大将とタイミングを合わせ、一気に敵バグスの艦隊の中央を其れ其れ突破し、背面展開を見事に成功させた!

 

 敵味方殆ど被害が無いので、何処か緊張感が無い戦場だったが、一気に状況が変化する。

 

 宇宙空間ならではの球形の形で、敵バグスの艦隊を包み込む事に成功した。

 

 本来、物量の少ない陣営が包囲戦を展開する事はあり得ないが、此方には『神機』が存在する。

 

 褒姒の『九尾』が得意な魔力放出の大出力を利用して、サクラの『天照』の権能によるシレノス星系に存在する恒星からの太陽光を魔力に変換し、褒姒の『九尾』にそのまま魔力を届けて、褒姒の『九尾』はその9つの尻尾から極大の魔力フィールドで敵バグスの艦隊を球形に閉じ込めたのだ。

 

 そしてその敵バグスの艦隊に向けて、僕は僕の『神機』である『メタトロン』が持つ対『古きものども』用の武器の一つを初めて使用する。

 

 選択した武器の名称は、『空間爆砕』。

 

 範囲指定した空間そのものを相転移して、何らかの防御フィールドを持たない存在は、空間毎エネルギーに変換されて『メタトロン』に吸収されるという、僕自身も使用してみないとサッパリ判らない武器である。

 

 『メタトロン』内のパイロット空間に描き出された映像で、敵バグスの艦隊全てを範囲指定して、徐に僕は使用する武器名を『メタトロン』に告げた。

 

 「選択、『空間爆砕』!」

 

 「ラジャー」

 

 命令を受諾した『メタトロン』は特に動きもせずに、目の前で褒姒の『九尾』の魔力フィールドによって球形に閉じ込められた敵バグスの艦隊を、悠然と見渡し呟いた。

 

 「『空間爆砕』」

 

 いきなり、『九尾』の魔力フィールドによって球形に閉じ込められた敵バグスの艦隊は、虹色に輝きはじめるとやがて色を失い始めて、『九尾』の魔力フィールドを含めて全ての存在が空間ごと消失した。

 

 その、とても戦闘の結果とはとても思えない、まるで絵画が描かれたキャンパスが巻き戻す様に、絵画が描かれていない元の白いキャンパスに戻った様だ。

 

 あまりにもアッサリとした敵バグスの艦隊の最期に、此の戦場に居る全ての帝国航宙軍の軍人が、呆気にとられて暫く呆けていたが、

 

 「ビーッ、ビーッ!」

 

 というアラーム音が、艦内と『神機』のパイロット空間に鳴り響く事で、全員が我に返った。

 

 何かが、此の惑星の近傍にワープアウトして来ると云う警報だった。

 

 其の此の星域全体に配置した探査プローブが掴んだ想定される質量は、惑星シレノス程では無いが凡そ其の6分の1に該当する規模で、我々帝国航宙軍の艦隊全てを合わせても、質量だけで何百倍もの差が有る。

 

 空間が揺れる! 所謂、宙震(ワープ等で宇宙空間が宙域毎震動する現象)が尋常では無いレベルで巻き起こる!

 

 《・・・やって来るな・・・!》

 

 此の戦場に居る全ての帝国航宙軍の軍人が恐らく同じ想いを抱き、そしてそれと同時に覚悟も決めざるを得ない存在が来る事実!

 

 そう、確実にやって来るのだ!

 

 帝国軍が今まで相手して来た敵と、大きさ・攻撃力・防御力が全て桁外れの存在が!

 

 だが、逃げる訳にも負ける訳にもいかないのだ!

 

 未だ2連星のシレノスとシリウスには、回収中の避難民が多数存在し、当然その回収作業中の帝国軍人が、今現在も賢明に頑張っている!

 

 《・・・倒す! 此の日此の時の為にこそ、神々(調整者)は僕達『人類に連なる者』に遺してくれたのだ!

 その遥かなる想いの末に、僕達は生を受けたのだから・・・!》

 

 そして、宙震が最大規模で宙域を揺らした瞬間、

 

 「ズンッ!」

 

 と腹を揺らす震動が、僕達『神機』に乗る者にも届き、空間を割って何かが出現し始めた!

 

 そう、敵バグスの持つ最大戦力と思われる『宇宙大怪獣』の一体が、出現して来たのだ!

 

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