ラ・ベート 〜アレは本当に動物だったのか〜 作:川内かまぼこ
この世で最も深い暗闇はなんだろうか。それは
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「先輩って庵さんのこと普段なんて呼んでるんですか」
「アンちゃんって呼んでる。すげぇ嫌がられるけど」
いつもの大学での昼時、いつもカフェテラスにて、先輩との無駄話に興じる。
「どこが好きで告白したんですか?」
「なんだよスイカちゃん。恋バナしたいの?」
「西瓜です。いや、単純に自分とは女性の趣味がかけ離れているのでどこを好きになったのか単純に興味が湧いたので」
人はそれを恋バナというんだよと先輩はケタケタと笑った。
「アンちゃんの好きなところかあ。イケメンなところかな」
「先輩って乙女なんですか」
「いや、違うんだよ。アンちゃんは運動できるし勉強できるし仕事もできる。女子に気配りできるし、料理できるし、俺が遅く帰ってきても寝ずにまっててくれるし、口ではひどいこと言うけど根は優しいし、落ち込んでると励ましてくれるだよ」
「いや、もうそういう少女漫画のイケメンキャラ」
尚更、先輩みたいな一見クズひも野郎みたいな人と付き合ってる理由が知りたい。
「ああ、でも1番はギャップかなあ」
「ああ、実はかわいいものが好きとか、実は女の子みたいな格好したいけど、私には似合わないからとか思ってるそういうラブコメサブヒロイン的な要素ですか。設定盛りすぎでしょ」
「あの見た目でかわいいものが別にそんなに好きなわけでもないし、別にかわいい格好に憧れて無いところかな」
「それは果たしてギャップっていうのでしょうか」
いや、言わない。
「オディールちゃんも俺が名前つけるまでウサギとしか呼んでなかったし」
「先輩はイケメンが好きなんですか」
「いや、イケメンが好きなんじゃない。好きになった娘がイケメンだっただけだよ」
なんだそれ。先輩と相容れないと思ったことは何度もあるが、女性の趣味が1番相容れないかも知れない。
「庵さんは料理何作ってくれるんですか」
「なんでも作ってくれるよ。小アジの南蛮漬けが絶品でさあ。俺が好物だって言ったらあんまり作ってくれなくなったけど」
「先輩、小アジの南蛮漬けが好物なんですか」
「ああ、これでも小さい頃は港町に住んでたからね。暇つぶしに釣りしてたら深海魚釣り上げた事があってさ。あれはびびった」
「その深海魚そのあとどうしたんですか」
「俺の血肉となった」
つまり食べたんですね。この先輩の嫌いな食べ物ってあるのだろうか。ないかも知れない。食べれそうならなんでも食べ方を考えるのが人間だ。
「それにしても深海魚ってのはどうしてあんなにグロテスクなのかねー」
「まあ、光の届かない特殊空間で生き残るために進化した結果でしょうね」
まあ、そもそもが深海魚を醜いと感じるのは人間の勝手な都合である。人間のエゴというやつだ。
「また、スイカちゃんは浪漫がないこと言って」
「西瓜です。じゃあ、先輩はなんでだと思うんですか」
そんなの決まってるだろうと先輩はケタリ(ケタリ?)と笑って答えた。
「あいつらは見た目じゃなくて中身で勝負してんのさ。いうだろ、見えない方がよ〜く見えるって。だから味もいい」
結局食べるんですね。あと、よくは言わないだろう。と話しているうちに昼休みが終わる時間だ。
「そういえばスイカちゃんの女性のタイプって何?」
「西瓜です。ゆるふわ女子ですかね。あと、自分より身長が低い娘がいいです」
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この星で最も深い暗闇が深海だとすれば、暗闇を恐れる人が海から離れたのは当然というべきか。きっと、深海のアレは地上のアレとは比べ物にならないほど恐ろしいのだろう。しかし、暗闇を恐れる人間でも深海を目指す者もいる。なんとも恐れ知らずな者達だろうか。こんな話を教授伝いに聞いた。とある国の客船が太平洋のとある海域で行方不明となってしまったらしい。長年の捜索も虚しく客船は見つからなかった。しかし、捜索が打ち切られて数年が経った頃、船は見つかった。大西洋に属する無人島に打ち上げられていたそうだ。なぜ、太平洋を航海していたはずの船が大西洋の無人島で見つかったのか謎だが、見つかった船は生き物の生臭い体液がへばりついていたという。乗客は誰もいなかった。のちに復元された記録媒体には乗客の叫び声と何かが這いずり回る音が複数聞こえてきたという。きっと、海から何かが這い上がって来たのだろう。アレが関わっているのは間違いないだろうが、アレが複数で群をなしているのは聞くのはこれが初めてだった。やはり、まだまだアレを理解するのは難しい。広大な海の世界の深海のようにアレは未知で溢れている。
『アレは本当に動物だったのか』
第十一章 這い上がってきたアレ 一部抜粋
著者 梅咲東風
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